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料理嫌いのわたしが1日で料理を好きになった話
嫌いなものが好きになる
嫌いな人が好きになる
嫌いな事が好きになる
ふとした事がきっかけでそれは突然に起こります
わたしは料理が苦手でした
嘘をつきました今も苦手です
しかし今は料理が好きです
男性は料理に興味が湧かない
もとい、興味が湧かない男性が多いです
わたしもそうでした
なぜなのでしょうか
わたしはなぜ料理に興味を
持てなかったのでしょうか
わたしは何事も最初から最後まで1人で
完成させたいタイプです
というより
子供を見てると、したいしたいさせてさせて
と自分でしたがります
わたしもそうでした
しかしながら料理は、食べた時に自分で成功したか
失敗したかがすぐに分かります
うんまずい
これならば自分で作るより作ってもらった方がいい
楽しくないと感じれば
わたしが作る意味はないのではないか
と
わたしはあの頃の気持ちを考える
こうして料理から遠ざかっていく
そんなわたしがなぜ料理の記事を
書いているのでしょう
わたしは本業が髪切り屋なので
仕事柄、刃物を扱います
刃物を扱っていると切れ味が気になります
よし刃物を研いでみよう
研げる男はかっこいいのでは
そんな理由で安い砥石を買い
安い包丁を
ゴシゴシゴシゴシ シゴシゴシゴシゴ
研いでいきます
スパーーーッッ
スパーーーーッ
なんという事でしょう
なんという切れ味でしょう
自分で研いだ包丁の切れ味は格別です
まるで新聞紙が紙のようです
紙ですが
わたしはその切れ味に快感と高揚を憶えました
変態の誕生です
いえ、元からです
男の料理はここから始まる
わたしはとにかく切りたくなりました
試し切りしたいのです
もはや妖刀です
スーパーにいき獲物を探します
我ながらなんという目つきでしょうか
探しているのは食材ではありません
切るのに手頃な野菜です
わたしはそこで気づきます
切ったら食べる必要がある
そうか
わたしは今
料理をしようとしている
トマトコーナーの前で動かない男性がいたら
きっとわたしだ
そっとしといてほしい
とにかくトマトを切ってみたい
切れ味の良い包丁でないと潰れてしまうトマトを
縦から横から斜めからと切ってみたい
わたしに見られたトマトは震え上がっていたかもしれない
どうだろうか
いや、わたしとトマトの攻防の事は聞いてない
料理を楽しくないと育ってきた少年が
トマトを斬る
間違えた
切る事に
こんなにワクワクしている
わたしは料理をしたくなっていた
どうせならサラダにしよう
茹で卵も切って添えよう
卵は何分で半熟だったろうか
頭の中は料理の事でいっぱいだ
気づけば買い物カゴもいっぱいになっていた
主婦か
いや厳密に言えば主夫だ
カゴからネギまで飛び出している
きっとレジ袋に入れても頭を出すだろう
頭であってますか
わたしは満足気にスーパーを出た
まさか自分がこんなにスーパーを楽しめるとは
こんなに野菜コーナーを立ち回るとは
いつもはスーパーの袋が角ばるように
四方がツンツンしている、それが今日はどうだ
どれだけ膨れ上がっても破れる気配がない
まるくなったものだ
袋が
すれ違う人も視線を向けてくる
その時は気付かなかったが
わたしは、何人分かと言うほどの食材を
買っていたのだ、袋をみれば一目瞭然
あの視線は、何人家族なの?
という目だったのだろう
そんな事は構わない
家に帰る、冷蔵庫整理も楽しい、もともと片付けは
好きだ、買ってきた食材を入れていく
ん、玉ねぎ、玉ねぎは家庭科の調理実習で切った事がある、わたしは切り方を知っているフッフフフ
出るものは切られる
玉ねぎの上と下を切り落とす
更に半分に切って皮をむき、片方はラップで包む
どこかで見た技だ、知らぬ間に習得していた
よしスライスだ、薄く薄く
出来るだけ薄く切っていく
今日の主役は玉ねぎお前じゃない、包丁だ
薄く切りすぎて日が暮れそうだが
わたしは楽しい事この上ない、次だ
次はトマトお前だ、わたしはにやりと笑い
鷲掴みにした
手の上でぽーんぽーんと、もて遊ぶ
やってみたかっただけだ
トマトの飽満な腹を抑え
横にスライスだ
スーーーーーー
トン
コレは本当に百円の包丁だろうか
わたしはとんでもない妖刀を作ってしまったのかもしれない
漫画のようなセリフを頭に浮かべる
こうしてトマトと玉ねぎのサラダは出来上がった
美味しい、というより嬉しい
きっとわたしの頭の横に、ワクワクという文字が
浮かんでいた事だろう
男女を分けて考えるのは前時代的だと思うが
前時代世代なので許してほしい
男にとって
料理の前段階に調理する楽しさがあれば
料理を好きになれるきっかけにはなると
わたしは身をもって経験した
料理と違って調理とは技術面な事を言うのだそうだ
わたしのような技術屋にとって
調理には凄く興味が湧いた
楽しいのだ
それは料理も楽しいと思える土台になったと
言っても過言ではない
凝った料理こそ作れないが
今では食材の事も勉強するようになった
この経験がなければ
まさか枝豆が大豆と同じだという衝撃は
体験出来なかっただろう
ありがたい
世の中何がきっかけになるか分からない
砥石を買って本当に良かった
今日の獲物はなんだろうか
わたしは今日も野菜を震わせる
最後まで読んで頂きありがとうございます
箸と箸置きから何かが伝わってきました
yueise様ありがとうございます
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