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Unity税は無理筋だった?

Unityが去年発表した「ツール使用料+インストール数に対してロイヤリティを徴収する」という新しい料金体系は何故、無理だったのかを妄想してみる。


税金とは何か?


国や地方公共団体が公共サービスを提供するために国民や住民たちから毎月一定額を徴収する仕組みで、これで国家や地方自治体が色んなサービスを提供する。ここでは、「サービスを受けるために必ず支払わなければならない料金」という仕組みを〇〇税と呼んでいると定義してみる。

サービスを受けるために支払う料金

ショッピングモールの共益費

同じような意味合いで、何らかのサービスを提供するために、毎月一定額を徴収する仕組みがある。
例えば、大型のショッピングモールでは、賃貸料金以外に共益費という形で徴収して、ショッピングモールの宣伝広告やイベントによる集客、駐車場の管理やモールの警備などにあてられている。

カード会社の決済手数料

VISAやAMEXなどのカード会社がカードで決済するたびに、利用した店から取るサービス料。店側には、現金を持っていない客でも買ってもらえるし、客が金を支払えなかった場合でもカード会社が立て替えて払ってくれるし、1か月後に支払えば無利子無担保で金を貸してもらい、不正利用された場合もカード会社が保証してくれるというサービスが受けられる。

ゲームにおける税金=ロイヤリティ

販売手数料からハード使用料へ

任天堂やソニー、マイクロソフトが製造するスイッチやPS、Xboxなどのハードウェアで動くソフトを製造したり使用するのにかかるコスト。
ゲームはハードがなければ動かないが、ハードを開発して広告宣伝して販売するのには莫大なコストがかかるため、売れているハード用にゲームを作れるというサービスによるメリットは大きかった。
特にファミコン時代はファミコンが「ゲーム市場を独占」していたのでソフトを作る会社は他に手だてがなかった。のちにセガやソニー、マイクロソフトとハード市場を分け合うことになって独占は崩れるが、「ソフトはハードがなければ動かせない」ので、「売れているハードを使用できるサービス」は、流行っているショッピングモールへの出店と同じような形で、ゲーム製作者には他に選択肢のないものだった。

発注枚数からダウンロード数へ

昔は、カセットやディスクなどの現物を製造していたが、今は、ダウンロード販売にメインが代わり、ソフトの製造委託料からハードを使用する権利ロイヤリティに変わった。
また、カセットやディスクの時は、発注枚数に対しての販売委託料になったが、ダウンロード時の販売数に対してのロイヤリティに変わった。

アップル税の誕生

iPodの音楽ダウンロード販売のロイヤリティ

アップルがiPodで始めた音楽のダウンロード販売では、ファミコンの特定のハードで聞くためのiTuneで販売するたびに、レコード会社からロイヤリティを取る仕組みが確立された。サービスとしては、「市場を独占するiPodというハードで音楽が聞ける」という形が基本。

iPhoneのアプリダウンロード販売のロイヤリティ

続いてiPhoneというスマートフォンという市場を独占するハードが生まれた。そこでは、音楽だけでなく、ビジネスや生活、ゲームなどに役に立つアプリの販売が行われた。
ここで画期的だったのは、プロが提供する有料のものだけでなく、趣味で作った無料のアプリも提供され、一気にアプリの数が増え、優秀なアプリや人気のあるアプリをアップルが「おススメ」して宣伝してくれるというサービスができた。これにより、数々のアプリのヒットが出てくる。

アップル税の誕生(売り上げに対してのロイヤリティ)

無料アプリの出現は、基本無料のアイテム課金やVIP課金などを生み出し、アップルは、アプリの売り上げに対してロイヤリティを取る仕組みをいち早く作った。これも「市場を独占している新しいハードとサービスを一体で作ったから」といえる。

Google税の誕生

アップルの後発のグーグルは、ハードを作らなかった。
その代わりアンドロイドOSというソフトウェアを開発して、それが使えるハードは世界中のどの企業でも参入できるようにしてハードの数を急激に伸ばし、アップルの市場を食っていくことにした。
マイクロソフトがWindowsでやったPCのOSの支配を、スマホのOSの支配に変えただけでなく、Googleストアによって、OSを使用するアプリの管理販売でロイヤリティを取るアップルストアと組み合わせたサービスを作り上げた。

Unity税の挑戦

ツール使用料からインストール数へ

Unityは年間売上10万ドル以下ならタダで使えて、それ以上だと年間使用量が発生するサブスクリプションモデルだった。
更に、インストール数に応じた利用料へ転換するという売上があろうがなかろうが、インストール数で利用料がかかるという暴力的なものだった。

市場は独占できていたか?

Unityはツール使用料を払えばよいので、比較的開発コストが安く抑えられるけど、使い勝手も良くAAAタイトルも作れるのにも関わらず、10万ドル以下は無料で使えるので、インディーズの製作者には重宝されてきた。
ライバルといえるUnreal Engineはもともと、売り上げの5%のロイヤリティを取ってきたので、それと比べると負担が低いのです。
この問題が起こる2022年では、ゲームエンジンとしては、unity45%、unreal17%で、他の追従を許さない状態だった。

なぜ売上ではなく、インストール数にしたのか?

売上の数字が取れなかったのか?
Unrealは利用者から売上報告を受けているようだが、それには正確かどうかの判断をしなければならないしコストがかかる。
インストール数はアップルやgoogleが公開情報にしているから誰でも取れるのでそうしたのかもしれない。

徴収方法の弱点

Googleやアップル、任天堂やソニーは、ソフトやアプリの販売も牛耳っているから売上に対してロイヤリティを引いた分を支払えばすむ。
対して、Unityはインストール数に応じた利用料を払わなかった場合は、Unityの使用制限やゲームの販売禁止などの処置を講じて、大きな訴訟に発展する可能性もある。
インストール数は、売上の閾値があるとはいえ、売上とは関係なく利用料だけが重くのしかかってくる可能性もあり、公平に見えにくく反感を抱きやすい。

市場独占した後のルール変更は評判を落とす

市場を独占した後の突然のルール変更は、それ以外のサービスがない状況では有効だが、利用者からは評判が悪い。
アマゾンが寡占状態になった後に、プライム料金を毎年値上げしたり、マクドナルドが他のファストフードをつぶして寡占した後に39セットをやめたり、ダゾーンが毎年値上げして迷走しているように、市場を独占後の低価格料金からの値上げ戦略でも、結構、評判が悪いのに、ツール使用料の値上げではなく、インストール数にするというマクドの店で食べるたびに座席使用料をとります。と言われている感じになってしまう。

Unity以外のゲームエンジンへの逃避と投資

インディーゲーム製作者たちが、まっさきに、他のエンジンに切り替えを発表し、エンジン開発者たちはUnityからの鞍替えがスムーズに行くようなサービスを提供し、余裕のある開発会社は、他のゲームエンジンへの投資や、自社開発エンジンへと舵を切り、発表の数週間後にはUnity離れが深刻化してしまう。
社長は退任するし、いうことが二転三転するし、利用者にメリットがない一方的な料金システムの改定は、結局、撤回することになった。

じゃあ、どうすれば良いの?

成長後に訪れる地獄

儲けたいのは分かるし投資家を儲けさせなければ助けが借りられないという悪循環。
成長するまでは良いが、儲かる市場を作ると新たなライバルはくるし、市場を独占すると、それ以上の顧客がいなくなるので、今いる客からお金を取らない限り、売上があがらないという地獄が待っている。
ゲームセンターにおける枚数以上に売ることはできないのに、それを上回る数の販売枚数を目標に設定したりすることになる。

マイクロソフトの料金体系とソフトランディング

マイクロソフトは、7万5千円の買い切りソフトのOffice2021と年21000円のOffice365で二つの料金体系を提示した。
どっちが得かを選ばせるやり方で、Office365を使うユーザーには手厚いメンテとアップデートで常に最新機能が使える形でシフトを軟着陸させようとしている。
更に、GoogleやアップルもやっているクラウドサービスOneDriveを充実させ、ウェブ上で全ての記録を管理できるようにして、別のサブスクでの課金と安定的な収入をしようとしている。
これまでのツール代を取るものと、別の料金体系(インストール課金は無理としても)の二つを並べ、将来的にお金を取りたい料金体系の方にサービスを充実させて、他ではサービスが受けにくくする作戦もあったかもね。

ルール変更には強力な独占状態が必要だが、できればソフトに変える

まあ、ビジネスソフトとしては、オフィスが寡占状態だからできたことなので。
別の企業が使ってたら、オフィスを使わざるおえないというそういうソーシャル縛りなどの別要素がない状態で、ルールを変えるというのは無理目だったと思う。

常に成長し続けるために

No1になれないやつはOnly1にはなれるわけない♪

世界に一つだけの花で、皆がOnly1なんだよって概念が流行ったゆとり時代。俺の恩人がいつも歌っていた替え歌だ。

常にNo1でいたければ隣に新しい場所を作り続ける

「No1でいたいのなら、No1のまま他の人と戦っていたらダメだ。No1になったら別の場所を開拓していけばNo1いつづけられる。No1ではなくOnly1になるために開拓しなさい」と師匠に言われたことがある。
どんなジャンルでも、常に誰もいない未開の場所を掘り続ければ、争いもなくOnly1でいられるのだ。

前人未到の長期計画の設定からの逆算

ただ、その新しい場所を作るためには、長期的な計画が必要だ。
どっちかというと、先に絶対到達しえないゴールを設定して、それをクリアするために、100年、50年、30年、20年、10年、5年、3年、2年、1年、6か月、3か月、1か月、1週間、今日という風に逆算すれば良いと思う。
スティーブジョブスは、iPadを作りたかった。
それを実現するために、おしゃれで安いiMacを作り、ビルゲイツに頭を下げて金を出してもらい、iPodを作って、音楽が聴ける電話をタッチで子供から老人まで使えるようにして、アプリを売った。そうしてようやく、なんでもできる大きなノートを作って、更に、色んな夢を仕込んで、死んでいった。
スティーブジョブスでも、まったく前人未到の大地に踏み込んでいたわけではない。
音楽再生機はあったし、タッチデバイスはあったし、タブレットもあったし、時計もあったし、ハードとロイヤリティで儲けるビジネスモデルもあった。
でも、それを逆算し実行し洗練し、まだ、手あかがついていない場所を開拓していった長期計画が凄くて、市場を独占できる技術になるまでは、他を研究しつくして、出さなかったという所が凄かったんだと思う。
iPodを閃く人はいるかもしれないが、もっと、長期で見て、そこから逆算してるから、その先を見越して多少、先人がいても開拓して抜き去ってNo1になれたと思う。

やりたいことを逆算しつづける

どうせ死ぬんだから、やりたいことを全部やるつもりで。
やりたいことを実行するためには、何をすればよいかを逆算して進んでいく。
そこに他者が必要なら、他社へのアプローチを考え、自己完結できるなら、自分へのアプローチを考えれば良い。

今日すべてが終わっても悔いがないように、全部やるしかないと思っている。このnoteもやりたいことの一部なんだよな。
俺の中の色んな妄想を残したいのよね。誰も見てなくても良いから、自己実現したいのであります。




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