がんになってから恋をしたお話し
33歳.手術から目を覚ましたら、卵巣がん&子宮卵巣全摘の告知。まさかの子供を産めない体になっちゃってた...
絶望のどん底にいた私は、これ以上傷つきたくなかった。だから、恋愛も結婚も一生することはないと諦めた...。
好きになった相手の子供も産めない。
事実を伝えた時の相手の反応も怖い。
大切であればあるほど、その人には子供や家庭を持つ喜びを味わって欲しいし、その方がはるかに豊かな人生を送ることができる。
もしも、今はよくても、将来やっぱり子供がほしいと思う日がきたら、私は耐えられない。
その人を大切に育ててきたご両親は絶対に孫の顔が見たいはず...
そんな事を来る日も来る日も考えていた。
車で1時間の通勤時間は唯一、一人になれる場所。
車で往復2時間は涙を流さない日はなかった。
手術から一年経った頃、出会いは突然やってきた。
なかなか心の整理がつかなかった私は、地元の友人2人にだけ病気の話をしていた。
その2人が紹介したい人がいるけど、会ってみない?って、同じくらいのタイミングで言ってきた。
こういう状況だから、お断りしたが、信頼できる友人ということもあり、お友達になるだけでも…と会うことにした。
その友人同士は友達ではないのだが、よくよく話を聞いてみると、紹介したいっていう人が似ている⁉︎名前を聞いてみると、なんと同じ人‼︎‼︎
そんな偶然ある⁇ もしかして運命⁇ と思いながら、初めて彼と会った。
久しぶりのドキドキ、美味しいイタリアン、顔は濃く、趣味も多く、優しい人だった。
誕生日が近かったため、Nicolai Bergmannのフラワーボックスを準備してくれていた。
私にはもったいなさすぎるくらい、魅力的な人...
恋愛を諦めていたはずなのに、浮き立っている自分がいた。
彼に惹かれているが、事実を伝える勇気がでない...
3回目のデートで、彼から気持ちを伝えてくれた。
涙ながらに、やっとの思いで、病気のこと、子供が産めないことを伝えた。
私のことを好きになってくれる人がいるっていうだけで、十分幸せ。
若くて健康で、ステキな女性はたくさんいる。
もっと強くなって、一人で生きていかないといけないと思ってる。
だから、今回のことはなかった事にしてもらって大丈夫です...
彼の顔を見る勇気はなかったが、彼はこう言ってくれた。
「強くならなくていいよ。
子供を望んでいなかったわけではないけど
人には人の僕らには僕らの幸せがある。一緒にワクワクする、楽しいことを見つけていこう」
この言葉が嬉しくて、彼とお付き合いをする決心ができた。
彼と迎える初めての夜。
子宮と卵巣がなくなって、自分の体がどういう状況なのか分からない。
おなかの大きなキズを見られるのは恥ずかしいし...
痛いのか...ちゃんと感じることができるのか...
前みたいに体を動かすことはできない...
不安しかなかった。
ガチガチに緊張して、処女に戻った気分で迎えた夜。
彼は痛くないかをずっと気にかけてくれた。
でも、取り越し苦労に終わった。
彼の腕の中で、幸せで満たされた。
それから、体を重ねる度に、彼はいつも私のおなかのキズを優しくなでてくれた。
誰かが側にいてくれるっていう安心感は大きかった。
毎日流していたはずの涙は、彼と出会ってからは、ウソみたいにとまった。
自分でも気づかないうちに、我慢して、おしこめていた気持ちが溶けていったんだと思う。
一緒に暮らして3年。
将来一緒になれたらと考えていたが、休みが合わず、すれ違いの生活。
おはよう.おかえり.おやすみの挨拶だけの繰り返しの日々。
彼にとって、私と一緒にいる意味はあるのだろうか?と...考えるようになった。
全く同じように、彼も考えていて、話し合って、別れる道を選んだ。
嫌いで別れたわけではない。
だから、最後はお互い涙を流しながら、「ありがとう」とハグしてさよならをした。
彼と出会えて、本当によかったと心から思う。
笑顔と、恋する気持ちと、安心感、生きる希望は彼のお陰で取り戻すことができた。
そして、少し強くなったかな。
弱い立場になって、何気ない人の言葉で傷つくことが増えた。
病気になったからこそ、気づくこともある。
もしかしたら、私の言葉で知らない間に誰かを傷つけてしまっていたかもしれない。
言葉って、励ましたり、元気づけることもできるが、武器にもなる。
自分が発する言葉で誰かを傷つけることだけはないようにしたいなって。
私の両親も言ってたよ。
彼と出会って、luruが笑って、楽しそうにしてる。
その笑顔を見てるだけで、私たちは幸せよ。
あの頃を思うと、今みたいに普通の生活が送れる日々がくるなんて、奇跡みたいだね。
彼のおかげね。って。
別れた後も、彼は私のよき相談相手。
今の友達関係の方が私たちには、合ってるみたい。
別れて1年くらいして、何気なく聞いてみた。
「正直、子供産めないって聞いてどう思った?」
「子供はいてもいなくてもどっちでもよかったよ。
ただ、大好きな人が病気でいなくなるのが辛いからどんな状況かが気になったかな。
これから出会う人は、子供がいなくても大丈夫って言う人は絶対いる。
最初に話を聞いた時にすぐに言葉で伝えるのは難しい人もいると思うし、ゆっくり話し合っていけばいいと思うよ。
人生楽しんでる人がいいんじゃない?
luruもワクワクすることを見つけてね。
まだまだ楽しいことができる歳だから、楽しく生きて行こう‼︎」
今でもやっぱり彼の言葉に救われている。
これから先、恋愛とか結婚することはないと思っていた私だが、少しだけ前を向けるようになった。
もしも、私のことを好きになってくれる人が現れたら、こんな幸せなことはない。
その人と一緒に穏やかに一日一日を大切に生きていきたい。