![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162826282/rectangle_large_type_2_9caf5cf5f797c71e4922ac9948ca2daa.jpeg?width=1200)
街に響く音
最初にイタリアに住んだとき
夕方6時の教会の鐘の音を
毎日聴いていた時期があった。
2000年代になってからは
イベント開催時しか入れなくなってしまった
Forte di Belvedere(ベルヴェデーレ要塞)が、
その頃はいつでも 出入り自由の場所だったから。
そこはフィレンツェの街が
眼下に一望できる場所で、
ドゥオーモはじめ
フィレンツェの オレンジ色の屋根屋根が
手に取るような近さで目の前に迫る、
ぜいたくな空間だった。
びっくりするくらい勾配の急な坂道を
よいしょ、 よいしょ、 と上って行き
要塞に入ってからも
更に急な傾斜を ようやく昇り切ると、
上空にも 前方にも
巨大な空間と、美しい街並みが
天空線や
(↑勝手に言葉作りました。vertical方向用)
地平線のように (horizontal方向)
大きく広がるその場所に たどり着く。
要塞内の 芝生のところと砂利のところ、
その日 その時に居たい場所で、
上がった息を整えながら
6時を待った。
やがて どこか街の端のほうから、
低い 小さな鐘の音が
静かに響き始める。
カーン カーン・・・・ って。
それを呼び水にでもするかのように
今度は 反対側の端のほうから、
街の風景の中央のほうから、
ずっと奥のほうからや、
もっと近くのほうからも
カーン・・・カーン・・・
グアン・・・グアン・・・
リンゴン・・・リンゴン・・・
と
街じゅうにいくつもある教会たちが 一斉に
それぞれの鐘を鳴らし始め、
それらの音がいっぺんに
何重奏もの音の競演となって、
空いっぱいに響きわたる。
教会の鐘の音は
天や 人の信仰心など
なにか清いもので
俗世の汚れたものを浄化してくれるような
力強さを持っていると思う。
日本のお寺の鐘の音も
聴いているとやはり、
心の中の もやっとした黒いものが
音の響きが消えゆくと共に 静かに浄化されていくような
不思議な感覚がある。
ここで聴く この
鐘の一大コンサートは凄かった。
空間スケールが大きくて、
街全体が音を鳴らし、
音の響きが
更に別の音の響きを産み出し、
音同士が絡まり
余韻同士が 余韻を引き合う。
夕方のその時間に
わざわざこの要塞まで登って来る人はあまりいなくて
ほとんどいつも
私はこのスペクタクルを、
たった一人で独占していた。
ふだん街を歩いているときに
夕方6時の鐘が どうやら一斉に鳴っているのに気が付いて
「もし あそこで聴いたら、
どんな風に聞こえるんだろう?」
と思いついて上ってみたら、
想像を遥かに超える音の洪水に出会って感動し、
それ以来
毎日のように通うようになった。
その響きを聴きながら
この街はなんて美しいんだろう と
毎日感動してた。
ひそやかに 大切にしまいこむような
私の宝物の時間だった。
他の人のことはわからないけど
私は
人でも、 物事でも、
それそのものが持っている
ひそやかな美しさを見つけた時、
私 (個人) の感受性を直接揺らしてくるような
小さな美しさに気づけた時に、
それに心を捕らわれ、好きになることが多い。
(目に見えるものだけじゃなく
言葉の美しさだったり、
行動や 思いやりなど、心の美しさも)
私は この6時の鐘の音を
この場所で聴いているとき
フィレンツェという街の積み重ねてきた歴史ごと
今を生きている都市としての快活さも
美しさも
まるごとに恋をして、
「この街が好きだ、ここを愛している」と
感じてたと思う。
空気を吸いこむように
すこし 空に顔を上げて
両手を 微かに開いて (ひとに気づかれない程度に)
フィレンツェを 昔から響き渡っていた音ごと
全身で抱き止める。
フィレンツェも
私を包み込んでくれている(みたいに感じる)。
鐘の音がしているあいだ
フィレンツェという美しい街と
愛し合って抱き合う…
そんな気分だった。
(いちおう言っておくけど
リアルでこんなコト
人に話したことなんてないからね?
(〃-〃) コッパズカシイモン)
今 この要塞には登れるのか
入れる機会があるのかどうか わからないけど
もし入れなかったとしても
要塞の手前にある、
貴族の庭園跡ならオープンしてるんじゃないかな?
と思う。
そこなら気分だけでも 味わえるかも知れない。
景色の見え方が
少し位置が低いけど、要塞とほとんど一緒だから。
Giardino Bardini(バルディーニ庭園)
↑たぶんこれ
私はこの庭園には 坂の途中の
Costa San Giorgioの入り口からしか入ったことがないけど
坂を登らなくても、
下の Via Bargini(バルディーニ通り)からも
庭園に入れるかも?
↑要確認!
逆に Forte Belvedereに もし行けるなら
坂の勾配が大変だけど ぜひ頑張って登って欲しい。
私は個人的に
この要塞跡が フィレンツェで一番のお薦めの場所。
ここから見える
街とは反対側の、ミケランジェロ広場を望むほうの景色も
すごくきれいよ。
オリーブの樹々や 糸杉の姿もある
トスカーナらしい田園風景が、
目を楽しませてくれる。
じっさいのキャンティ地方の風景ほど
広大な景色ではないけど、
丘陵地帯の雰囲気を すこしは感じられる。
私は昼間に パニーノと飲み物を持って行って、
その風景を眺めながらピクニックしたりもしてた。
時には夕方 友達たちを誘って
みんなでグラスとワインボトルを持って、
アペリティーヴォをしたりも。
(まだ今のようなアペリ文化がなかった頃)
あと
この要塞に上る坂道の途中には
かの Galileo Galileiが住んでいた家があるよ。
内部は非公開なので見られないけど
(普通に人が住んでるそうなので)
ふたつの坂道が ちょうど合流するあたりで、
家の壁に描かれた
彼の肖像と 碑文を見つけてみてね。
その道を
ずっと先まで散歩して行くのも、
時間のある人にはお薦めしたいな。
すごく雰囲気がいいから。
(Costa S.Giorgio → Via S.Leonardo)
私のお気に入りの散歩コースで
日本から友達が来た時にはいつも
強制的に(笑) 連れて行ってた。
20分ほどで、ミケランジェロ広場へつながる
バスの通る道 (Viale Galileo) に出られます。
(道の出口近くに、おそらくチャイコフスキーが滞在していた家と思われる建物あり)
あの教会の鐘の音は
私たち日本のものとはちがう文化の所産だけど
その響きは
こんなにも美しく
心を打たれるものなんだ… と、
ときどき
その美しさに心が揺さぶられて
涙が出そうになりながら
(音の響きが 波のように迫ってきて
身体じゅうの細胞を撫でていくので)
この街の 歴史の重みも感じながら
身体や 五感全体で
この街に響く音を 感じとってた。
あれは とても幸せな時間だった……
*****
こちらは
実を言うと以前からご紹介したかった、
IL VOLO という〈 男声 〉グループ。
(↑『飛翔』といった意味。『飛行機』も同じ単語)
私は彼らを知ってから、ずっと彼らの音楽のファンです。
この動画を初めて観たとき
曲の最後の方で
ドゥオーモのシルエットと共に 街の影が映し出された瞬間、
不意を突かれた光景だったからか
「Firenze!… la città mia(わたしの街)!」
という言葉がなぜか
身体を突き上げて昇ってきて、一瞬 目まで潤んで
自分でも驚いた。
そんな言葉、自分で思ったことなんか
住んでいた時にも 一度もなかったのに。
その時は
やっぱり前世で何か縁でもあったのかな?…
そう思うほどの強さで、そう感じた。
単に この音楽のドラマチックさに
引き摺られただけかもしれないけど(笑)
このイタリア男性三人組のグループは
もう日本にも何度か コンサートで来訪しているから、
知っている人はもうご存知ですね♡
以前 こちらの記事 に貼り付けた動画の、
当時14歳だった男の子が
メンバーのひとりになってます。
最初に歌い始めるのがその彼で、
彼だけが バリトン。
あとの二人は テノール。
どうでもいいことだケド
この バリトンのGianlucaの顔は
私の目には 典型的なイタリア人顔。
真ん中の、背の高いIgnazioは
もし何の情報も無しで 初めて見たら
「イタリア人?…いや、もしかしたらポルトガル人かな?
それとも 他の国の人かな?」とも思う顔つきだし、
眼鏡をかけた、いちばん右のPieroも、
「イタリア…っぽいけどフランス人…かな?
ベルギー人とかかもしれないなぁ」
なんて考えてしまう顔だけど、
Gianlucaだけは
世界じゅうのどこで見かけても、
「あなたイタリア人ですよね?」って
自信をもって聞いてしまうと思う😅
この動画の舞台になっているのは
Santa Croce教会前広場。
この教会は 内部も本当に美しくて
貴重なモニュメントもたくさんあって、
私も大好きな教会です。
みなさんもフィレンツェに行かれた際には、
ぜひ訪問してみてくださいね。
*****
最後にオマケ♪
ひとつ前の記事でご紹介した
Andrea Bocelliさんの映画を
ご覧になった方々へ。
アモス (映画の中でのBocelliさんの名前) が ずっと
何度も何度も電話をかけて、実現を待っていた
有名歌手のZucchero氏との共演が叶った時の動画は、
たぶんこれだと思う。
そして
映画の最後のシーンで、
電車で彼らが向かっていた先は
この舞台だったみたい…
イタリアでは有名な、年に一度の音楽番組。
〈Sanremo〉
この名前はイタリア人にとって、
都市名であると同時に その音楽番組そのものを意味する
ってくらいに有名。
(その期間TVにかじりつくイタリア人多し)
Bocelliさんは Zuccheroのコンサートで注目されて
翌年、サンレモのTV放送で有名になって、
歌手としての本格的なキャリアを歩み始めたんですね…
今まで知らなかったけど
知れて嬉しかったです😊
いいなと思ったら応援しよう!
![Luriha](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/82098345/profile_7077144dbc6adbe692359ed59bc7e365.jpg?width=600&crop=1:1,smart)