MIU404と就活JAPAN「それでも日本に行きたいです!」
MIU404五話で号泣
中国に留学していた日本人の友人に、MIU404の五話だけどうしても観てくれと言われて観たが、不思議な既視感があった。
私はこのドラマのこの話を過去に観ていると思う。
ただし、一話を観た時まったく記憶がなかったので、五話だけ何かの切り抜きで見たか、これだけ強く鮮明に記憶に残っていたのかもしれない。
そして今回も新たに強く感情が揺さぶられた。
このドラマの第五話は自分にとって身近な話でリアリティがありまくり。
共感なんてものじゃなく、気づけば怒りとやりきれなさとで大号泣。
この回では技能実習生として働きに来るベトナム人の苦労や問題点を扱い、主人公コンビが、ベトナム人を扇動して強盗事件を起こした日本人の男が主犯であることを突き止めるが、私はこの犯人である男にものすごく同情してしまった。
痛いほど気持ちがわかるからだ。
厚生労働省のまとめによると去年10月の時点で外国人労働者数は204万人以上、前年より22万6千人ほど増加、労働者数が多いのがドラマと同じでベトナム、二位が中国で、これは国が出稼ぎを奨励しているかしていないかの違いだと思う。
中国の場合、学歴至上主義で、学歴をつけて国に戻り、いい仕事を見つけようという考えで日本の日本語学校に留学で来る場合も多く、ドラマの中でも中国人は富裕層が多いと言っていたが、それはその通りと思う。
ただ、今後はわからない。
今、中国の経済状況は悪く、日本に働きに行きたいと切実に考えている若者も増えていて、中国のインスタ小紅書では日本で具体的にどのように働いているかなどの情報交換も一部盛んに行われている。
なぜ中国の若者が日本に夢を抱くのか
私が働いているのは山東省の地方都市の大学だ。
山東省というのは、就職するなら公務員か教師というガッチガチに保守的な地域だ。
中国も少子化がどんどん加速していて、今の学生は男女ともに結婚も出産もしたがらない。
理由は経済不安。
自分一人食べていくだけの仕事をみつけるのもたいへんなのに、結婚するために必要な「家、車、貯金」なんて無理ゲーすぎる。
そんな中、今四年生のじゅっきーが私に相談をしてきた。
「先生! ぼくは日本に働きに行きたい!」
このじゅっきーは高校の時から私のことを知っている。
彼の高校の時の日本語の先生が私の教え子で、その先生を通じて彼は私にコンタクトを取ってきたのだ。
そのことを最近まで知らんかったけど(忘却のプロなので)、入学当時(実はもっと前)から私を慕っていた彼は、私にとっては本当に可愛い弟か息子のような存在だ。
そんなじゅっきーに日本で働きたいと言われ、親心もあり、甘い考えなら止めようと思った。
「おいおい彼女はどうするんだ? 泣かすんじゃないぞ(親父口調)」
過去の不幸な例も話してやった。
彼女にそそのかされて一緒に留学したものの、バイト先の店長と浮気され、もともと国内で大学院を目指すはずだったのに時間を無駄に浪費したという哀れな先輩の話だ。
「それでも日本に行きたいです!」
彼女には冗談として聞き流されたようだけど、じゅっきーは本気のようだ。
しかし、MIU404でも言っていたけれど、日本で高収入で働ける外国人となるとそれなりに優秀な人ばかり。日本語もろくに話せなければ、飲食店で働いたところでせいぜい洗い場だ。
私の以前の学生は、超美人にも関わらず、中国なら蝶よ花よと扱われたろうに、日本では洗い場の水仕事で白魚のような手の手荒れに悩んでいた。
たとえ接客に回されようと、ご飯の時間は仕事後か仕事中でもアイドルタイムで中国とはちがう。
(ここらのレストランではお客の隣のテーブルで従業員も食べている)
おなかがすいたといつも言っていた学生の声も聞いている。
(中国では食が第一、空腹は耐えがたい苦痛)
ちなみにドラマでは三つもバイトをかけもちしているベトナム女子のマイちゃんのように、コンビニで接客している外国人は日本語レベルはわりと高い。
「じゅっきーが日本で働くなら、工場勤務とか単純労働になると思う」
と私が言うと、じゅっきーはこう言った。
「僕のお母さんは工場で働いている。でも月給8千元だ(日本円で16万ぐらい)。でも朝早くから夜までずっと働いてその金額。工場はエアコンも暖房もない。夏は暑くて冬は寒い。それだけ必死に働いてもこの月給。それなら僕は日本の工場のほうがずっといいと思っている」
私はコンビニも飲食店も工場も農家も働いたことがあるけれど、じゅっきーなら農家とかがいいような気がするんだが。
高齢化して若い男子の働き手がほしいじっちゃんばっちゃんの個人農家とか。じゅっきーはかわいがられる素質は大いにある。
ちなみに本人の考えでは、日本で三年ぐらい働いて、日本語能力を高めて、国に帰って日本語で何か仕事したいとのこと。
日本語で仕事がしたいといっても、山東省の場合、安定した職をと言うならば教師になるしかない。でも少子化ということもあり、先生は飽和状態だ。
ただ、私は将来に可能性がないとは思っていないし、何より学生たちにいつも言っているけれど、若いうちに外国に出て外から自国を見ることは、すごく大事なことだと思う。
この考えに賛同する私の学生も多く、今別の学生(三年生)も何とか日本に行きたいと思っている。
彼の悩みもまた就職。
人文系は仕事がない。
公務員や教師以外の選択肢がほとんどない。
どちらもなりたくない彼は、何をしていいかもわからない。
そんな彼は日本に行くことで何かちがう可能性を探ることを期待している。
この二人に共通して言えるのは性格がいいということだ。
温厚で仕事は丁寧、礼儀正しく日本にも日本人にも馴染めるだろう。
私は、仕事において重視するのは、人と人との関りだ。
接客の仕事も長年やってきた私が最近日本に帰国するたび思うのが、接客の質が落ちているということ。
日本は「お・も・て・な・し」の国じゃなかったのか!
まあ、最近の若い子のサービスが低下してきた原因はタブレットでの注文や人出不足解消のためのロボット配膳だと思っている。
さらには手先が器用で職人の確かな技術で受け継がれてきた伝統も後継者不足や機械化で衰退していると聞いたこともある。
日本の職人さんのところに弟子入りする徒弟制度作って高齢化で衰退していく日本の伝統技術を守っていくとかできないだろうか。
そういう手作業の技術とか継承していくのにそれこそ日本語が話せる話せないより勘の良さや地頭の良さというか理解力が関係してくると思う。
そういうところに斡旋したい学生だっている。
日本語の能力だけでは測れない仕事に必要な能力や才能。コミュ力、理解力、協調性、仕事の丁寧さ、根気等、性格や人格に関わる部分からの適性。
ただ決められた仕事をこなせばいいというのなら、それこそ機械やロボット、処理能力では人間よりもずっとすごいAIだっていいじゃないか。
ドラマにもそんな台詞が出て来る。
「日本嫌いになりたくなかった」(👆マイちゃんの台詞)
そんな言葉を私の学生が言ったらと思うとやりきれない。
なぜなら最近も二年女子に
「私は日本に興味なかったけど、先生の授業を通して興味を持った。今一番行きたい国は日本です」
と言われたからだ。
必要なところに必要な人材を紹介するにはどうしたらいいんだろうか。
ドラマでも触れていたけれど、仲介者があくどかったら最悪だ。
この部分を見て、私は嫌な記憶を思い出した。
中国バブリー仲介者
私がこの大学で初めて日本語を教えたのは、日本語専門クラスではなく、観光学部の学生たちだ。
彼らは旅行会社やホテルで働くことを目的としている。
そんな彼らに日本語を教えたがっている男がいた。
この男に関しては、初対面の時に遅れてきたときから印象が悪い。
(一昔前の合コンでわざと遅れて印象づけるあざとい女みたいな手法をつかいやがって!)←最初の印象
この田舎では珍しい、小ざっぱりしたスーツ姿でさわやかに登場したその男は、なんだかバブル時代のトレンディドラマに出てきそうな雰囲気で胡散臭いの一言に尽きる。
このバブリー(仮名)は日本の日本語学校に観光学部の学生たちを送り出していた。
ちょうどブータンの留学生たちが食い物にされ訴訟を起こしていた時期だったので、私はこのことを学生たちに伝え、バブリーに騙されないよう訴えた。
ドラマでもこんなシーンがある。
学生の学習環境なんてどうだっていい。仲介者も日本語学校も来てくれる学生は多ければ多いほど儲けになる。
とりあえずバブリーは怪しい(証拠はないが野性の勘)。
そういう話もしたけれど、私の忠告は聞かず、日本の日本語学校行きを決めた女子三名。
まあ、本人たちが決めたなら、どんな経験だって糧にできると信じて最終的にはがんばれと行って送り出した。何かあったらすぐ連絡しろ、帰ってこいと念を押して。
彼女たち三人のうち、一番日本語能力が高かった女子は、留学を終えた後、まんまとバブリーに利用され、彼が経営する学校で安月給で日本語教師をさせられていたが、その後転職。今は結婚して一時の母。
もう一人は中国国内で日本語教師を続けていて、時々わからない問題など私に質問してくる。
さらに一人はどうやらまだ日本にいる様子。SNSを見る限り楽しそうだけど本当のところはわからない。
まあ、与えられた機会を活かすも殺すも自分次第というわけで、三者三様日本への留学を経てそれぞれの道を歩き始めた。
取り返しのつかない多額な借金や犯罪への関わりなどがなければ、それも一つの機会として、バブリーを逆に利用して日本へ行くのも手だとは思う。
ただ「中国人は中国人を騙さない」という言葉があるが、私はそれを真っ向から否定する。
「中国人が中国人を騙す」
日本国内においては特にそうだと思っている。
実際私の学生も日本で「中国人は中国人を騙さないから大丈夫」みたいなことを言って、私の言うことを聞かないで、白タクで夜中に空港から移動しようとしたことがある。
私が
「その会ったこともない白タクの運転手と、何かあったら何がなんでも助けると思っているこの私とどっちを信じるんだ!」
と言って、結局は私の言うことを聞いたけれど、彼女が一緒にいた中国人は私のことを知らないし、「中国人なら安心だ」と信じて何も疑わない。
このように、中国の大学生なんて悪い連中のいいカモだ。
世間知らずで人を信用しすぎている。
でも、だからといって、私に何ができるのか。
私の学生のことは私が一番知っている。
バブリーよりもずっとずっと!
だけど私は無力だ。
学生が日本で働くための具体的な手助けの方法がまだわからない。
無力な私にできること
私はただの日本語教師だ。
だけど、私を通して日本や日本人に興味を持って、そして、私が日頃から言っている「未来は君たちが創る」に影響を受けて、籠の中から飛び出したい!と日本に可能性を見出す若者たちがいる。
バブリーを毛嫌いしていたのが理由かは知らんけど、私は観光学部を突然外されて、バブリーが個人的に雇った日本人教師に授業を取られてしまった。
結果、その授業のせいで、私の学生たちは日本語が嫌いになってしまい、そのクラスからは日本まで行くという学生は出なかった。
(それはそれでバブリーの足を引っ張った先生グッジョブだけど)
だけどそれはそれで残念な気持ちにもなる。
中国の場合大学の本科までくるような学生は民度が高いというか礼儀正しいし、特に今の学生たちは草食というか繊細で優しく、(コロナ後は特に)そこまで野心があるというのではなく、ただ自分ができる仕事がしたいと言っている子たちが多い。
そんな子たちに職の斡旋をしてやりたい!
助けたい! 力になりたい!
ロボットじゃない労働力を、信頼関係を築ける仕事環境を、必要なところに必要な縁を繋ぐ手助けがしたい。
だけど私にできるのは昭和根性で頭下げて頼み込むこととか、下町人情的に世話を焼くことだけじゃ。
ちきしょーーーーーーーー!無力すぎる!!!!!
だからこそ、ドラマの犯人の気持ちがわかる。
人材サービスセンターを始めたものの失敗をして一千万の借金、留学生たちを食い物にする監理団体の悪代官から借金していた犯人。
そして完済した後、犯行に及ぶ。
だけどこの人、こんなことしたかったわけじゃないだろうし、本当に外国人労働者たちの手助けがしたいと高い志を抱いていたのだろう。
実習生や留学生を食い物にしている国や組織に怒りを感じたからといって、彼らを巻き込んでコンビニ強盗なんかするなとは思うけど。
(だからドラマで星野源にブチギレられている)
私の場合、今目の前の人にできる最善なことは何かって考えだから、すぐに国のせいだ社会のせいだと私憤を義憤にすり替えてやけっぱちでテロ行為に走るなんてことはないのだけれど、この犯人のやるせない気持ちはわからなくはない。
それが暴走であったとしても、ドラマの中の彼の悲痛な叫びは、私の心を打つものがあった。
彼だって、外国人労働者同様の夢を抱いた20代の若者の一人。
バブリーみたいな仲介者とか悪代官みたいなのがいる監理団体の老害に夢を踏みにじられている外国人労働者たち。
彼らを助けたくても助けられず、せめて日本に来るなと叫ぶしかないやるせなさ。
まあ今は制度もどんどん改正しているけれども。
そもそも技能実習は発展途上国に日本の技術を伝えることが目的の国際協力で、技能実習生は決められた期間働いて帰国するのが大前提。
人出不足解消の労働力として外国人を迎えるのは2019年から施行されている特定技能で技能実習と特定技能は全然違う。
ドラマに出てくる悪徳代官みたいのがいる監理団体など仲介が必要なのが技能実習で、3号まで切り替えても最長5年しか日本に留まれないのに対し、悪徳代官なしでも直接雇用してもらえて転職も可能で、2号になれば無期限で滞在可能なのが特定技能だ。
なんとか私の学生を雇用してもOKみたいなところに紹介できないだろうか。
サービス業、製造業、ホテル、コールセンターなど、バイト人生で生きてきた私の授業は実用性と実践重視で、それこそ日本語以外の部分でも学生たちを鍛えてきたし、日本人と交流しても恥をかかないよう我が子のように育てている。卒業した後も相談に乗り、仕事のフォローもしていてアフターケアもする。
どうやったら必要な縁を繋ぐ手助けができるのかぁああああああああ。
ドラマで号泣しながらも、強く強く思った次第。
私のnoteなんてほとんど誰も見ないのだけれど、誰かご縁が繋がる人がいるならどうか繋がって!
そうやって、ネットという大海ににボトルメールを出してみる。
「善良、温厚、信頼できる、中国の大学生を日本で雇用しませんか?」
(心当たりや調べるための手がかりだけでもレスポンス、ぷりぃーず!)