『夜の魂』という本を満月の前に
まだ、夕方だ。
雨が降ってきた。
しっとり降る雨は、家にいる限りは好きである。
こんな時間だけれど、そして、もう季節外れな感じもするけれど、MALIBUというココナッツリキュールに、グレープフルーツを入れて飲もうと思った。
明日の朝、5:55に満月になる。
グレープフルーツって、まん丸お月様みたいでもある。
MALIBUをパイナップルジュースで割るのも好きなのだけれど、友人のご主人が経営するBarで飲んだ、グレープフルーツで割ったマリブダンサーという飲み物が好きになったのは、もう、かなり昔の話である。
さて、『夜の魂』というチェット・レイモの本の表紙にも、グレープフルーツのようなお月様がいる。
表紙は煤けてしまったが、緑色の渦の中に置かれた宇宙。
”ヴェルヴェットとシルクの肌触りを持った文章を紡ぎ出す作家” と評されるチェット・レイモ。
中の挿絵も、色々な月が出てくる。
マイケル・マカーディの漆黒の版画に、ぐっと引き込まれる。
今日は、読んでは雨を窓から覗き、また、読む。
夜に変わっていく空を横目に、再び、ゆっくりと読みたい本である。
夜というのは幻想的である。
想像力をかき立てる。
夜の魂を求める巡礼。
きらきらした言葉が出てくる。
悟りという言葉が浮かぶ。
「蛇と梯子」という章には、先祖代々石工を営んできた、友達のアンに対する記述がある。
石を刻む生業の女性である。
石膏デッサンのときの光の表現に共通するもののように感じて、好きな部分である。
石膏像は白い。
窓からの光。
また、天井に補助的につけられた蛍光灯からの光。
光と影、白と黒の表現。
美大の試験では、石膏像からの位置をくじ引きで決めていた。
高いイーゼル、低いイーゼル。
距離によっても、光の見え方は様々である。
くじを引いた時点で、・・・となる難しい位置がある。
光がなければ色は識別できないことを考える。
ものすごく繊細な、陽の光。
通常は意識していないことに目を向けると、美しい世界がそこに広がる気がする。
「陰翳礼讃」も浮かんだ。
すべての題名が読みたい気持ちにさせる本。
連休はどこにも出かけないけれど、贅沢な時間である。
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