ダルムシュタット方伯の”驚異の部屋”。 ヘッセン州立博物館(The Hessisches Landesmuseum Darmstadt ) / ドイツ・ダルムシュタット③
こんにちは。
ヴァルトシュピラーレを後にルイーゼン広場へと戻ります。
途中、まだ肌寒いグレーの街並みに柔らかい色を発していたお花屋さんに吸い込まれました。
とっても自然で無造作で素敵。上手く言葉にできないけど惹かれる何かを宿していたお花屋さんでした。
あっ、大好き『セブン・イヤーズ・イン・チベット(Seven Years in Tibet)』。ネパールで「セブン・イヤーズ・イン・チベットが好きな人に悪い人はいない!」と豪語していたヒマラヤトレッキングのガイドを思い出した。
(記事「神々の国ネパールへ① ヒマラヤ アンナプルナ連峰」)
さて、ルイーゼン広場近くにある芸術、文化、自然史などにおけるヘッセン=ダルムシュタット方伯のコレクションを集めた博物館「ヘッセン州立博物館」へ。
この建物はユーゲントシュティールの芸術家コロニーを創設したエルンスト・ルートヴィヒ大公が、建築家アルフレッド・メッセルに依頼したもの。
それぞれの展示物に合わせ特別に調整された空間がつくり出されています。
(記事「マチルダの丘へ。 ユーゲントシュティールとロシア正教会 / ドイツ・ダルムシュタット(Darmstadt)①」)
博物館ってまあ、権力者の収集品の展示よね。
私が博物館で興味惹かれるのはその展示の仕方。
あーそうそう、ヒエログリフを身につけたい!が叶ったのは2019年でした。
(記事「シャネルの古代エジプト / メティエダール コレクション 2019 (Chanel Métiers d’Art Collection 2019)」)
ずっと惹かれ続けているのが、自然物も人工物も、時代も国も分野も関係なく、興味あるものを一所に陳列した「驚異の部屋(Wunderkammer)」。
混沌とした中に貫かれた収集者の美意識を感じるのが好き。インターメディアテクの展示形態はその意識を継承しているように思う。
(記事「東京駅前の「驚異の部屋」を見に行こう!インターメディアテク(東京大学総合研究博物館+日本郵便)② / 前編」)
で、観たかったのが動物学のセクション。
こういった建築を見る度にいつも思う。これらをつくった人々は私たちと繋がっているのか?って。技術、美意識、スケール…すべてにおいて私たちとかけ離れている。
パリの「古生物・比較解剖学陳列館」を思い出すディスプレイ。
(記事「パリで博物学的世界に浸る!進化大陳列館と古生物・比較解剖学陳列館 / パリの驚異の部屋①〜パリ旅行記⑵」)
骨なんです。骨だけなんです。でも感じるんです。気迫というのか、肉が付いていた時の動きとかその残像のようなものを。
圧巻だったのが、生物多様性に関する長さ 16 メートルのショーケース。
みんな優しい眼をしていました。ああ、動物たちに新たな命を吹き込んでいたデロールの職人さんを思い出しました。
(記事「パリの麗しき標本屋DEYROLLE ( デロール)/ パリの驚異の部屋②〜パリ旅行記⑶」)
標本について調べていくうちに「標本士」なる存在に辿り着きました。欧州の博物館には、自然素材を生物を標本にする専門のスタッフがおり、ドイツには世界で唯一「標本士」を養成する専門学校があるそうです。
高校卒業後、ドイツに留学し標本制作技術を学び「標本士」としてドイツの博物館で7年ほど活躍されていた相川稔さん。日本人で唯一の「標本士」である相川さんの書かれた「自然科学のとびら 第16巻 3号」(神奈川県立生命の星・地球博物館の広報誌)を目にし、色々と考えさせられました。
自然素材を集め標本化し、研究、保管、展示をし未来へと伝えていくことが博物館の役割。その中で素材の標本化とその管理、保守を担当するのが「標本士」の仕事だという。
そんな「標本士」がいない日本。その役割は学芸員や剥製師、はたまたボランティアが分担しているようです。「自然科学のとびら 第24巻 4号」
次に向かうのは鉱物。
鉱脈を模したデザインのショーケースにヘッセン州南部および世界のその他の地域の鉱物が展示されています。
色!造形!美しー!
シックな色も麗しい。
化石などの自然標本、絵画、陶器、家具や甲冑などなど〜じっくり観たら半日以上必要か、なヘッセン州立博物館。
とにかくディスプレイが美しく、標本というものを深く考える機会をいただいたヘッセン州立博物館でした。