「カチューシャのつぶやき」―詩―

わたしは　おしゃれなカチューシャ
あなたに　大事にされてる
ロイヤルブルー・シルクのカチューシャ
幅広で　エレガントなリボンの結び目が自慢

あなたは　白く高い頬と
ルージュの赤の　似合う女の子
瞳は　淡いブラウンで　
じっと見つめられると　心が魅せられる

あなたは　答えに迷うと
わたしに　手をやり
少し　顔をかたむける
その　しぐさが　愛しさを増した

あなたの　いくつかの
ロマンスには　私が一緒だった

キラキラした恋
涙粒が流れ続ける　出逢い
沖に　ヨットで走りながら
月の指先に　ふれた愛
抱き合ったハートのビートが
私にまで　めまいを感じさせた抱擁

いくつもの
映画のようなシーンを
一緒に　演じてきた

あなたの　黒い髪を
街灯に　浮かび上がらせて
愛の言葉を　ブルーに染めたのは
わたしの魔力

ある時　海辺の強い風が
私を　あなたから引きちぎり
波のむこうへと
持ちさってしまった

その時の　あなたの　悲痛な叫びは
まだ　心の耳から　離れず
わたしの絹の体を　震わせる

今は　波間を　あてどなく漂い
星空を　見上げて
カモメ鳥に　あなた探しを　頼む
でも　気まぐれカモメは
クワヮ　クワヮと返事ばかりで
少しも　街に飛んで行かない
　
わたしの異国への旅が　いつ
終わるのかは　潮風のみが　知っている

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