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「エッサー コリャコリャ」ー詩―
卒業して 五十年余
当時の面影を残した
神保町の 交差点は
老いた学生たちを
暖かく 迎えてくれた
青春を 燃やした街は
いまも 学生でにぎわう
この交差点に 沢山の
思い出と夢の足跡を つけてきた
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X大学の 講堂に集まったのは60人余
みんな 名刺のいらなくなった卒業生たち
時を経た 出逢いに
肩を抱きあったり
強く 両手で握りあったり
相手の名前を忘れて
聞き返したり….と
嬉しい 再会の時間は まるで
温泉のような 心地よさ
校歌を 粛々と 皆で声強く
斉唱後 幹事からの一言
「学生注目!! X大節の登場です」
初老の男性が紫の羽織姿で 真ん中に立つ
緊張のせいか 足が 少しフラフラ
X大節は まず口上から始まる
「西の方(かた) 見眺めれば 霊峰富士の 峰を仰ぎ
東の方(かた) 耳傾ければ 坂東太郎 大利根のせせらぎを聞く」
「そうだぁ!!」と合いの手
老人の声とは 思えぬ 張りのある声量
聞き入る参加者は 肩を組みあい 輪を作る
誰もが 50年余前の
こころと熱を 蘇らせる
魂は すでに 詰襟をまとっている
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「いざぁ 共に歌わんかな! 踊らんかな!
舞わんかな! X大節の一節を!!」
「エッサー コリャコリャ・・
ここは お江戸か 神田の街か
神田の街なら 大学はX」
卒業生は 少し目をうるませ
遠くを みるような 目つき
白髪となり 皺を刻み付け
広くなった 額を光らせ
大声で 魂を響かせて 歌い
手拍子を取り 肩組して体をゆらす
講堂には 50年前の風が 吹き抜ける
みんな この歌を歌った 「古き蒼き春」の昔に
身を ひるがえしている
脳裏を通り過ぎるのは 袖がピカピカに
ひかるまで着込んだ 詰襟姿の自分時代だ
{金はないが 才は そこそこある
早く世に出て 親に恩返ししたい
想い人に 気持ちを伝えたい
あの人と 夢で会えるなら
すべてを 投げうってもいい}
それぞれの 思いは 回り灯篭のように
心の キャンバスに 映し出される
「エッサ― コリャコリャ。。。
命捨てても その名は残る
X大学の その名は残る
ついでに おいらの 名も残る」
歌が 終わっても
エッサーコリャコリャの 掛け声と
拍手は いつまでも 鳴り止まない
心から あふれ出す笑顔の海が
講堂内で 波を打つ
皆 一様に これまでの辛苦 喜怒
忍耐 苦渋を このX大節とともに
大空の 向こうへと
背負い投げで 飛ばして しまったのか??
「エッサー コリャコリャ」は
元気のでる 呪文の言葉かもしれない
(追伸:長い詩をお読みいただきありがとうございます。この詩の会合とその
内容はあくまでも、フィクションでございます。X大学も架空の存在で,
筆者の母校でもありません)
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