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映画『夜明けのすべて』を観て私が元気になった理由

映画『夜明けのすべて』が素晴らしかった

瀬尾まいこさん原作の小説を三宅唱監督が松村北斗さん、上白石萌音さん主演で映像化した本作。
2月9日の公開から、じわじわとファンを増やし、filmarksでは4月10日の時点で★4.1と高評価。
私は幸運にも1月下旬に行われた三宅監督のティーチイン付き試写会に参加させていただいたのですが、主人公2人が抱える病気にフォーカスするのではなく、彼らがどん底の状態から前に進もうとする過程を描いているのがとっても素敵でした。

許し許される映画

 本作は、個人的に、「許容」を与えてくれる映画だからだと思っています感じた「許容」は、
① 自分を許容する
②相手の言動を許容する
③変化を許容する
の3つ。
ここから深堀りしていくので、映画の内容に触れます。

①自分を許容する

観賞後、前向きになり、完璧でない自分を許されたような気持ちになりました。
三宅監督が、
主人公二人の病気ではなく、前に進んでいく姿を描きたかった、
と語られていたように、病気に支配された生活を送っていた主人公二人が意識を変えていく姿に元気をもらえます。

また、藤沢さんがPMSで周りに当たり散らしたり、
パニック障害を発症したことで周りに壁を作っている山添くんが空気を読まず、冷たい態度を取ったりする。
そんな彼らが周りに見守られ、支えられ、そして誰かを支えている姿をみて、
ああ、もう少し自分に素直になっても、少しは自分勝手な言動をしても良いのかも、と思えます。

②相手の言動を許容する

本作は、PMSやパニック障害の発作のシーンが描かれているだけでなく、心や身体に何かを抱え、生きづらさを感じてしまっている人達の姿が多く描かれています。

 主人公二人をそっと見守る職場「栗田科学」をみると、こんな優しい人たちばかり集まる会社なんてないよ、、、と思ってしまいますが、
みんな生まれつき優しいわけではなく、バックグラウンドに何か抱えているから人にやさしくなれるのだと気づかせてくれました。
不快だな、嫌いだな、と思う行動をとる人も、バックグラウンドに何かを抱えているんじゃないか。
イラっとする前に、そう考えられるような、優しい思考回路になれました。

③変化を許容する

ストーリーの中で意外だったのが、藤沢さんが会社を辞めたこと。
なんとなく、藤沢さんと山添くんは、恋人関係にはならなくても、同僚のままお互いを支えていくと思っていました。
原作にはない設定なのでティーチインでも質問が出ていたのですが、三宅監督が、
・藤沢さんも山添くんも定年まで栗田科学にいるイメージはつかなかった
・藤沢さんが栗田科学を去っても関係性は変わらないと思った
と話されていて腑に落ちました。

きっと、パニック障害やPMSという病気と付き合っていく上で、環境が変わるというのは怖いこと。
特に、転職した藤沢さんの場合、栗田科学のように受け入れ態勢が整っている会社は少ないし、怒りをたまにコントロールしてくれる山添君の存在は大きかったはず。
山添君にとっても、栗田科学に残るという決断は精神的にきっと大きな変化で、
そういう自分の心境の変化を受け入れて、行動を変えていく姿が美しいと思いました。

最後に

 こういう、3つの許容を描くことで、私は許された気持ちになり、元気をもらえたのだと思います。
派手な演出はないものの、音も映像もとても綺麗で、没頭して観るとより良さが伝わる映画だと思います。
上映館は少なくなってきていますが、未観賞の方はぜひ劇場で。

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