読書感想文:モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語
内田洋子さん著の「モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語」を読んだ。
モンテレッジォは、「本の原点」ともいえるイタリアの村だ。
この村の人たちは、代々本の行商をして生計を立てていたという。
手写しだった本の時代から、
ドイツ人のグーテンベルクという人が活版印刷を発明し、
その後、
イタリア人のアルド•マヌツィオという人が、
当時まだ大きく分厚くて重く、高価で限られた向けてだった書籍を、小さく軽く簡素化して低価格にし、世界で最初の文庫本を生み出したらしい。
ナポレオンの登場により、
それまで特権階級に限られていたことが大衆の手にも届くようになり、工業化され暮らしにゆとりができると、軍人や小市民たちも知識層の仲間入りをする。
それでもまだ敷居が高かった本を、
モンテレッジォの人たちは、版元から売れ残りや訳ありの本などを丹念に集め、露天で安価に販売した。
青天井で本売りを重ねた行商人たちは、庶民の好奇心と懐事情に精通し、1人ひとりに合った本を見繕って届けたという。
また、独立運動家や革命家が書いた禁書なども隠して運び、革命分子たちに届けた。
子供に夢を与える本から、小説、
家庭医学などの実用書、
そして革命家たちの禁書に至るまで、
モンテレッジォの本の行商人たちは、
様々な本をイタリアの隅々にまで届け、
イタリアの歴史を底から変えたという。
イタリア半島を統治していたオーストリアは、
村の行商人たちを「何より危険な武器」と、警戒したらしい。
そして、モンテレッジォには「神曲」を書いたあのダンテも立ち寄ったと言い伝えもあるという。
(私は神曲は読んだことない)
イタリアの本の歴史を感じられる本書。
私の心に響いた部分を抜粋したい。
「本を売る」という仕事が、それだけれはなく、
「生き方のいろは」をも教えてくれる。
その考え方が素敵だなあと思った。
本への愛情、そして人間への愛情を感じた。
もしかしたら、これは本屋だけではなく、どんな仕事にも言えることなのかもしれない。
「本」というものが、ただの印刷物ではなく、
私達に新しい考え方や、希望の光、心の支えになってくれるということを表した文書だと思った。
まだ本というものがそこまで普及していなかった時代、知識や新しい考え方が人々の間に広まり、
多くの人に刺激や希望を与えたこと、
本のもつ可能性や力について思った。
最近台頭してきているインターネット書籍についての文書では、
と書いている。
私もこの考え方分かるなあ、と思った。
確かにインターネット書籍は、手に入りにくい書籍を買うことが出来るし、
近くに本屋さんがない人々にとってはとても便利で素晴らしいものだ。
しかし、生身の本屋さんにしかないものがある、と私は思っている。
書店でブラブラし、出逢う本の嬉しさや新鮮さ。
表紙や、文字の大きさ、文体、紙の質感や色味も、手に取りページを捲ってこそ、自分にフィットするかどうかが分かる。
普段読まないようなジャンルでも、これは読んでみたいと思える本に出逢える衝撃。
購入して、家持ち帰るまでのワクワクした気持ち。
そういうのも引っくるめて、私は書店が大好きだ。
大好きな本が大量に並んでいるというだけで、
ワクワクする。
やっぱり私は本が好きだな。
本好きな人、イタリア好きな人にオススメの1冊です。
同著者の別の本についても以前感想文を書いたので、ここに貼っておきます。
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