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読書感想文:深夜特急1

沢木耕太郎さんの、深夜特急シリーズを読み始めた。1は、香港•マカオ編。
香港•マカオには、私も行ったことがある。

一緒に行った友人が、ツアーが好きでなかったため、現地をバスで移動したり、自分達の足で歩いて回った。

1週間くらいの短い旅行であったため、沢木さんのようなディープな体験は出来なかったけれど、
それでも、現地の空気感はひしひしと感じることができた。

本書にも出てくる、マカオの聖パウロ学院協会の門には、私も行った。

荘厳な佇まいではあるのだが、何しろ門しかないのだ。
一見下からみると、協会が建っているように見えるのだが、近づいてみると、門の後ろに何もないことに気付き、なんとも言えない虚無感みたいなものを感じたのを覚えている。

門が残っているが故に、その虚しさが強調されてしまうのだ。

香港料理も、マカオ料理(マカオ料理というものがあるのです。何とかチキンというものをレストランでいただいた)も美味しかったし、夜景も綺麗で、湿度が高いせいか、肌もプルプルになったのを覚えている。

帰国した時、会社の先輩から、良いもの沢山食べて来たんでしょ、と言われた。

深夜特急~香港•マカオ編~で私が心に残った部分を記したい。

香港においても、持てるものと持たざる者との対照は露骨なほどはっきりしていた。
しかし、持てる者が常に豊かで、持たざる者が常に貧しいかといえば、それはそう簡単なことではない。
ー貧困は僕にとって必ずしも忌むものではなかった。なぜなら、太陽と海は決してお金では買えなかったから。
ヘミングウェイの読者だったに違いないアルベール•カミュも、確かそのようなことを言っていたと思う。

深夜特急1 p106

香港の現地に密着した庶民のディープな暮らしを見た著者が、そこに住む様々な人見てもった素直な感想が、胸に響いた。

著者の描く香港、マカオの人々は、決して裕福とは言えないけれど、「生きる」という熱意と力に満ち溢れ、逞しく感じた。

沢木さんが、貧しい若者にうどんを奢ってもらった時、最初奢らされるのかと疑ってしまったが、その若者が店のオバサンに、明日働いた分で払うから、ツケにしておいてくれ、と言って立ち去り、それを後からオバサンに聞いた沢木さんが、一瞬でもその青年を疑ったことを恥じたエピソードには、心を打たれた。

マカオのカジノにハマってしまった沢木さんが、
賽の英語はDICEで、DICEは複数系で、単体では、DIE=死と同じスペルであることを知った時の衝撃も面白かった。

賭博は、確かに無一文になるリスクをはらんでいる。そういう意味では、死と隣り合わせなのかもしれない。

また、香港の安宿で、売春婦の女の子に(沢木さんは利用はしていない)筆跡で占ってもらった時、
「孤寒」と書かれ、孤独等のロマンチックな意味かと思っていたら読者の方から、「ケチ」という意味ですよ、と教えられたというエピソードも面白かった。

旅好きには堪らない本だった。
一応全て揃えてみたので、ゆっくり制覇しようと思う。

多分、また読書記録を残すと思いますので、お時間と興味がある方は、お付き合いいただければ幸いです。

画像はお借りしました。



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