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お金に頼らず幸せになるのに必要なもの 『シン・ファイヤー』稲垣えみ子・大原扁理

もし、明日から
いったん今しているすべての仕事をストップして、
まっさらな状態になったとしたら。

どんな風に毎日を過ごしたいだろう。


・・・これは今、絶賛わたしが直面している問いなのです。

こんな話をここで書くのはどうかとも思いますが、、、
来月、仕事を辞めることになりまして。
様々な事情で業務がなくなることとなり。ひぇ~!
気に入っていた仕事だったし、たくさんの人にお世話になったので、
もうすぐ職場を離れるさみしさをじんわりかみしめております。


そして先日、上司が気を遣ってくれ、次の仕事の希望を聞いてくださった。
条件にできるだけ沿ったものを紹介してくださるという。

そこで急に戸惑う。
私は何を求めているのだろう?

職種、休み、給与、職場環境・・

今までの条件が結構気に入ってたから、似た条件がいいだろうか。
それとも、この際心機一転、全く新しい事に挑戦する?
一旦ゆっくり休むのもいいし、
老いてきた両親と過ごせる時間も限られている、、、
どうしたものか。

完全に自由となると、迷う。
あれこれ考えを巡らせています。

そんな中、仕事、お金、自分の命を燃やして生きるとは?について書かれたこちらの本。
絶妙なタイミング!一気に読了しました。

『シン・ファイヤー』/ 稲垣えみ子、大原扁理

朝日新聞を退社後、自由にシンプルに生きる稲垣さんと、年間90万円で隠居生活を送る大原さんの、かなり厚めの対談本。

一言でいうと、、、濃い!

全体を通して感じたのは、
自分で自分を、幸せにすることに
お二人とも真剣で貪欲で
自分の望みに対して繊細で

いわゆる、世間が思う幸せのかたちじゃなくて自分オリジナルの幸せをわかっていて、それを自分で作り出すことができるから、お二人ともこんなに安心して満たされているのだと感じました。

大原さんのお父様が、介護されながら
自分の暮らしにまつわるもろもろに受け身で、
どう生きたいという望みがなく、指示だけは命令口調、というような話があったけど、

生活にまつわるサポートはできても
幸せだけは、誰もサポートできないことなんだ、
自分の幸せはお金でどうこうできるものでも、誰かに委ねられることでもない、
そこは自分でがんばってくれ、と大原さんはおっしゃっていた。

どんなことが自分を幸せにするのか、そのことをよく知っておくこと、
それを自分で、また、人との関わりの中で作り出せることが大切だということがお二人の対談から強く伝わってくる。



私も稲垣さんと同じく、(というのはおこがましいけれど)
いわゆる大企業でばりばり稼ぎ、お金をどんどん使うという生活を10年ほど経験し、その後30代で病気になってしばらく無職(収入ゼロ)期間があるので、お金の稼ぎ方・使い方についてのアップダウンが似ていて、彼女のエピソードが自分のことのように感じられた。

私も、都内のマンションから郊外のアパートへ引っ越し、生活水準を思いきり下げざるを得なかった。服・化粧品は百貨店のものからドラッグストアの安価なものへ変更したり・・・その過程は、悲しく苦しかった思いがある。
病気で動けない中、貯金が減っていくのが怖くて、やむを得なかった。
また、自信がなかった私は、お金だけじゃなく「◯◯会社で働いてる私」というような変なプライドも捨てられず、なかなか職を手放せなかった。

しかし、収入ゼロ期間に、
大原さんのように年間90万までは落とせなかったけれど、
「月10万のお金があれば、衣食住そこそこ幸せに生きていけるな・・・」
と実感してから、底がついたような安心を感じるようになった。

必死に働いていたときは、根拠もなく ’年間〇百万のお金がないと生きていけない’と思っていたけど、そうじゃない。
これだけあれば幸せに生きていける、と分かっていることの安心感。
だから、大原さんの"必要な分だけ働く"というスタンスには、とても共感できる。

ただ、驚いたのは、稲垣さんのようにお金を存分に使って楽しんでからこの境地に至るのは分かるけれど、大原さんはそこを経ないでこの境地に至っていること。欲は膨らまないのだろうか。

同じ世代だと思うのに、自分の事ばかり考えてる私とは違い、自分の余力を人に親切にすることに使えないかと考えているのもすごい。むやみやたらにすることを増やさず、仕事で消耗しきっていないから、ご自身の中に余白があるのだな。自己満足だけでは満足できない、周りの幸せがあってはじめて自分の幸せがあるという境地にいるのだろう。


そして、この本を読んで、1番はっとしたこと。

それは、"自力"は資産であり、
年を重ねるに連れ目減りしていくものだということ。
つまり、自分の弱い部分を人に助けてもらいながら生きる必要性がどんどん出てくるということ。そして、そんな時、お金以外の手段で人とつながるコツをえみ子さんが惜しみなく披露してくれてるのもありがたい。

というのも、最近、人とつながるって、ほんとに大事なことだなと思いはじめたのだ。
特に私は、なんというか、弱点が多すぎる。
一人が好きなのに、一人じゃ本当に生きてけない。
夫をはじめ、周りの人の支えのおかげで生きている。
今自分の周りにいてくれている人を書き出してみると、助けてくれている人たちばかりだ。ありがたや・・

弱さは、そういう意味では、ギフトなのかもしれない。
弱点があるからこそ、不器用なわたしでも人とつながれている。


だから、同時に、これからは
自分の長所や得意でも人とつながっていけたらいいなと思う。

お金もらう・もらわないに関わらず、
自分の得意なこと、役に立てると思うことなど、
えみこさんがなさっている多岐に及ぶ活動(日本酒イベント、ヨガ、地域の活動etc…)のような形で人とつながることを模索してみたい。なんせとても楽しそうなのだ。

そしたらきっと
弱点でつながり、長所でつながり、
助けられ、助けながら、
周りの人と一緒に満たされた気持ちで生きていけそうな気がするから。


というわけで、深い共感と、今後の方向性へのヒントを得てこの本を読み終わった。
読者の中では珍しいかもしれないが、一旦人生を挫折?した自分のような経験を持つ人は、共感するところが多いのではないかと思う。
そしておそらく私はお二人が意図した読者層ではないかもしれない。

なぜならきっとこの本は、FIREを真剣に目指す人や、今、必死に第一線で働いていて辛い人に、
お金をがむしゃらに稼ぐ以外の生き方の選択肢もあると知ってほしくて書かれたと思うから。


最後に。

稲垣さんの本が私はとても好きだ。

なぜかというと、実際に体験しての気づきを分けてくださるから。

その体当たり、人体実験っぷりが尋常じゃない。
普通の人は好奇心だけでそこまで突っ込んでいけないでしょというような領域まで経験して書いてしまう。
ご自身の好奇心からなのだろうか。
それとも、いい文章を書きたいという気持ちだけで、ここまで突っ込んでいけるものなのだろうか。

頭の中だけで考えた、上っ面だけをさらっているわけじゃない。

その生きた文章が、生きる姿勢が、
いつも、かっこいいと思うのだ。



#読書感想文 #稲垣えみ子 #大原扁理 #エッセイスト #人とつながる #お金

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