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吐き出したい、鬱、鬱、鬱。
「新しくやる曲決まった?」
二つのバンドのボーカルを兼任している私は、男子四人と私で構成されたグループチャットに送信した。
返信はこうだ。
「オリジナル曲を作っている」
私も曲を作っている身なので、どんなふうに作っているのかと、
純粋な興味で問いかけた。
「オリ曲の方は俺たちだけで歌いたい」
そっちのつもりで言ったわけじゃなかったんだけどな〜と思いつつ、まあそうかと納得しようとした。
しかしながら、続く返事に私の心は参ってしまった。
「未来さん含めた曲は考え中」
「多分未来さん的にも男子の中女子一人っていう環境気まずいと思うから」
絶句。
絶望。
憤り。
…悲しみ。
ぐちゃぐちゃと心をミキサーにかけられたようだった。
気まずくすんなとか、気まずいのはそっちだけだろとか、
言いたいことも山ほどあったけれど、
残ったのは結局もって、情けないほどのやるせなさだけだった。
ここでその気まずさを否定したとて、そんなことをすれば今度こそ
こちらも気まずくなる。
何も言えない。
だって見た目は女そのもので、側から見ればそれ以上でも以下でもない。
あちらの「俺たち」に、俺は入っていないこと。
女と名乗った覚えはないけれど、
どうしたって埋められない性別の壁。
ああ、周りが優しくって忘れていた。
受け入れてくれていたことを忘れていた。
あれは拒絶だ。
それも無意識の。
学生には、自由にするお金がない。
自由になるためにできることはせいぜい、未来を想像することだけだ。
世界を批判して、どうにか自分の輪郭をなぞっている。
現実から逃れようともがく。
彼方が悪いとは、思わない。
でも、正しいとは、思えない。思いたくない。受け入れたくない。
受け入れるくらいなら舌を噛み切って死んでやる。
彼のあの言葉は、公開処刑でもされたような気分だった。
画面を見つめたまま、放心する。
誰が悪い?誰がいけない?
誰を責めればいい?
どうしようもなく責めたい。
誰が悪くもないのに責めたい。
なんでだ、なんだ、何がいけない?
何が、俺を俺にしてくれないの?
女か、女であるからか、女でいるからか。
なんで女だ。
何が女だ。
俺のどこが!!
喚いて、喚いて、叫び散らかしてしまいたい。
いろんなものに八つ当たりして、ひどい人間になってしまいたい。
そしたら、お前らなんかに興味はないと伝わるだろうか?
私は女などではないということがわかっていただけるだろうか?
身体だけが性別の壁を別つのであれば、私はとっくに異常者だ。
心だけが性別の壁を別つのであったのならば、私もちゃんと健常者だ。
心は目に見えないのだから!
心が注視されれば、自由に生きれるというのに!
泣きたくない。
屈したくない。
何が男だ!
何が女だ!
性別を越えた友情は成立しないだと?
俺は、俺はいつだって、俺だけは成立すると思ってたんだ。
だって恋なんてしないから。
だって俺は自由なんだから。
でも友情も恋情も、結ばれるためには片方だけじゃダメだった。
両が同じく思っていなければ、結ばれはしないんだ。
学生はそこが過敏だ。
男も女も互いに敏感になって過ごしている。
淡い恋心を抱き、”ワンチャン”を狙い、余計な噂が立たないようにと。
無意識下に、そうなるようにできている。
もしくは、そうなるようにしてきた。長い歴史の中で。
簡単には染まらない。
石を投げても良いと思われていたものだから。
こんなに流行るなら、正しく流行って、正しく染まれ!
理解できないのはお互い様だ。
だから尊重するのではないか。
だから歩み寄るのではなかったか。
俺が何より恐れるのは、ただ石を投げられ罵倒されることじゃない。
お前はおかしいと言われることでは毛頭ない。
そんなことで傷つくようにはできていない。
突きつけられることだ。
自分では動かしようもない現実を。
歩み寄ろうとした相手に、突き飛ばされることだ。
要するに、線を引かれたのだ。
お前はこちら側ではない、と。
それが息を浅くさせ、それが私を苦しめる。
確実に、心の奥底に言葉が落ちていく音がした。
心臓が痛い。痛い、痛い。
生まれは変えられない。
変わらない。
それを身をもって知っている私は、どうして希望を見出せよう。
どうやって生きられよう。
俺は、どうしたらいい?
いつにも増して、冷静さを欠いた文章を綴ってしまった。
申し訳ないです。
お目汚し失礼しました。
1693文字で心の掃き溜めを空にしようとも、何故まだつらいのでしょう。
泣かなかったからかしら。
泣きたくないと明記したけれど、泣くことは私たちにとって重要な機能の一部であることに違いはない。心一つをとっても。
自分で自分の権利を奪っていちゃ、世話ないわな。
私はまだまだ甘かったみたいです。
何せ周りに甘えています。
いくら甘える時期だといっても、高校生ですものね。
早く大人にならなければ。
大人になって、現状よりもひどくなってしまったらどうしよう。
不安だ。
他者と関わるということは、こういうことを避けられないから。
怖いなぁ。
未来が暗い。