連載「君の見た空は青いか」第1話
あらすじ
1人のしがない会社員が、ネットを通じて奇妙な体験をする物語。
ネットが普及してきたこの世界で、人は何を想い、どう生きるのか。主人公の圭太が見た世界とは…。
みなさんこんにちは、僕は田中圭太と言います。24歳の会社員です。といってもね、田舎町の小さな会社で。就職して6年になる。仕事も安定してきたし、これからもこの仕事を頑張ろうと思ってる。仕事に対しての不満は無い。だけど、仕事が終わってからの時間が、本当に寂しい。
職場から自宅への往復。食事は簡素なコンビニ弁当。
休みになると、自宅で契約したサブスクの動画を見ながら、ダラダラとする生活。気づいたら夕方で。もう嫌になる。
「人肌恋しいな…」そんな気持ちが募っていく。
友人がどんどん結婚していく。自分だけ取り残された気分になる。中には子供がいる人までいる。唯一の友達だった矢野も彼女と楽しくやっているようで、俺のLINEに既読がつかない。
来るのは母ぐらいで
「あんた、元気してる?ちゃんと食べてるか?」
会話を母親としかしてないのが、悲しさに拍車をかけている。
イチョウの木が見ごろを迎えた頃、帰り道にふと…コンビニのポップが目に入った。
「Ⅹ登録で肉まん50円引き」
え…てことは肉まん半額。何個でもいいの?やっば…登録しよ。こうして、圭太はⅩに登録した。すぐにコンビニをフォローし、半額で肉まんを買うことが出来た。
自宅に戻る。そんな時だった。Ⅹって…楽しいの…かな?
画面を開くとたくさんの投稿が目に付く。
「今日はパフェを食べましたー」500いいね
「子供と公園で遊んだ」150いいね
「ユーチューバーに会いました」1900いいね
ほぉ…人気者だし、なによりみんな充実してるなぁ…いいなぁ。
「俺もそうなりたい」
そう決心はしたものの、何をしたらいいかわからない。
「ラーメン作りました」0いいね
「この作品おもしろかった」1いいね
「掃除しました」0いいね
何これ…どうしたらいいんだ・・・・。あの人気者になるにはどうしたら…頭を冷やそう。若い子がやるもんだⅩはそうだ。もう24のおじさんには無縁なんだ。そうだろ・・・。
すると一つのポストに目がいった。
「皆さん聞いてください。本当に私はサッカーの応援に行ってただけです。男性と一緒に行ったわけじゃないです。」
どうも、人気な一般の女性が、男性と一緒にサッカー観戦をしたとかで、男と絡んでるのに、そんなことするなという事で、炎上していた。
凄い勢いでコメントとリポストがついている。
誰にでもいい顔している女だ。
そうやって点数稼ぎして何してるんだ。
酷い言葉が並ぶ。
咄嗟にだった。こんな事許されるわけじゃない。俺は我慢できずに打った。
「本当に…一人で行かれたんじゃないですか?誰も確認したわけじゃないんでしょ。たまたまかもしれないじゃないですか。」
コメント投稿。
すると瞬く間に、コメントは炎上
俺のコメントに
「もしかして一緒にいたのお前w」
「彼氏気取り???」
「部外者は黙ってくんね」
「フォロワー0でワロタ」
鎮火する様子がなく、ついにはDMにも書く人が現れた。
鳴りやまない通知音になんでこうなるんだろう…と思いつつも
このままで、やられてたまるかと1通ずつ返信していた。
気づいたらⅩを開いて2時間半。生産性のないレスバトルを繰り広げているだけ。
集団いじめじゃないか…と思いつつも
返そうとした時だった。
マキさんからのメッセージ
圭太さん
私は、先ほどのサッカーの件でポストしたものです。圭太さんの言葉に救われました。コメント読み返してたら圭太さんが庇ってくれてて…ほんと嬉しかった。良かったら…仲良くしてもらえません…か?
ええ…マキさん。先ほどの人だ。俺なんかにメッセージくれてる。嬉しい。
すぐにマキさんのページへ飛ぶ。同じ県に住んでる。年齢は19歳か。DMは封鎖中。
え、封鎖したのに来たって事…。まじかよ。
そしてその最新ポストには
信じてもらえなくてもいいけど、一人だけ私を信じて庇ってくれました。本当に救われました。あんな人なら一緒にサッカー見に行っても後悔しないわ
俺だ…俺の事だ。唯一のフォロー1マキさんに心奪われてかけていた。
胸の高鳴りが収まらないし。すぐにフォロー返しをした。
DМも返す
「閉鎖中なのに良かったんですか?」と紳士を装い返す。
するとすぐにマキさんから返信が来た
『圭太さんだけ特別だよ』
もうダメだ。なんかレスバとかどうでもよくなり、マキに夢中になっていた。男っていうのは単純なんだな…。その日、圭太は知らない人のマキに恋をした。