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いい景色の創り方(人材育成)<後編>【行政とまちづくり】

前編は、自己の損得を恐れず、真摯に、人に、特に年下や後輩などに、100%期待することで、たまに期待を上回る「いい景色」が見られる、それこそが人材育成、そんなお話でした。

後編では、それを改めて実感した、最近の事例を2つ、ご紹介します。


事例① 専門資格に真っ直ぐ向き合うこと

一つ目の事例は、専門資格に関すること。

出典:資格のTAC

資格を取る意義

私は技師という専門分野で雇われているため、いずれ業務で必要になるそれなりに難しい資格を2つ共取得しています。
なぜなら、いいまちづくりを進めるためには、色んな視点や武器を持つ専門家が連携することが必須で、そのチームの中で自分がプロとして信頼されるには、資格を持つことが最低条件だからです。
特に、ときに民間企業に指示する側になるので、相手と対等でなければ信頼が成り立ちません。

しかし、正直なところ、行政ではっきりとそういった目標立てる人は、決して多くありません。
私が新採職員で入ったときにも、何だかんだで理由をつけて取ろうとチャレンジをしない先輩方が結構いました。
それでも、私には上記のような明確な理由があったので、遊びに誘ってくれる同期や友人に事情を説明して謝りつつ、全力で全てをつぎ込んで、25歳で1つ目を、29歳で2つ目を、一発で取りました(周りから、調子に乗るな、お勉強だけのくせに、とか色々言われたけど割愛)。

先輩方を理由にして楽して遊んでいても誰も咎めなかったと思いますが、組織として誇りある行政仕事をするためには、後進の手本となって良い流れを創ることが大事だと思ったからです。源流づくり。

2つ目のとき自宅デスク
法令集の分厚さが懐かしい

若手職員がつくる一本のセンターライン

その後、リーマンショックによる不況の影響もあり、徐々に技師の採用数が増え、若手職員が一気に増えてきました。
一切勉強やチャレンジをせずに先輩方から見える業務だけに上手に労力を費やす小器用な職員もいる一方で、毎年必ず何人かしっかり資格にチャレンジする職員もいて、そして結果を出し続けています。
年齢や順番に関係なく、真っ直ぐチャレンジした若手職員が、更に年下の若手職員にチャレンジのバトンを渡す。それが連なって、細くても強い一本のセンターラインとなって、聖火リレーのように火を灯し続けています。

そして、ここ数年になって、とうとう私と同じ時期、20代中盤でさっと1つ目の資格を取る後輩がちらほら出てきました。
もちろん、普段の仕事にもきちんと取組み、表面上の小綺麗や格好つけではなく、中身のある丁寧な仕事をします。妥協せず、しっかりと根拠まで突き詰め、思考と言語化とディスカッションを嫌がりません。
更には、20代中盤のうちに2つ目の資格までコンプリートする後輩まで出てきました。私もぶち抜かれたわけです。

凄いのは、自分が取って満足して終わるのではなく、同じ部署にいるもっと年下の後輩にも声をかけ、その世界に巻き込み技術や知識や姿勢を、私からは届かないような超若手職員に流し込んでいること。
きっと、その子も努力して近いうちに資格を取って、それを活かしてプロとして誇りある仕事をして、またこれから入ってくる未来の新採職員たちにそのマインドを渡して、そうやって20代のうちに真っ直ぐ努力して資格を取ることが当たり前になる、そんな時代がやってくるかもしれません。それって物凄いことですよね。

真っ直ぐ努力できる仕事できる人たち

事例② 広い視野で仕事をすること

二つ目の事例は、仕事の仕方に関すること。

技師が外の世界に出ていく意義

前述のとおり、私は技師ですが、その専門技術というのは、あくまで他の部署や職員が取り組む政策だったり、施設経営だったり、民間交渉だったり、地元協議などの、市民サービスの向上やまちづくりの推進のための手段でしかないと思っています。

そのため、技師が技師だけの世界に籠るのは意味がないと感じ、新採職員のころから、他の部署や他の職種の方々とのつながりやコミュニケーションを大切にし、業務外の時間を使って色んな部署や民間企業の政策や企画、イベント、まちづくりの現場にどんどん飛び込んできました。

その結果、横断的な広くフラットな視野を持つことができ、資格を活かして技術的な業務に携わったり、技術外の世界でプロジェクトを担当したり、技術と技術外の橋渡しをする調整役になったりしてきました。

出典:リノベのススメ
技術(建築)× 事務(商業)の例

王様の椅子に誰が座るのか

一方で、同じ行政内の技師の先輩方にも、広い視野で仕事をしている方々はたくさんいます。私には足元にも及ばない技術や企画力、ネットワーク、経験や実績を持っていて、日々尊敬しています。

ただ、一つだけ残念に思うのは、その自ら歩んできた研鑽を、自分で全部受け止めて完結している人が多いこと。
せっかく道を切り開き、材料を集めたなら、それを一人で占有するのは非常に勿体ない。別に減るもんじゃないですし、どんどん後ろに流せばいい。それが人材育成。

一生懸命真摯に取り組んで来たからこそ、完成した王様の椅子には、自分だけは座ってはいけないと強く思います。そこに座るのは、市民と後進の役割です。

出典:iStock


受けとる側から渡す側へ

そのため、私は30歳前後の頃から、築いてきた知識やノウハウ、ネットワークなんかを、どんどん後輩に流すようにしています。
彼らが業務で困ったら、庁内の解決できる人につなげるのは基本として、先輩方や民間のプロフェッショナルに話して頂く講演会を企画したり、他部署や他自治体職員とつながるイベントに補助スタッフとして読んだり、中には後輩自身がやりたい!と言い出した企画グループの立ち上げから実施までひたすら伴走したり。

すると、最近感動したのが、今まで受けとる側ばかりだった後輩たちの中で、少しずつ、渡す側の職員が出てきたこと。

新採が入ってきたらすぐにチームをつくって色んな部署の若手職員とつなげたり、あるいは自らが技術外の職場にいった経験をさらに年下の後輩たちに伝える企画を始めたり、そんなことが起き始めている。もはや私は、こんなことやりましたーという結果報告や、企画したんでよかったら見学きてください!というお誘いを受ける立場。

先日は、そんな大河の流れの一つである、後輩が後輩のために開いた素敵な企画に、カメラマン兼打ち上げ担当としてお邪魔させてもらってきました。後輩の後輩の後輩になると、もはや私の年齢の半分近くになりますが、そんな子たちとも当たり前のようにフラットに話せる関係はありがたいですね。

後輩が外の世界の話を、さらに後輩に伝える

まとめ

そんなこんなで、
ひとり耕し続けた荒れ野が、気づけば色とりどりの実が成る森になる、
あるいは、
ひとりで楔を打った僅かな源流が、昔からあったかのような立派な大河になる、
そういった瞬間が、心が報われる「いい景色」、そんなお話でした。
これからのバトンの行く末が楽しみですね。

楽しくまちに飛び込むチカラがあるよね



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