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100年ぶりに新幹線に乗った


100年ぶりってのは嘘だ。

それでも、そう思えてしまうくらい長い間、この空間を遠ざけていたのだな、と実感した。

一人ぼっちの北海道出張。
津軽海峡をくぐり抜ける北海道新幹線は、小刻みに揺れながら、葉の落ちた林の中をゆく。稲刈りの終わった茶色い田んぼの中をゆく。

降り立った新函館北斗駅は、閑散としていた。遠くの街の灯りがぼやけて、呼気と外気の差を思い知る。気温は10℃台前半、もうすぐ冬がやってくる。

北斗はがたがたと音を立てて、わたしたちを札幌まで運ぶ。諦めと、不安と、わずかな希望を乗せて、静かにホームへ入っていく。

減速する機体。停止の瞬間、置いてけぼりを食らいそうになる自分の身体を足が支える。

ドアの開く音、ホームの雑踏、そういうものが日々から切り離されてどれだけになるだろう。少なくとも、日常的に公共交通機関を利用しないわたしにとっては、「以前」はずっとずっと昔のように感じられた。

札幌駅のホームを、大きな荷物といっしょに歩く。そうだよな、旅って、こういうものだったよな。久しぶりの感覚に、思わず胸が高鳴る。

100年ぶりに旅に出た、気がした。そう思えるくらい、旅を遠ざけてきたんだな、と、少し寂しくなった。

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