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モリマサ公『絶望していろ、バーカ』を読む
この詩集には透明な輪郭線をなぞる不思議な疾走感がある。繰り出される言葉の波の中で私は時々立ち止まったり、気になるフレーズをノートに書き写したりしていた。ノートは10ページになった。
詩集を閉じてから、私はノートを最初から読み返してみた。すると、そこには私が受け取った詩集の核のようなものが現れていたので、おもしろかった。
例えば、冒頭の四つの詩から書き写したものを並べてみるとこうだ。
ケータイふぁぼられるまでじっとみつめてる間5分間透明
「自分のこと今度から宇宙って呼ぶね」ってつぶやいて
地平線がかぎざぎに囲われた東京
自分という風景がホームを離れて
証明されていく毎日に
あたしたちは朝を横切っていく
店内のがらんどうは今映し出されたあたしたちのこころだ
ムスーにのびていく透明の腕たちをかきわけて
関東平野を実態を失ったいくつもの歌が横切る
歪んだ輪郭線がぼやけて肉やオーラがにじんでいる
指をねぶりながら雲の腹をみて確信する
都市的な方向に向かっているのに何も映らないのは
壊滅している証拠だ
実際これは声なんかじゃなかった
皮膚から直接語りかけてくる
やりかたで
おれたちが望んだのは強烈な生ではなかったので
生き残るたびに死者たちに悪い気がしてた
そのどっちでもよさが明日を毎日呼び寄せた
作者は「絶望していろ、バーカ」と書く。それは強烈な言葉を使った言い回しで、強い意志を感じるが、その表題詩のなかには、こんなフレーズが散りばめられている。
輪郭線を失った人類がやわらかくはりつめてどこでもない場所となってく。
「そこまでしあわせでないかんじ」がする支配。
「必要以上に絶望すること」によってねつ造されてく「傷」の存在。
とっても安全な痛み。
「だれにも会いたくありません」
が画面にぽっつり表示されて。
「ぼくたち」はすでにコミュニケーションをはじめてしまう。