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傍若無人な人間と搾取される優しすぎる人【あくてえ】山下紘加著

傍若無人にやりたい放題の人間(祖母、父親)と、
優しすぎて相手をつけあがらせる人間(母親)。
そんな様子を見て、
「そんなのおかしい!」と
怒りを爆発させる主人公ゆめ。

そんなゆめに対して
「あくてえばかり言って、可愛げのない子」と
封じ込めようとする祖母と父親。

こんな構図が見えてきました。


・介護生活に終止符を打った私の母

私自身、子育ては経験しているものの、
誰かの介護を経験したことはありません。
しかし、つい最近まで私の両親が
母方の祖父母の介護のため、
自宅と祖父母宅を往復で介護してました。

自宅と祖父母の家は違う県にあるため
移動が大変だったようです。

週の半分自宅に戻ってきていたので、
その時に母と電話してました。
今でも、「できるだけ週1電話」と、
お互いにスケジュールを合わせてます。

母から祖父母の介護について話を聞いてましたが、
「子育てはある程度年齢が行けば終わるけど、
介護はいつ終わるか誰にもわからない」

いつ死ぬかわからないので当たり前のことですが、それをより強く実感しました。

・単なる祖母の悪口本ではなかった

芥川賞の選評ある審査員から
「知らないばあさんの悪口を聞かされているような心地悪さがあった」とありました。

選評だけをを読むと、
「祖母の悪口本」と一瞬思ったくらいです。
しかしよく読んでみると、
こんな構図が見えてきました。

年を取るにつれて傍若無人になっていく祖母。
不倫した挙げ句、別の女性と再婚し
自分の母親の介護を元妻に丸投げする父親。
しかも途中から生活費も払わなくなります。
自分の母親に対して、調子のいいことばかり言います。そのせいで普段介護をしてる元嫁に対して、不平不満を言う有様です。

それに対して不平不満も言わず、我慢をしてる優しすぎる母親きぃちゃん。

そんな大人たちを見て「嫌なことは嫌と言わないと、こういう奴らはつけあがる」とイライラして見つめるゆめ。

『絞め殺しの樹』ではないのですが、
母親きぃちゃんを見て
「NOと言えない人の末路」を見てるようでした。

・小説と現実は違う(ネタバレあり注意)

「どう決着つくんだろうか」と思いながら読みましたが、きぃちゃんが倒れた以外は大きく変わらず。

相変わらずゆめは、祖母に向かって「あくてえ」と言っているし、「はばあ」呼ばわりです。

最後の方で「小説には終わりが来るけど、現実は終わりがこない」と言ってました。
小説家を目指しているせいか、より感じるでしょう。

確かにこの小説は終わりが来ましたが、
今のままでいる限り、
この家族関係に終わりはこないと実感しました。

・感想

小説の初めから終わりまでの期間は、
おそらく半年も経っていないだろうと感じました。

回想が多くを占めたので、
思ったほど時間が進んでいないと感じました。

40ページくらいまで読んで
「あれ、明日の旅行の話?今までは何だった?」と、時間軸がわからなくなったくらいです。

身内の介護はキレイごとではできないというのを
まざまざと見せつけられました。
介護されてる人との関係性にもよりそうですが、
介護経験のある人は、共感できそうです。

以上、ちえでした。
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