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「それ、あるある!」子育て中のあなたが共感できる芥川賞受賞作とは【この世の喜びよ】井戸川射子著

「まるで自分を見守ってる存在がいるかのようだ」

芥川賞受賞当時、話題になってましたが、
主人公目線で進む「一人称」でも、
第三者目線の「三人称」でもなく、
「あなた」という「二人称」で
物語が進行するという特徴があります。


・「あなた」と語りかけている人

最初は、子育てに奮闘してた頃の主人公に対して
子育てが終わった「今の主人公」が
語りかけているかと思いました。

読み進めていくと、どうも様子が違う。
「今の主人公」に対しても、
あなたと語りかけています。

著者が主人公に語りかけているようにも見えます。
「自分には見えないけど、
誰かが見守っていてくれているのではないか」

励まされそうでした。

・他人へ話そうとすると忘れる

主人公は、高校生の少女と出会います。
母親が妊娠中、1歳の弟がいます。
彼女も弟の子育てに関わっています。

「こんなときは、どうしたのか?」
そう質問されます。
いざ、子育ての体験を話そうとしても
なぜか忘れてしまうという現象が起こります。

私も長男や次男が、今より小さかった時のことを
誰かに話そうとします。
「大変だったはずなのに、
何がどう大変だったかは忘れてしまった」と
思い出せないことが起こります。

「なんかわかるわぁ」と共感しました。

・感想

個人的には、受賞に納得した作品です。
純文学YouTuberさんも絶賛してました。

一方でAmazonレビューの手厳しさに驚きました。
「純文学に慣れてない故?」と思われる投稿もありました。

レビューを見て気づきましたが、
著者が詩人であることを忘れてました。
うまく言語化できませんでしたが、
「他の候補作と文章表現が違う」と
なんとなく感じてました。

詩は、短い文字数で読み手の想像を膨らまします。
映像は受け手の想像の余白がないのに対して、
活字は余白が大きいです。
詩や俳句、短歌は、小説より更に大きくなります。

余白の大きさを象徴しているのが、
各々の感想文です。
選評委員の解釈もですが、
レビューや感想文を読んでも
「こんな解釈ができるのか」と発見がありました。

「子育て中、または経験者は共感できそう」
「子育て中、あるあるだよね」と頷くところが
所々にありました。

愚痴の一つ言いたくなったときにオススメです。

以上、ちえでした。
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