ヤバい人から逃げる方法【絞め殺しの樹】河崎秋子著
「NOと言えない人生」
この一言に着きます。
個人的な意見ですが
体調のいい時に読むことを推奨します。
普段こんなことは言いませんが、注意が必要です。
・なぜ体調がいい時に読むべきか
理由は「主人公ミサエの境遇があまりにも悲惨すぎるから」です。
元屯田兵の家の使用人になった時は子どもだったから仕方がない面もありました。
しかし、保健婦になって経済的に自立しているのにもかかわらず、結婚相手選びまで「NO」と言えないのはしんどいと感じました。
結婚相手ですが、
婚活市場なら間違いなく「地雷案件」です。
表面上は、一流大学出出身で、銀行員。
当時なら安定した職とみなされていました。
パートナーというより
召使いを探してるように感じました。
共働きをしてるのに、家や子どものことは全部にミサエ押し付けてる有様。
「休みの日に遠くに連れてやってる。だから父親の役割果たしてる」
今なら「うちの夫は思い上がり」とTwitterで悪口を書かれてそうですね(笑)
ある件をきっかけに夫と離婚しましたが、
「やっと離婚したか」と感じました。
それでも「離婚を要求されるのは沽券に関わる」という人だったので時間がかかりました。
結局、夫から嫌われるように仕向けて別れました。
・前半8割を乗り切れるか
本の構成は一部と二部に分かれてます。
一部は、昭和初期生まれのミサエという女性の人生が書かれています。
二部は、ミサエの息子雄介について書かれてます。
この息子ですが、ある家に養子に出されました。
正直、ミサエの人生だけで終わっていたら、
ただの救いのない話でした。
雄介の章があってこそ、少し希望の持てる話になりました。
問題は、ミサエの章で8割を占めます。
そこまで読みきれるかが鍵になります。
・学んだこと
正直しんどい話なのに、
全部読み切ってしまいました。
読ませた著者の力量を感じました。
ただしんどいだけで終わりたくないので、
この本を通じて学んだことを取り上げます。
1.サイコパスの見分け方
元屯田兵の家の人ほぼ全員、夫、恩人の息子…。
恩人の息子である小山田俊之の言葉を借りると、
「屑ばっかり」と思わず口から出ました。
よく見ると、端々に予感させる言動が出てます。
具体的な言動はあげませんが、
主人公との会話で感じ取れます。
2.我慢し続けた結果を知る
10歳のときに屯田兵の家に行ったのは
仕方がなかったかもしれません。
その結婚相手をやめとければよかったのに、
保健婦として根室に戻らなくても良かったに、
そう思わずにいられませんでした。
現代なら、毒親や嫌がらせをする家族、
ブラック企業勤務などが
当てはまりそうと思いました。
雄介の章で、血の繋がってない姉から
「この家から逃げて」と忠告されます。
更に、雄介も育ての母親に向かって
同じことを言います。
「時には逃げることが必要」と感じました。
3.家父長制の現実
「たった100年前はまだこんな時代だったのか」
ミサエ以外に登場する女性たちを見て
そう感じずにいられませんでした。
男の子を産めないだけで立場のない妻、
産後キツくても「私の頃はすぐ働いていたんだよ。このひ弱!」と姑に言われて、無理が祟って子どもを産めなくなった女性、
自分も仕事してるのに家のことは丸投げされ、更に産後1年も経ってないのに避妊をしない夫の相手をする女性…。
残念なのが、「その頃より生きやすくなりました」と
先代の女性たちに胸を張って言えないことです。
「こんな時代は嫌だ」と改めて思いました。
・感想
「NOを言えないとこうなる」
この一言につきました。
NOを言えないことも含めて自分の人生と
登場人物たちを見て感じました。
今の状況は、選択し続けた結果を反映してると
自覚しないといけないと思いました。