厳しい世界で明るくたくましく生きた女性たち【台所太平記】谷崎潤一郎著
『細雪』は未読です。
そもそも谷崎潤一郎作品自体初めてです。
2022.7.24のメロディアスライブラリー放送。
放送から随分後になってから読みました。
・どんな話か
主人公千倉磊吉(らいきち)は、おそらく著者と想定。
17歳年下の妻讃子と当時7才の娘睦子、
讃子の妹の鳰子と住んでました。
昭和10年(1935年)頃の話。
第二次世界大戦の前です。
当時、磊吉は神戸に住んでました。
何人もの女中が登場。
最初に登場したのは「初」という
鹿児島県枕崎出身の女性。
リーダー格でした。
その後彼女を頼りに多くの女中が来たため、
枕崎出身の女性で占めていた時期があります。
後に関西出身の女性も女中になります。
「随分賑やかだなぁ」と感じました。
・千倉家は裕福な家庭と想定
作中ではあまり感じませんでしたが
女中として迎え入れているため、
千倉家が雇っていることになります。
作中では常に3、4人の女中さんがいたので、
「随分裕福な家庭だなぁ」と感じました。
現代だと家事代行サービスなどがありますが、
料金体系を調べたらそれなりの金額しました。
使える人はほん一握りと感じました。
裕福さを伺わせるエピソードに
太平洋戦争中も食料の確保に
そこまで不自由をしていなかったとのことです。
その時別のエリアに引っ越しましたが、
そこでは比較的食材が入手しやすかったようです。
この時代の小説を見ると、
戦時中は食料が入手できなかったり、
あっても配給制だったりと
苦労してるエピソードが出てきます。
しかし、この作品では
ほとんど出てきませんでした。
この一言に千倉家の裕福さが表れています。
・卒業していく女中
多くの女中は結婚して卒業。
なかには、女優の付き人になって
卒業した人もいます。
円満に女中を卒業した女性に対しては
その後も縁が続いているように感じました。
たくさんの女中を雇っていますが、
磊吉と讃子は我が子のように
見守っているように感じました。
讃子は結婚についても相談受けたり、
媒介もしていたようです。
「女中さんを雇えるほど裕福だなぁ」と思うと同時に「人を雇うのは責任を伴う」と感じました。
最後の方で磊吉77歳のお祝いがありました。
結婚して卒業した女中達も
全国各地から集まりました。
まるで家族のような関係性です。
・感想
最初に出てきた初が、鹿児島出身のため、
鹿児島弁が出てきます。
私の両親が鹿児島出身です。両方の祖父母は鹿児島弁が強いため、未だに言ってることの半分くらいしか分かりません。両親に通訳してもらう有様。
文中の表現を私の母に話したら「あー、こんな感じだね」と納得してました。
痙攣を起こす女中のエピソードで、
医師の発言に驚き。
診察後、抗けいれん薬が出ましたが、
医師はこう続けます。
「一番の薬は結婚することです」
あとがきでも「出た!結婚万能説」と
突っ込んていたくらいです。
読んでいないので確認できていませんが、『細雪』でも似たようなエピソードがあるようです。
今から約80年前の話ですが、
結婚への価値観に驚かされました。
私の祖父母より上の世代の人が、「結婚したら幸せになれる」と促すのも納得したくらいです。
しかし、2022年を生きる私にとっては
信じられません。
結婚して幸せになってる人ばかりではないので、
余計そう思うかもしれません。
当時の女中達の置かれた環境を感じながら、
それでも明るくたくましく生きてる姿に
考えさせられました。
機会があったら『細雪』も読んでみたいです。