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あなたが読んでいる本の紙、誰が作っているか知ってますか?【紙つなげ!彼らが本の紙を造っている】佐々涼子著

「誰が本の紙を造っているのか」
こんなに紙の本に
お世話になっているのにも関わらず、
考えたことがありませんでした。

本を書いている著者は意識できるでしょう。
人によっては、出版社を意識する人もいるかもしれません。

それでも紙を造っている人については
考えたことがありませんでした。
そんな知られざる製紙工場の話です。

この本を知ったきっかけはこちらの記事です。

恥ずかしながら、この著者さんの存在を知りませんでした。
紙の本が大好きな人はもちろん、
一度でも紙の本にお世話になっている人なら
面白く読める内容になっています。


・「社内で紙がないって大騒ぎしています」

著者が石巻工場に取材に行くきっかけになった一言です。

当時、石巻工場で書籍や雑誌などの出版用紙の約4割が作られていました。
2011年3月の東日本大震災で
甚大な津波被害を受けました。

その影響で紙が造られなくなりました。
4割も占める工場から
造られないとなると
不足してもおかしくありません。
他の工場が穴埋めするにしても限界があります。

「まさかこんなものが不足するなんて」と驚きました。

「まさかこんなものが不足するなんて」
薬剤師の目線で見て、
ある甲状腺の薬が不足したことを思い出します。
当時は大学生で、
震災の数ヶ月後に実務実習に行きました。

実習先で甲状腺の薬が入手しにくくなっているという話を聞きました。
この薬がないと生きられない人もいるような
必要不可欠な薬です。
一時期、同じ成分の薬を外国から輸入しました。

業界のいる人間だからこそ
知ることになった情報です。

まさか本の紙も
影響を受けているとは思いませんでした。

・紙を造っている人を意識しなかった理由

こちらは、樺沢紫苑先生の
『集中力がすべてを解決する』からです。
本の一番最後にこんな情報が書かれています。

著者はもちろん、出版社や印刷・製本会社は
書かれています。
しかし、紙を造った会社は書かれていません。

こちらの本に出会うまでは
どこの会社で造られたのか
意識することがありませんでした。

・再開までの壮絶な道筋

石巻工場は津波に飲み込まれました。
当時の写真が掲載されていましたが、
「よくこんな状態で半年で操業を再開できたものだ」と驚かされるくらいです。

工場の操業再開以前に、
食料品や生活必需品にまで事欠く状態です。
電気や水など工場の再開に必要なものが
なかなか手に入らないことも触れられていました。
避難所に優先的に供給されたからです。

工場の片づけをしている時に、構内から41人のご遺体が出てきたことに触れていました。

大人だけでなく、幼い子どもも含まれていました。
片付けをした社員の人が
「本当にかわいそうで」と悲しみに暮れながら、
操業再開に向けて準備していたことが伺えました。

「もし石巻工場が被災したのが、今の時代だったらどうなっていたんだろうか」と考えさせられました。

当時は今ほど電子書籍などのコンテンツが
今ほど普及していませんでした。
まだ電子コンテンツが今ほど普及していなかったからこその決断と思いました。

・感想

ノンフィクションを書いていると、私が能動的に書いているというよりは、物語という目に見えないおおきな力に捕らえられて、書かされているのだと感じることがある。

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている p204

取材に応じている人の様子が
ありありと浮かんできました。
社員だけでなく、駅前にある飲食店の店主にも取材していました。

地震の後は治安が悪くなった話をしています。

お店の売上金を奪おうとした人に
鉢合わせしたことも話していました。

工場が再開できたという喜ばしい知らせとともに、
負の側面についても触れられていたことが
印象的でした。

「災害と戦争はどちらもその後の治安が悪くなる」
そういう意味では、どちらも大差がないと考えてしまったくらいです。

それにしても著者が既にお亡くなりになっていることが残念でなりません。
他の本も機会を見つけて読みます。

以上、ちえでした。
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