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反省します。私は傲慢でした。【「若者の読書離れ」というウソ】飯田一史著

「そもそも若者の読書離れは本当に進んでいるのか」
そんな疑問から始まっている本です。

漠然と「今の若者は本を読まなくなった」と言っているのを聞きします。
私もそう思っていました。

実態はどうなのか。過去の平均読書冊数や不読率などの統計から、実態を探っていきました。


・本当に若者は読書しなくなったのか

「日本人の約半分の人が、マンガや雑誌以外の本を月1冊も読まない」

この調査結果をよく聞きませんか。

PISA※で、日本人の読解力が下がったことの原因に
「日本の子どもたちが本を読まなくなったから、読解力が下がった」と分析する人がいるくらいです。

PISAとは、OECD生徒の学習到達度調査とは、経済協力開発機構による国際的な生徒の学習到達度調査のこと。3年に一度行われる。
義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を調査するもの。

文部科学省ホームページより

これについて著者は否定しています。
1990年代の末に平均読書冊数と不読率は最悪でした。
しかし、2000年代には V 字回復をしています。

その理由として、危機感を持った行政が、民間と連携して読書の推進活動を行ったからです。

私には2人の息子がいます。
彼らの乳幼児健診の時に
ブックスタートについて説明を受けました。
その時に絵本を1冊もらいました。

小中学生になっても、朝の読書があるなど、
読書を推進する活動が行われています。
少なくとも、中学生までは続きます。

「V 字回復したのはその活動の影響もあるだろう」と著者は考えています。

・理想を押し付けていた

「そもそも、本や読書の定義が狭すぎるのではないか」と著者は疑問を投げかけています。
平均読書冊数が一番低かった1990年代末でも
少年ジャンプなどの漫画雑誌は読まれていたそうです。

「本を読む」という行為の中に、
漫画や雑誌は含まれていないと指摘してます。
漫画や雑誌などを入れたら、
読んでる人の割合はもっと増えるでしょう。

私は月に10冊読みます。7冊以上読む人は3%です。
明らかに少数派です。
それなのに、その事実を忘れていました。

私自身、無意識に「もっと読書をすべき」と
理想を押し付けていたのではないかと気づかされました。

今の若者の方が読書をしているのに、
「今の若者の読書はかつてより劣化している」と思い込んでいる。
「自分はなんて傲慢なんだろう」と反省させられました。

・そもそも読めない人もいる。

ディスレクシアという言葉を知っていますか。
学習障害の一種で、一般的な理解能力などに特に異常がないが、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害です。

詳細はこちらより。

長男が自閉症スペクトラム障害と診断された時に、
発達障害について勉強しました。
その時に、文字の読み書きができない特性について知りました。

そんな人たちに本を読ませるのは、目の見えない人に読ませるのと同じくらい乱暴です。

そうは言っても「読まない」と「読めない」の線引は難しいと著者は指摘しています。
ディスレクシアでなくても
読むのが苦手な人が一定数いるからです。

・文学賞と若者との相性は悪い

10代の好きな本のタイプが興味深かったです。

1.正負両方に感情を揺さぶられる。
2.思春期の自意識、反抗心、本音に訴える。
3.読む前から得られる感情がわかり、読みやすい。

3.が読みやすいのは想像がつきます。
それでも、読後に得られる感情が違うこともありますが。

芥川賞・直木賞では、読む前から読後に得られる感情がわかる作品は評価されません。
過去に受賞作を読んできましたが、
単純明快な作品はあまりないように感じます。

3.だけ当てはめて考えても、
10代の好きなタイプの本は選ばれにくくなります。それだけでも、若者と芥川賞・直木賞は相性が悪いと感じました。
他の文学賞も似たような傾向でしょうか。

例外は本屋大賞です。選ぶのは書店員です。
本屋さんで働いている人と、中高生の感性は近いのではないかと推測しています。

確かに本屋大賞の作品を読んだことがありますが
わかりやすい作品が多いと感じます。

小説や文学作品に慣れていない人に対して、
本屋大賞の本から読んでみることを勧めている人もいるくらいです。

余談ですが、直木賞の候補作と本屋大賞の候補作が一緒になることがあります。

直木賞では手厳しく評価された本が、
本屋大賞では受賞することも珍しくありません。
選考基準の違いを感じました。

・感想

10代の人たちが読んでる本を知らなかったと実感させられました。
人気の本を知る以前にそもそも
「こんな本があるのか」と勉強になりました。

実態を知ってしまった今、
「近頃の若者は本を読まなくなった」とは
言えなくなってしまいました。

月10冊読む私は「少数派」と思うくらいが
ちょうど良さそうです。

今回のテーマに限らず、
「それはホント?」と別の視点から見る癖をつけようと思いました。

以上、ちえでした。
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