
お菓子作りと思い込む【乳と卵】川上未映子著
最近シフォンケーキとプリンをよく作ります。
どちらも材料に牛乳と卵を使用。
このタイトルを見て、お菓子の材料なので、
「お菓子作りの話かな?」と思ったら
私の想像を遥かに超えてました。
一言で言えば、
性と生が混ざり合った話です。
・あらすじ
東京に住んでる主人公の元に、大阪から姉(巻子)と姉の娘(緑子)が来ることになりました。
巻子はシングルマザーで夜のお店で働いてます。
緑子は思春期。母親とは会話をせず、筆談です。
巻子は豊胸手術を考えており、東京で手術を受けるつもりです。そんな母親に対して緑子はショックを受けます。
緑子は「おっぱいを飲ませていたのが原因で胸が小さくなった」と言われました。
「お母さんの人生は、わたしを生まなんだらよかったやんか。」
「あたしは、お母さんが大事、でもお母さんみたいになりたくない」
このセリフからも伺えるように、
母親のことは心配だが、
母親のようにはなりたくないと
複雑な感情が揺れ動いてました。
・乳と卵を表すもの
・乳:胸…巻子の豊胸手術。
・卵:排卵を象徴。緑子の日記から初経を迎えたばかりと推測。
大体小学校、高学年から中学生で迎えます。
初経を迎えたということは、
排卵するようになっているので、
子供を産めるようになったことを意味します。
・感想
タイトルを見て、
お菓子作りに意識がいってました。
しかし、よく考えたら、牛乳も卵も生命を象徴していることに気づきました。
アレルギー対応のものや、
ビーガン対応のお菓子は
「牛乳と卵を扱っていません」とアピール。
母乳は哺乳類が子供を産んだ時に与えます。
赤ちゃんにとっては貴重な栄養源です。
人間なら粉ミルクという手もありますが、
動物はそうも行きません。
生きるために必要になります。
卵については、鳥類や爬虫類など卵から生まれてる生き物がいます。
哺乳類も、女性(メス)は卵子を持ってます。
生命の象徴である乳と卵を切り口に、
胸の大きさで気にする母親と
初経を迎えて
「子供なんか絶対産まない」と心に誓う娘。
このタイトルからこんなに生命を象徴させるような小説が思いつくものかと驚かされました。
余談ですが、
この作品は2007年芥川賞を受賞しました。
納得です。