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アンネ・フランクの伝記ではわからなかった「生き残った者の苦難」【エヴァの震える朝】エヴァ・シュロス著 吉田寿美訳

「生き延びてくれてありがとう」
思わず著者に言いたくなりました。

メロディアスライブラリー2023.1.22放送。


1月27日はアウシュビッツ強制収容所が、
解放された日だそうです。
その日が近いため、
今回この本が取り上げられました。

小学生の時、アンネ・フランクの
伝記マンガを読んだことがあります。
たった15歳で人生の幕を閉じた女性です。

当時「なぜ彼らは、ユダヤ人ってだけでこんな目に遭わないといけなかったのか」と強いショックを受けました。

成人は労働力になるため、
生きて帰るチャンスが残されてましたが、
高齢者、妊婦、子ども、障害のある人は
ガス室で殺されてしまいました。

アンネ・フランクの伝記では
強制収容所の生活まで
細かく書かれていなかったため、
本書では、詳細を知りました。

ラジオの放送内で小川洋子さんが、
「これが人間のやることなのか」と繰り返しました。
収容所に入れられた後の著者は、
一つ一つの決断が命に関わることばかり続きました。

特に印象に残ったことを3点あげます。


・アンネ・フランクの言葉

「人間の本性はやっぱり善なのだということを今でも信じているからです」

この言葉に対して著者は、
「彼女がアウシュビッツ、ベルゲン・ベルゼン収容所に行く前だったから言えたと考えないではいられない」と指摘しました。

著者の収容所生活を見ると、
私も同じ感想を持ちました。

余談ですが、アンネの日記は、
秘密警察に捕まる前に書かれたものです。
収容所に入った後のことは書かれていません。

・自分や家族だったらと想像してほしい。

アウシュヴィッツ強制収容所に着いた後、
男女に分けられます。
そこで8、9ヶ月の男の赤ちゃんを抱いた女性が、
「赤ちゃんを離したくない」と言ってました。

結局、その親子は引き離されてしまいました。
その男の赤ちゃんを老人が抱きました。

言葉も状況も分からない赤ちゃん。
それでもただならぬことが起こることは分かっているようです。
男女に分けられるので、異性の親子は離れ離れになってしまうとリアルに感じました。

私が著者の立場だったら、
家族で生き残る可能性があったのは
夫と私だけでしょう。

息子2人と義両親はガス室に連れられて
殺されていたのではないかと想像したら
背筋が凍りました。

ただ、ユダヤ人というだけで理不尽に
こういう目に遭わされていたと思うと
言葉が出ません。

そして名のない人たちが
どれだけいるかと想像すると胸が痛くなりました。

・ぎりぎりのところで、何度も運がつながった

著者は運良く、母親と一緒に行動できました。
親戚の看護師ミニにも再会。
ここまで来ると著者は、
生き延びる運命だったとしか考えられません。

しかし、多くの人たちは亡くなってしまいました。
著者のお父さんやお兄さん、
後に義理の父親になるオットー・フランクの
妻と娘たち(アンネ・フランクと姉のマルゴット)も
例外ではありません。
この言葉が私には重くの仕掛かりました。

・まとめ

こちらの原書は1988年に出版。
実は私が生まれた年です。
戦後43年経過してました。

人種差別や特定のグループに対する偏見や暴力がどんなに危険をはらんでいるか、若い人たちに教えなければならない。それは自分たち生き残ったものの義務であり、責任だと考えたのです。

エヴァの震える朝 p333

自分たちと異なる人々を恐れるのではなく、彼らのもつ信仰や生活様式を受け入れることができれば、私たちは子どもたちや未来の人々のためにもっと安全な世界を残せるでしょう。

エヴァの震える朝 p334

これは著者だけでなく、私たち今の時代を生きてる全ての人間の責任と感じます。

特定の人たちを排除することがどれだけ危険なのか、アンネ・フランクの伝記や今回の本から学ばされました。

この出来事が起こったのは
第二次世界大戦で遠く離れたヨーロッパの話です。
しかし、我が国日本でも
無関係でないと感じずにいられません。

一部の人たちの間で、外国人や障害者など
自分と違うカテゴリーの人間に対して
憎しみを向けている人がたくさんいます。
国の決定機関にいる人も例外ではありません。

実際に日本でも、
多くの障害者を殺した人が出てきました。
「殺したほうが介護者が楽になる」と言う理由で。

自分と違う人間を気に入らないという理由て、
排除することが
どれだけ怖いことかと感じずにいられません。

過去に行ったホロコーストを揶揄するコントが原因で、東京オリンピックの役職をやめることになった人がいましたね。
「こうなるのも当然でしょう」と思いました。

私は実際に経験をしていませんが、
子どもや孫世代に伝えていく責任を感じました。

以上、ちえでした。
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