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80年前有名なリゾート地で起こった事件に驚かされた1冊【別れを告げない】ハン・ガン著、齋藤真理子訳

以前『少年が来る』を読みました。

こちらの作品では「光州事件」が題材でした。
今回の作品は、1948年に起こった
「済州島四・三事件」を題材にしています。

当時、日本が終戦を迎えて3年が経っていました。
お隣の韓国ではこんなことが起こっていたことに驚きました。


・友人の大怪我から始まった

作家である主人公キョンハは、
友人であるインソンから
「至急指定した病院に来るように」と
連絡がありました。

彼女は電動のこぎりで
指を切断して入院していました。
木工の仕事をしています。

インソンは済州島の自宅でインコを飼っています。
「インコたちの食事に困るから退院するまで世話をしてほしい。暗くなる前に私の自宅に行って」と
無茶な要求をするところから物語が始まります。

・友人の母親の人生をたどることに

キョンハは、悪天候の中、
インソンの自宅へ向かいます。

インソンは、済州島に戻って認知症の母親の介護をしていました。4年前に亡くなりました。
キョンハは、彼女の母親と面識がありました。

物語が進むにつれて、
インソンの母親が済州島四・三事件の当事者であることがわかりました。
母親、兄と妹を殺されました。

自宅に事件についての新聞記事が残っていたり、
定期的に鉱山に捜索に行ったり、
刑務所の名簿を要求したりしました。
生前、母親は兄の行方を探していたようです。

インソンの母は、自分の指を
娘であるインソンの口に入れて
噛ませようとしていました。

事件当時に似たような行動を行っていました。
晩年に事件の心理的影響が現れたように見えました。

・日本も無関係ではない

日本の終戦後に、済州島に帰った人もいました。
しかし、この事件の影響で
再び日本に戻る人もいたそうです。

多くの住民が船上で殺されました。
海に捨てられた遺体が対馬に流れ着きました。
2007年に合同慰霊祭が行われています。

リゾート地のイメージが強い済州島ですが、
約80年前にこんな悲惨な事件が起こっていたことに驚くばかりでした。

・感想

『少年が来る』で登場する光州事件同様、
済州島の事件も、軍事政権のうちは
表立って話題にすることができませんでした。
遺族会の人が逮捕されました。

済州島の事件は、共産主義者を一掃することが目的でした。
この事件の影響で、住民たちは「アカだと思われるのではないか」と恐怖を持っていました。
現在はわかりませんが、長い間与党の票田でした。

この事実に事件の影響を生々しく感じました。

以上、ちえでした。
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