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パンくず一個にさえ感謝【四つの小さなパン切れ】
「この人は詩人だろうか」
読み始めたときの感想です。
文体からも感じましたが、
詩で書かれている項目もあります。
自分たちを虐げたナチ政権について恨みや怒りなど強いエネルギーは伝わってきません。
それよりも、生きていることを感謝しているかのようです。
メロディアスライブラリー2020.1.26放送。
・飢えについて
この文章を読んで戸惑いました。
飢えを経験したことのないひとをうらやましいとは思わない。なぜなら、そういうひとたちは、たった一個のパンくずの悦びも知らないだろうから。
飢えというとマイナスな印象です。
歴史上でも食料が確保できずに飢えて死ぬ人がたくさんいました。
それに比べたら、今の日本では食べ物を手に入れやすくなりました。
ゼロとは言いませんが、過去に比べたら飢え死にしたり、飢えを経験する人は格段に減ったと感じます。
一個のパンくずの悦びどころか、「ありがたい」と思える人でも少数だと思います。
一見よくないことに思われることでも、
その裏には「ありがたい」と思うきっかけになると考えさせられました。
・未来を呼び寄せる場所にするには
著者が戦後アウシュビッツに行った時の話です。
「自分が苦しめられた場所に出向くのはどんな気分なんだろうか」と考えさせられました。
時々他の人が投稿したアウシュビッツへ行った体験談を読むことがあります。
書き手の全員「行くべきところだ」と結論づけてます。
なかには放心状態になったという人もいました。
当事者でなくてもこんなに苦しいです。
当事者なら言うまでもありません。
それでも著者は希望を持っています。
死者たちは今、この残虐行為から平和教育を引き出すことをわたしたちに求めているのではないだろうか。
わたしたちの生に、これからの世代の生に、よりよい明日が及んでいくようにと。
先人や歴史から学んで、過ちを繰り返さないようにしよう。
それが、死者や生き残った人の願いと思うから。
・若者へ伝えること
著者は30年後に書きました。
それから体験談を伝えているそうです。
「あなたたちが自分を信じ、自由な人間として社会に関わっていける人になってほしい」
この発言に暖かさを感じました。
・感想
強制収容所での辛い体験のはずなのに、怒り、恨みなど強い感情をあまり感じませんでした。
母親と妹を喪った悲しみはありましたが、それ以上に生きていることへの感謝の気持ちが伝わりました。
直接、感謝してるという単語は出てこないものの、文面から伝わってきました。
収容所内でも、周りの人と力を合わせて生きているように見えました。
2013年に出版の時点で、著者は86歳。
現在ご存命かはわかりませんが、生きていたら体験談を話しているだろうと想像しました。
以上、ちえでした。
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