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「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ/2015

<こんなお話>

リーガン・トムソンは落ち目のハリウッド俳優である。かつては『バードマン』という映画で主役のスーパーヒーロー、バードマンを演じ数十億ドルの興行収入を稼ぐほどのスター俳優だったが、それ以降ヒットに恵まれず、20年以上が経過していた。60代となり、家庭でも失敗したリーガンは『かつてバードマンを演じた俳優』として惨めな生活を送っていた。単なる落ちぶれたアクション俳優ではなく、アーティストとしての自分に存在意義を見いだそうと自暴自棄になったリーガンは、ブロードウェイ進出という無謀な決断をする。

<レビュー>

監督は、名匠アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。
イニャリトゥさんといえば、奥深い業を静かに描くような印象があったのですが、この作品でその印象はガラリ!!

今作はなんとも挑戦的、挑発的でエキサイティングなんです。

まず驚いたのはロバート・ダウニー・Jrなど、本物の俳優の名前が会話にガンガン出てくること。
アベンジャーズのヒーローたちも皮肉たっぷり登場しますw

おまけに出演者は『バットマン』のマイケル・キートン、『インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートン、『アメイジング・スパイダーマン』のエマ・ストーンと、ヒーロー物でおなじみのみなさん。

あ、ついでに、『ハングオーバー!』のダメ弟役でブレイクしたザック・ガリフィアナキスが真面目な役で出ています。

ハリウッド発ヒーロー映画や昨今のSNS、ネット動画への皮肉が随所に散りばめられていて、よくこれで賞とったなーと逆にアカデミー賞の懐の深さすら感じてしまいました。

とはいえ、その皮肉がただの揶揄で終わっているわけではなく、物語を昇華させる一つの要素としてきちんと組み込まれているんですよね。それこそが、この監督さんの芸術性たるや、だと思います。

物語の内容は簡単に言うと「一発屋のおっさん俳優がもっかい売れたくて足掻く」ってお話。

で、この描写がとにかくめちゃくちゃリアルなんです!
きっと一発屋の人ってみんなこんな悩みを抱えているんだろうなーと想像してしまうような人物像を、マイケル・キートンが見事に演じておりました。

落ちぶれた俳優さんが、どう再起していくのか。この道程はなかなか見ものですよ。

また、内容もさることながら、映像も圧巻!

まるでワンカットのような(実際はもちろんワンカットではないらしいんですが)滑らかな、視線のような映像。
マイケル・キートン演じるリーガンと同じ舞台袖にいるような不思議な臨場感、一体感で、作品の中にぐいぐいと引き込まれていきます。

そんな技ありな映像ですが、それもそのはず。
撮影は『ゼロ・グラビティ』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント: 蘇えりし者』でアカデミー賞撮影賞V3達成の、あのエマニュエル・ルベツキ!!

物語でも映像でも魅せられて・・・アカデミー作品賞も納得ですね。

舞台袖と本番の舞台、心に潜むもう一人の自分、ネットの世界とリアルの世界。
様々な対比が錯綜していくうち、次第に現実と虚構の判別がつかなくなってきて、もう最後まで引きつけられっぱなしでした!

『レヴェナント: 蘇えりし者』は、今作と同じイニャリトゥ監督×ルベツキ撮影なので、併せて観てみるのもアリかもしれませんね。

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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
(Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))
2015/米/20世紀フォックス
<スタッフ>
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ジャコボーン、アーマンド・ボー、アレクサンダー・ディネラリス・Jr
製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アーノン・ミルチャン、ジョン・レッシャー、ジェームズ・スコッチドポール
製作総指揮:クリストファー・ウッドロウ
音楽:アントニオ・サンチェズ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
編集:ダグラス・クライス、スティーヴン・ミリオン
<キャスト>
マイケル・キートン
ザック・ガリフィアナキス
エドワード・ノートン
エマ・ストーン
エイミー・ライアン
ナオミ・ワッツ

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