【2024最重要作】映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」ネタバレありで徹底考察
どうもTJです
今回は2024年10月4日公開の映画「シビル・ウォー」をネタバレありで徹底考察していく
アメリカ大統領選を目前に控え、分断が加速する現代において非常に鮮度ある一作
ぜひ最後までお付き合い願いたい
※以下は全て個人の見解です
あらすじ・キャスト
監督:アレックス・ガーランド
主演:キルステン・ダンスト、ケイリー・スピーニー
その他:ワグネル・モウラ、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンなど
※TJメモ
本作で印象的な赤サングラスの兵士を演じたのは主演のキルステンの夫であるジェシー・プレモンス。もともと、同役には別の俳優がキャスティングされていたが、スケジュール調整がつかず、急きょ妻のキルステンが電話で出演を打診したところ、快く代役を引き受けてくれたという。
“分断”の地を行くロードムービー
まずこの映画を見るに当たって強調したいのが、内戦の原因についてはさほど重要ではないということだ
今作が描きたいのはアメリカが内戦状態になった時の人々の行動、そして主人公たち戦場ジャーナリズムの陰影である
分断中の世界を描くというアプローチは2023年年末にNetflixで公開された「終わらない週末」と通ずる
とはいっても気になった方も多いと思うので、劇中で仄めかせれた分断の経緯を拾っていく
オープニングは米大統領のスピーチから始まるが、彼はとんでもない独裁者
FBIを解体し、取材を16ヶ月連続拒否
憲法では4年2期までと規定されているが、異例の3期目に突入しようとしていた
これはトランプ前大統領を彷彿とさせる
*1 トランプ大統領、3期目に意欲 憲法の制約も「権利ある」
*2 トランプ米大統領、コーミーFBI長官を解任
この状況に対し、カルフォルニア州とテキサス州はWFという機関を設立
またフロリダ州近辺ではフロリダ連合という組織が作られ、政府軍がいるワシントンDCに攻め込み、アメリカは内戦状態になっていた
WFとフロリダ連合に攻められ、陥落寸前のワシントンD.C
そこで主人公たちは大統領が殺される前に、NYから戦線を迂回しながら大統領のいるホワイトハウス(D.C)へ行き、単独インタビューをしようと試みる
ここまでが内戦と主人公たちの取材の経緯となる
今作ではNYからD.Cまで分断された土地を行くロードムービーの形式にすることでこの内戦の輪郭を徐々に明らかになっていくのが巧みなところ
また監督は、今作が政治的に裁かれることを嫌ったのか、民主党が強いカルフォルニア州と共和党が強いテキサス州を組ませるなど、フラットな視点からのアプローチを試みているところも興味深い
*3 アメリカ大統領選挙命運続く激戦州
戦場でのshoot
序盤、リーたちは燃料補給のため、ガソリンスタンドに立ち寄るが、そこで2人の人間が拷問されているのを目にする
新人のジェシーは思わず嘔吐するが、ベテランのリーは冷静にシャッターを切る
ジャーナリストとしてはもちろんリーは正しい
ジャーナリストの仕事は目の前の人を助けることではなく、記録をすることだからだ
しかし人間的にはリーは死にかけている
彼女は多くの戦場を訪れ、撮影してきた
撮影するとは英語でshoot、銃を撃つと同じ単語だ
ジョエルが「勃起するほど興奮する」と言っているように、戦場では兵士だけではなく、ジャーナリストも狂わせていく
例外にもなく、ジェシーも戦場での撮影(shoot)を重ねていき、ジャーナリストとして“成長”していく
ここで重要な役柄となるのがサミー
彼は老人で動くこともままならないが、間一髪、赤サングラスの兵士からリーたちを救出する
サミーはもう老人であり、ジャーナリストとしては既に“死んでいる”
だからこそ彼はあの時、シャッターを切るのではなく、リーたちを助ける選択をしたのだ
※ちなみにジェシーが「ミズーリ州出身」と答え、「証拠を示せの州か」と赤サングラスの兵士が答えたのはミズーリ州の人々が疑い深いとされているからだそう
ラストの意味
ラストの意味を考察する
少し場面は遡るが、サミーによって助けられたリーたちは難民キャンプに到着
ここでリーが、亡くなったサミーの写真を削除するシーンがあるが、彼女はこの瞬間、ジャーナリストとして死ぬことになる
ジャーナリストの仕事は記録することであり、そこに感情は入れてはいけない
場面は進み、いよいよホワイトハウス潜入
総攻撃を行うWFに帯同しながら、リーとは対照的に新人のジョエルは人が変わったかのようにシャッターを切り続ける
この映画は分断の地のロードムービーでありながら、ジェシーのジャーナリストとしての成長譚でもある
繰り返しになるが、戦場ジャーナリストとしての成長は、人として死んでいくことを意味する
ラスト、ホワイトハウス潜入でリーはジョエルを庇って死ぬ
その瞬間でさえ、ジェシーはシャッターを切っていた
前半のガソリンスタンドとはとても対比的にこの場面は描かれている
ジョエルとジェシーたちは死んだリーに構うことなく、大統領をいよいよ追い詰める
大統領は「殺さないでくれ」と命怖いをするも、容赦なく射殺
エンドロールでは大統領の死体とともに、笑顔で映る兵士とジョエルの姿が映し出された
この映画を見て戦場におけるジャーナリズムとは何なのかを深く考えさせる
もちろん戦争を写真という形で記録に残すことは大切だ
しかし記録のためにshootを重ねていくと、戦争の狂気に飲み込まれてしまう
最後の歴史的な写真を撮ったのはジェシーだ
彼女のshootは何を殺したのか-
総評
TJ的評価は⭐︎4.5/5
内戦の原因については深く言及せず、内戦下での人々の行動、戦争ジャーナリズムの陰影にフォーカスを当てたアプローチは今作を新鮮で骨太のものにしている
戦争とは互いの正義のぶつかり合いであり、原因がどうであれ行き着く先は殺戮だ
それは今のロシア・ウクライナ戦争やハマスとイスラエルの戦争に現れている
109分という時間内で、観客の心を抉る傑作だ
ということでいかがだっただろうか
今後も新作、旧作問わず気になった作品はレビュー、考察していくので良かったらスキ、フォロー、コメント等是非
(今後の投稿の励みになります)
では!