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白薔薇の君、と彼はその人を呼んでいた。 私はそんな呼び方はしない。 だってあんまり気…
私は親友を捨てられず、また彼も私を捨てなかった。私は彼と白薔薇の君との仲を取り持った功…
女が死んでから、彼の荒廃はよりいっそう進んでいった。 急坂を転がり落ちるように、と人…
「……彼女と寝たよ」 夢の中だけで、私は彼に本音を零す。 彼は、前夜の葬式で弔われたと…
死の一報は、翌朝、もたらされた。 いつもと同じ時刻に、いつもと同じ目覚ましで目を覚ま…
「樋越さん、少しおかしくないですか」 隣席の同僚が話している。私に話しかけているのだろ…
夢が覚めると、朝になっていた。 時計を捨ててしまったので何時だか分からない。とりあえず出社の準備をして、今日が日曜日だということに気が付いた。 腑抜けたまま、食卓の椅子に座っている。 眼前には冷めたコーヒー……いくら待とうとも、彼は現れなかった。 化け物が正体を知られると滅されてしまうというのと、理論は同じだろうか。正体を看破され、訪れるものはいない。 玄関のベルが鳴った。 何もかも面倒で、放っておく。 もう一度鳴る。もう一度、もう一度……あまりにしつこいので