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社内ボッチャ大会に見た、総務ハシモト君のリーダーシップ~組織開発日記#11

10月1日、朝から社内はザワザワしていました。この日は、イベント盛りだくさん。まず来春入社予定者の内定式、そして、上期おつかれさま懇親会、そしてメインイベントとして、グロウディア社内対抗ボッチャ大会が行われるのです。


青いシャツの男

なぜ、ボッチャ大会なのか?は後ほど説明するとして、その日の総務部界隈は、いつものように宅配便の方々、荷物を受け取る総務部員に加え、内定式準備の人事部員などが、わちゃわちゃと行きかっています。

その中に、ひときわ目立つ、スキンヘッドでブルーに白い模様の半袖シャツを着た業者さん風の男性。僕が通りかかると、すれちがいざま、その方は「おつかれさまです」とあいさつをくれました。咄嗟に「どうもです」と返します。

やっぱ佐川(急便)さんはちゃんとしてるなあ。宅配業界も競争激しいからなあ。そういえば映画「ラストマイル」は身につまされたよなあ。まてよ、火野正平さんのムスコ役もあんなヘアスタイルだったなあ。ひょっとしてご本人なのでは?などと考えながら、そのまま僕は会議へ向かったのです。
 
会議が終わり、再び総務の前を通ると、さっきの佐川さんがまだいます。
というか、総務部に入り込んで、部員と打ち解けています。人なつっこい人だなあ。
 
さらに、1時間後。また総務前を通ると、その佐川さんが、デスクに座りパソコンで何か打っているではありませんか!さすがになんかおかしいだろ。
 
彼の正体は、ショッピング事業本部の倉庫勤務から、10月1日付けで本社総務部に異動してきたハシモト君。佐川急便の方でも火野正平さんのムスコ役(宇野祥平さん)でもなく、ウチの社員だったのです。
 
発達障害を持つという彼が、昨年入社したのはもちろん知っていました。
でも当時アタマは剃っていなかったので、全くわからなかったというわけです。にしてもなんで、さわやかなブルーのシャツなんだ?そしてなぜ、スキンヘッド?
 
聞けばハシモト君、「社内対抗ボッチャ大会」の審判を買ってでたというではありませんか。で、先日「初級パラスポーツ指導員」の資格も取ったのだとのこと。ブルーの半袖シャツは、ハシモト君なりの気合いの表れ&ボッチャの審判としての自己演出だったのです。やるな、ハシモト!

なぜ、ボッチャか?

ボッチャは、東京パラリンピックの個人戦で杉村英孝選手が日本人初の金メダルをとるなど、ここ数年で盛り上がりを見せているパラスポーツ。
年齢、性別、障害のあるなしを超えて、誰もが楽しめるとあって、一度体験した人はハマってしまう!と人気の裾野を広げつつあります。

TBSグロウディアで制作している『池崎大輔 パラスポーツの「あ」』などのラジオ番組では、数年前からパラスポーツのイベントなどを開催しています。
その流れを受け、社内のサスティナビリティプロジェクトでは、今年のゴールデンウイークに赤坂サカス広場で開催されたTBSのSDGsイベント「地球を笑顔にする広場24春」に、本格的なボッチャ体験イベントを発案。期間中、1000人もの方にボッチャの体験をしていただきました。

イベントの成功をうけ、この動きをさらに盛り上げていくため、まずはできるだけ多くの社員に体験してもらおうと、社内交流を兼ねた「社内対抗ボッチャ大会」が企画されたというわけです。

まさかの結末

白いジャックボールに自分のボールをどれだけ近づけることができるのか、を競うボッチャは、単純そうに見えて実は奥が深く、「究極の頭脳戦」とも呼ばれます。
この日のために練習を重ねたグロウディア各本部の精鋭たち、渾身の一投!日本ボッチャ協会より駆けつけていただいた古尾谷香苗さんの解説と、当社ラジオキャスター久保絵理紗の実況で、大会は想定以上に盛り上がります。

その中でもひときわ目を引いたのが、審判ハシモト君の俊敏な動きとパドル(審判用具)さばき。普段はおとなしくみえるハシモト君だけに、そのギャップに少し萌えてしまいます。
知らない人が見たら、絶対に協会から来た本物の審判の人と思うに違いありません。(朝は本物の佐川さんみたいだったけど)

大会は、優勝候補のショッピング事業本部が、若手中心のメンバーでそろえたIT事業本部に、一回戦で敗退するという波乱の幕開け。一方、内定式を終えたばかりの内定者チームもトーナメントを勝ち進みます。

そして、決勝はそのIT事業本部と、内定者チームが激突したのです。
熱戦の末、なんと内定者サガワ君の技ありの一投が決まり、ブービー人気の内定者チームがまさかの優勝という劇的な幕切れとなりました。

優勝した内定者チームには、環境に優しい素材で作られたトロフィーを授与。次回は半年後の4月にやりましょう!と締めました。
ということで第2回は、「新入社員チームがディフェンディングチャンピオン」と、ややおかしなことにはなるわけです。

優勝した内定者チーム。写真左がハシモト君

ハシモト君の思い

ハシモト君が発達障害と診断されたのは、今から約5年前のことなのだそうです。大学卒業後、就職活動につまずき、フリーター生活。ようやく20代後半で物流会社の正社員になりますが、あまり適応できずその後転職に失敗。発達障害の診断を受けたあと、自動車部品会社に入ります。しかしその会社もコロナ禍で倒産してしまったといいます。
 
その頃、東京2020オリパラのボランティアに応募し、研修でブラインドサッカーの加藤選手の話を聞いて励まされ、障害者スポーツに興味を持ちます。

資格を取ろうと思ったのは、今年春。TBSのSDGsイベント「地球を笑顔にする広場24春」で、ボッチャ体験ブースをグロウディア社員として手伝った経験から。
その時のことをハシモト君は僕にこう語ってくれました。
 
「小学生達がボッチャブースに来て、やってみたい、っていうんです。まもなく別の小学生達がやってきて、じゃあ一緒にやれば、って対戦させるじゃないですか。それだけで、すぐ友達になって帰っていくんですよね」
 
「年配の女性が3人で、『私達にもできるかしら』っていうので、どうぞどうぞって。2対2で別れましょうって、ルールを教え僕も入って対戦したんです。その女性達がめちゃめちゃ喜んでくれた。年齢とか関係ないんですよね、ボッチャって」

そのボッチャ体験イベントで、みんなが楽しんでいる姿を見て、これなら自分でも貢献できると思い、パラスポーツ指導員の資格をとろうと思いたったのだといいます。
 
「リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま」(増田弥生 金井壽宏 著、光文社新書)の著者増田弥生さんは、本の中でこう述べています。

ある人が組織全体にとって必要とされることを見極め、自らイニシャティブをとって行動し、その行動が組織に価値をもたらしたときに、リーダーシップは発揮されたと言えます。

(2010年6月 34ページ)
僕を組織開発の道に導いてくれた増田弥生さんの本

社内のあらゆるセクションが部門横断的に協力し、大成功に終わった社内ボッチャ大会。

ハシモト君が朝から着ていたブルーの審判シャツは、ハシモト君なりのイニシャティブ。何よりも、資格をとろうと行動を起こしたことは本当に素晴らしい。そして当日の見事な審判ぶりは、企画・運営に携わった他の社員達と同様に、ハシモト君ならではのリーダーシップを発揮したと言えるでしょう。

ところで、ハシモト君、なんでスキンヘッドにしたの?と聞くと、こんな答えが返ってきました。 

「いや、髪の毛うすくなったんで、いさぎよく・・・。」 

ここまで言ったハシモト君は、僕の頭頂部に気づき、口ごもってしまいます。 

大丈夫、そんなん全然気にしないよ、ハシモト君。
でもまあちょっと、アレだよね。今のだと、僕が「いさぎわるい」みたいな流れには、なっちゃったよね・・。 

ハシモト君のリーダーシップの旅は、始まったばかりなのです。


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