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続・フィードバック大賞~組織開発日記#16

前回は、「あの言葉で頑張れた」「みんなに受け入れられたと感じた」といったような、いわゆる「ポジティブ・フィードバック」をご紹介しました。(どれも僕が言われたいヤツでした)
今回は、とても突っ込んだフィードバック。でも「あのひとことで、成長できた」といったものをご紹介します。


あらためて、なぜフィードバックか?

そもそもなぜフィードバックが大切かといえば、それが「人の行動を改善する最良の方法」だからです。
ポジティブなフィードバックは承認の証ですし、信頼感を醸成し、モチベーションを高めます。またリーダーにとって、メンバーからフィードバックを求めることは、リーダーと組織の成長のために必須だといってもいいでしょう。かのベン・ホロウィッツ先生も、名著「WHO YOU ARE」(ベン・ホロウィッツ著/浅枝大志・関美和訳/日経BP)の中でこう語っています。

「あなたの本質は、あなたがそこにいないときに人々があなたについて話していること」

(P35)

立場が上になればなるほど、誰も本当のことを言ってくれなくなり、やがて裸の王様になる・・。
どうですか?コワイくらいコワイですよね。だから、フィードバックは大切なんです。

恨んでる?

今回ご紹介するのはショッピング事業本部のアヤカさんが新人だった頃、当時の上司カトウさんから言われたひとこと。

どうでしょう。最近の風潮からすると、すこしドキリとするようなフィードバックですよね。
案の定、フィードバック大賞に応募してきたアヤカさんの「応募動機」には、カトウさんへの感謝のコメントに続き、こういった一節がありました。

「今後も一生忘れないと思います」
 
ん?・・恨んでる?
 
フィードバック大賞は、4月1日の社員集会直後、ピカピカの新入社員達も集まる満座の席で行われるハレの舞台です。
万が一この席で「この積年の恨み、はらさでおくべきか!」と逆上し髪の毛を振り乱しながら昔の上長に襲いかかろうとするアヤカさんを、総務スタッフが全力で羽交い締めにするなどという、前代未聞の修羅場が社内で繰り広げられることだけは、絶対に避けなければなりません。

そもそも根がナイーブでセンチメンタルにできている僕は、事前の選考中、こっそりアヤカさんを呼び出し、応募フォームを見せながらこう確認したのです。
 
「これってさ、恨んで書いたわけでは、ないよね・・?」
 
すると、アヤカさんは爆笑し、
 
「もちろんですよ~!メチャメチャ感謝してるんです!」
 
「だ、だよね~アハハハハ(安心)」

第2回フィードバックアワードの様子

授賞式で、アヤカさんはこう語りました。
 
「仕事は全て連携プレー。だから自分本位の優先順位で仕事を進めていては、いつまでもできる人間にはなれないと気付きました。
他人に頼むという事は相手にとっては急ぎな筈。
かれこれ10年経った今も『人から頼まれた事は最優先にやる』は私の仕事の唯一のモットーになっています。
社会人になって真正面から叱ってくれる方は中々いなくて、ストレートに怒って頂けたからこそ自分のダメな所に気付けたし、10年間ずっとそれを一番にして来られました。 ありがとうございました」

成長のために叱る。そのために必要なこと

企業のコンプライアンスが問われる昨今、ともすればメンバーに対する本来必要な「教育」、時に「叱責」がおこなわれない風潮にあるのは、とても嘆かわしいことです。

僕自身も昭和・平成のテレビ業界、それもおそらく業界一教育が厳しかった番組で育てられたことにより、人の数倍成長できたという実感はあります。当時と同じやり方が通用しないのはもちろんですが、必要なフィードバックすら行われないことは、メンバーはもちろん、組織の成長も停滞してしまいます。

カトウさんによるアヤカさんへのフィードバックと、それを心に留めて頑張り、今やエース社員(本当に仕事が早い!)に成長したアヤカさんを見て、あらためて思います。

こういう言葉が生きるのは、前提としてお互いの信頼関係良い関係性があったことの証。お互いになんでも言える関係性を築くことがお互いのため、チームのためにいかに重要か。それらなくして、本当のフィードバックはあり得ないと思うのです。 

本人に面と向かって感謝され、テレながらペコペコする元上司、カトウさん。おそらく本音は「オレも若かったなー。もうちょっと別の言い方あっただろ」みたいなことでしょうか。

最後にアヤカさんはこう付け加えるのを忘れませんでした。 

「ということでこれ、恨んでるわけでは、ないですからね!」 

そう言われ、これ以上アタマは下がらないというくらい、恐縮するカトウさんなのでした。


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