「だかぼく研修」に、ちょっとバラエティの手法を足してみた。~組織開発日記#19
昨年より「だかぼく」こと「だから僕たちは組織を変えていける」の著者、斉藤徹さんに研修でお世話になっています。一昨年、知人より「この本、ソノダさん好きだと思いますよ」と著書を薦められたのがきっかけです。
実体験ならではの説得力
ベストセラーですので既にお読みの方も多いとは思いますが、この本のスゴイところは、組織やコミュニケーションに関する世界中のあらゆる知見を独自に体系化し、起業家としてのご自身の実体験から派生した理論をプラスして、実践のメソッドにまで落とし込んでいるところです。
2年前、ちょうどグロウディアの改革も一巡し、「独自にチームビルディングの研修など開発できないか」と皆で悩んでいるところに読んだ「だかぼく」。
僕がグロウディア立ち上げにいたるまで参考にしていた知見も多く、めざす方向性がピタリ的中し(馬券じゃないのよね)、迷わず斉藤さんにご連絡を差し上げたわけです。
めざすは、メンバーそれぞれが内発的に動機付けされ、やる気に満ちて、共通の目的(パーパス)に向けて自走する組織。
全マネージャーおよそ120名が4チームに分かれ、一回あたり2時間強の研修を半年間で計8セッション受講します。
上の図中、色付きの「円」は、それぞれのセッションのテーマを示しています。
斉藤さんの講義をベースに、全体の進行や途中のグループワークなどは、僕を含めた数人のMCが日替わりで進行、グロウディアらしく双方向型&「笑いをおこそう」というグロウディズムに則って、アレンジさせていただいた研修です。
わたしメッセージで行こう!
どんな研修なのか。今日はセッションの2コマ目、Day2の様子をお伝えしたいと思います。テーマは「相互理解のための対話の技術」。
かつて20世紀の工業化社会では、ビジネスの中で必要とされたコミュニケーションは、「自分の思い通りに相手を動かす説得する技術」でした。現代の知識社会、ましてやVUCAといわれる時代にこそ必要とされるのは、まずは相互理解による人間的コミュニケーション。ということで、斉藤先生の講義に続き、研修の半ばで設けられた最初のグループワークのテーマは「わたしメッセージの伝え方」です。
相手の行動に不満があるとき、人はどうしても「なんでいつも~なの」「もっと早く~してよ」などと、「あなた」主語で攻めてしまいがち。特に相手にとってつらいのは、過去を持ちだして「いつも」「絶対」「べき」など行動を強制することなのだそう。
そういうときは、「怒り」という二次感情を抑えて、相手の心に届く、「わたし」メッセージを使おう、というワークです。「わたし」メッセージとは、自分の課題(理想と現実のギャップ)を伝え、一次感情を率直に話す、というものです。一次感情とは、『怒り』などの二次感情の前にある、不安や心配、悲しさのことなのだそうです。例に上げると、こういうことです。
「わたしメッセージ」の良い例、ダメな例
×ダメな例
「いつも意見がないよね。君はもっと発言すべきだよ」
→これは、典型的な「あなた」メッセージですよね。
△まあまあ
「場が盛り上がらずに困っているんだ。もっと発言してもらえるとうれしいな」
→もう少し。一次感情は旨く言えていますかね。
〇良い例
「みんなが自発的に動いて助け合うチームにしたいんだ。仕事が楽しくなるし、成長できる。でも、実際にはなかなかうまくいかなくて、悩んでいるんだよね」
→うん。上長の率直な不安(一次感情)を、まず「場」に置いたわけですね。
ということで、こういったワークが始まります。
指示待ち若手社員に依頼していた顧客向けの提案書が、未着手!
こんな場合、部下になんと伝えるべきか。僕たちはついつい、あなたメッセージを使ったり、使われたりしてきましたよね。そこをグッとこらえて、よい「わたしメッセージ」を伝えられるようになろう。
ということで、4人ひと組にわかれたテーブルごとで話し合い、用意したフリップに書いてもらいます。
ただ、それだけでは盛り上がらないので、フリップの裏面に、ダメな例として「あなたメッセージ」も書いてもらうことにしたのです。(つまり『わたしメッセージ』をフリにして、『あなたメッセージ』で軽いオチを狙おうといった趣向です)
ワークの後、いくつかピックアップし、全体にシェアしました。いくつかご紹介しましょう。
「このままだとクライアントに迷惑をかけてしまうかもしれないね。僕も焦ってるんだけど、一緒に考えよう!」
うん。いい上司かもしれない。では裏面、「あなたメッセージ」を見てみましょう。
「早く言えよ。今まで何してた?あ?いつからヤバイと思ってた?どうするつもり?もういい、こっちでやるから手ぇ出すな!」
こわっ。ていうか4人で考えただけあって、だいぶセリフが練られています。「地面師たち」じゃないんだから。
どのテーブルも「こんなヤツ今時いないでしょー」とかワイワイ盛り上がりながら、むしろ「あなたメッセージ」のほうを楽しんで書いているようなフシがあります。斉藤先生も、ニコニコと笑って見てくれています。これまで、数々のビジネスの修羅場をくぐってきただけあって、さすがの懐の深さです。
こんな「わたしメッセージ」もありました。
「そうか。気づけなくてごめんね。これはチームの問題でもあるから、一緒に土下座だね!」
土下座されるクライアントも困りますよね。
さらには、こんなのも。
「この会社は、オレとオマエで引っ張っていくしかないよな。オレはがんばるよ。オマエは?」
ここまでくると、ちょっと意味不明です。熱い先輩なのは伝わりますが。
「恋のから騒ぎ」形式で振り返り
こんな感じでセッションは進み、2~3週後の次のセッションの冒頭では、前回の振り返りから入ります。
振り返りの材料になるのは、前回のセッション後に参加者全員から提出されるリフレクションシートです。「今回のセッションを受けて、気づきや学びを言語化してください」などの質問に対して書いた参加者のコメントで秀逸なものが、次回のセッションの冒頭でネタにされるのです。
誰のコメントかは伏せた上で、「最初のコメントはこちら!」などとスライドに文字だけ出し、なぞったあとに、「これ誰ですか?」と手をあげてもらい、トークをするというやり方です。そう、僕の師匠のひとり、明石家さんまさんの名番組、「恋のから騒ぎ」形式なのです。
こういったやり方も、斉藤先生との研修を進めていく過程で編み出された、グロウディアオリジナルです。楽しく前回のリマインドをすることで、アイスブレイクの効果も狙っています。
さて、Day3の冒頭、「わたしメッセージ」など「相互理解」がテーマのDay2の振り返りがおこなわれました。
そこで紹介された、とある部長のDay2振り返りコメントを最後にご紹介します。
だかぼく研修は、組織課題だけではなく、家庭内の平和にもよく効く、すぐれたセッションなのです。