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アンビリバボーな映画の裏話

ドキュメンタリー系バラエティ番組「奇跡体験!アンビリバボー」で4月8日に放送されていた内容が面白かった。

タイトルは〝誰でも知ってる大ヒット映画の誰も知らない秘密SP〟。

本当に誰も知らないの〜?と半信半疑で観てみた。

7作品中、面白いと思った邦画5作品の秘密を紹介することにした。

番組を観損ねた方、興味のある方は是非どうぞ!

         ***

1.「翔んで埼玉」の裏話

公開・2019年2月
主演・二階堂ふみ
監督・武内英樹
脚本・徳永友一
原作・魔夜峰央『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』

埼玉県人が東京都民からひどい迫害を受ける架空世界の日本を舞台にしたコメディ映画。

その内容は、埼玉県人は都内に入る際『手形』が必要であったり、埼玉がとんでもなく田舎に描かれているなど、埼玉県をディスりまくる過激なものだった。

ところが『悪名は無名に勝る』と、埼玉県知事が映画を公認。埼玉県民もなぜか大喜びしたと言われている。

観客動員数ランキング、初登場1位。興行収入、約40億円の大ヒットとなったこの映画。

↓↓ここからがアンビリバボーな秘密↓↓

作者は漫画家・魔夜峰央さん。

今からおよそ40年前、当時新潟在住で漫画家として活躍していた魔夜峰央さん。

アシスタントも居ない土地で連載を続けることに限界を感じ、たまらず編集長に相談。

すると『こっちに出てこい!物件は俺が見つけてやる』と編集長。

新潟からほとんど出たことのない魔夜さんは、これで憧れの東京で人生をエンジョイできると思ったらしい。

だが、案内されたのは埼玉の所沢。
見渡す限り畑が続いて牛舎もあるような、のどかな土地。

『東京みたいなもんだよ!』と笑う編集長。

しかも編集長の家が車で5分の場所にあり、見張りの意味でもその場所に魔夜さんを住ませたと思われた。

『騙された!』と言いながらも仕事をこなすしかない魔夜さん。

この溜まりに溜まった鬱憤が、漫画家ならではの形で消化される。

埼玉への歪んだ愛を募らせた魔夜さんが描き出した漫画こそ「翔んで埼玉」!

単なる思い付きで描いたため、連載は長続きせずわずか3話で未完のまま終了。

その後、我慢の限界に達した魔夜さんは横浜へ引っ越し、その作品は本人さえも記憶から消え去っていた。

漫画「翔んで埼玉」は短編集に収録されただけに留まり、人々の記憶からも消えて無くなった…はずだった!

しかし!連載終了から32年経った2015年、ある魔夜さんの熱狂的ファンが『やばい漫画がある』とSNSにアップしたところ、瞬く間にそれがバズり、単行本化が決定。

発売されるや否や、売れに売れ話題作に。

そしてとうとう2019年に映画化されたという訳だ。

そのことは魔夜さん本人が一番驚いたという。

近年、都会化が進んだ埼玉県。
映画の埼玉のシーンの多くは他県で撮影されたらしい。

ある意味ロングセラーであった漫画の面白いお話だった。

2.「浅田家!」の裏話

公開・2020年10月
主演・二宮和也
監督・中野量太
脚本・中野量太、菅野友恵
原案・浅田政志『浅田家』『アルバムのチカラ』

昨年公開されたこの映画。
初週の興行収入ランキング1位を獲得。

ある写真家とその家族の心温まる実話を基にした映画である。

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二宮和也がオファーを受けた背景には、こういう事実があったそうだ。

きっかけは、2017年の『第40回日本アカデミー賞授賞式』。

この中6部門で優秀賞を受賞した、中野量太監督。その作品は、宮沢りえ主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』。

最優秀主演女優賞の発表をしたのが、前年最優秀主演男優賞を受賞した二宮和也だった。

緊迫した空気の中、二宮が発表。

「最優秀主演女優賞は『湯を沸かすほどの熱い夏』の宮沢りえさんです!」

『やったぁ!』と思わず立ち上がる中野監督。
しかし…『タイトル間違えた??』

しかし二宮本人は気付いていない。

欠席していた宮沢りえの代わりに中野監督が登壇し、特に気にすることもなく笑顔で二宮からトロフィーを受け取った中野監督。

授賞式終了後、その事をスタッフから指摘された二宮は、中野監督宛に謝罪の手紙を書いたという。

数日後、中野監督は二宮の所属する事務所のスタッフとたまたま会食をする機会があり、その時にその手紙を手渡された。

「アカデミー賞では作品名を言い間違えてしまい、本当に申し訳ございません。僕に出来ることでしたら何でもします」

時は流れ2019年、中野監督は新しい映画「浅田家!」に着手しており、キャスティングに二宮和也がピッタリだと思い付いた。

その時二宮からの手紙を思い出したものの、

「まぁでも社交辞令だよなー、無理に決まってる。それに1年以上も前の手紙を覚えてるわけないかー。だけど今回の役は二宮さんが一番イメージにあっている。よし!ダメ元でオファーしてみるか」

と決めたらしい。

しかし当時の二宮といえば、バラエティー番組のレギュラーも多数、嵐の過去最大のツアーを控え多忙な時期であった。

しかし、二宮は快諾。
映画の舞台挨拶で二宮がその理由を明かした。

「もちろんもう事務所に言ってあったんですよ。どんなに忙しくても中野さんからオファーが来たら受けてくれって。台本も読まないで二つ返事だったんですよ」

二宮自身『かずなり』を『かずや』と読み間違えられる気分が良くない事がしばしばあったという。

そんな自分が作品名を言い間違えてしまった。

作品名は映画の顔。
そんな大切なものを言い間違えてしまったなんて…。
中野監督の気分を害してしまったのではないかと、決して社交辞令ではなく今後オファーがあれば、絶対に受けるという決意を込めてあの手紙を書いていたのだ。

「もし仮にあの手紙のせいで監督が気を遣ってキャスティングしている可能性はないですか?って、そのへんを確認して下さいって事務所のスタッフに言いました。そしたら興味があって一緒に仕事がしたいという事とか色々聞いて頂いて、それで受けました」

しかし実際会った時には、二宮も中野監督もお互いへの気遣いによりその手紙の話を一切しなかったという。

「浅田家!」は『第44回日本アカデミー賞』にて、優秀作品賞、優秀主演男優賞など8部門で受賞。

作品誕生の裏には、ふたりの男の純粋な思いがあったという素敵なお話だ。

3.「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の裏話

公開・2003年7月
主演・織田裕二
監督・本広克行
脚本・君塚良一

東京お台場の湾岸署管内で殺人事件が発生。
犯行グループを一網打尽にすべく、レインボーブリッジを封鎖し、織田裕二演じる青島刑事たちが追い詰めるというストーリー。

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レインボーブリッジのシーンは、実はレインボーブリッジで撮影されていなかった!

本広監督曰く、
「レインボーブリッジでの撮影は許可が下りず無理だった。スタッフがレインボーブリッジに似た橋を探すため、全国に散らばった」

そして見つけたのが、お台場からおよそ450kmも離れた『京都府の京滋バイパス久御山ジャンクション』。

なんと映画の中にその証拠が一瞬だが映っていた!

橋の上に止まったパトカーの窓越しに見える小さな赤いもの。

それは当時、久御山ジャンクションのすぐ近くにあった『ジャスコ久御山ショッピングセンター』の看板の一部だという。

ジャスコという懐かしい名前にほっこりしたお話であった。

4.「君の名は。」の裏話

公開・2016年8月
主演(声)・神木隆之介、上白石萌音
監督・新海誠
脚本・新海誠
原作・新海誠

会ったことのない少女と少年の心と体の入れ替わりと、そこから始まるドラマを描いた作品。

新海監督がこの映画を制作するにあたり、ある試みに挑戦したという。

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構成を組み立てた上で映像化した時に、観客の感情がどのように変化するのか、自身で想像してシミュレート。

それを視覚化した感情グラフを作成。
構成を練り直しながら、脚本製作に臨んだという。

グラフには、気持ちの高揚を表す『上昇』と、それをより際立たせるために気持ちの消沈を表す『下降』があり、監督はこの起伏をどうすれば大きく出来るか考え、構成を何度も修正しながら脚本を書き、映画を完成させた。

その結果、映画「君の名は。」は大ヒット。

この『感情グラフ』は次作の「天気の子」でも採用。その際も納得いくまで修正を繰り返したという。

新海監督が『感情グラフ』を通じて考えたのは、観客をいかに作品に没頭させるかということ。

そのためにどうすれば起伏を大きく出来るか、また感情の山をどのくらい作ればいいのか、試行錯誤を繰り返し、『感情グラフ』が最適な形になるように何度も調整したという。

このふたつの作品は、観客の感情を考え尽くしたからこそ、大ヒットしたと言えるのだろう。

5.「万引き家族」の裏話

公開・2018年6月
主演・リリー・フランキー、安藤サクラ
監督・是枝裕和
脚本・是枝裕和

主に窃盗などで生計を立てる家族。
しかし実は、全く血の繋がりがない疑似家族。

彼らの生活を通して、本当の家族とは、絆とはなにかを訴えた作品。

是枝監督はこの映画で邦画としては21年ぶりとなる『カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール』を獲得。

テレビドキュメンタリー出身の是枝監督によって撮られたこの映画。

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母親・信代役を演じたのは安藤サクラ。

作中ではリリー・フランキー演じる夫・治とともに、実の親に見捨てられた2人の子供を家族として迎え入れ育てている。
しかし信代は最後まで子供から『お母さん』と呼ばれることがないまま、警察に誘拐容疑で逮捕され、最終的に尋問を受けることになる。

だがこのシーンの撮影時、安藤サクラはどんな尋問を受けるか事前に全く知らされていなかったのだ。

しかし、カンヌで審査員長を務めた世界的大女優・ケイト・ブランシェットはこのシーンを観てこう言ったという。

「もし今回の審査員たちが私を含めこれから撮る映画の中であの泣き方をしたら、それは安藤サクラの真似だったと思ってください」

手放しの賞賛だったという。

一般的に役者は泣く芝居をする際、涙を見せるために顔を隠さない場合が多いのだが、安藤サクラはそうではなかった。

尋問の内容とはこうだった。

「子供2人はあなたの事なんて呼んでました?ママ?お母さん?」

安藤は声を殺したまま何度も何度も手の平で涙をぬぐい、
「なんだろね…」
と一言つぶやく。

世界に絶賛された「万引き家族」は、リアリティをとことんまで追求した監督のアンビリバボーな演出手法と、それに応えた出演者たちの演技力によって生み出されていた。

         ***

〝誰でも知ってる大ヒット映画の誰も知らない秘密SP〟。

以上5作品の裏話を、番組での情報をそのまま記事にしてみた。

私は映画を観るのも大好きなので、特に好きな映画のこういう裏話が聴けるのは、本当に楽しいことである。

またテレビでこういう特集があれば、欠かさずチェックして紹介出来ればと思う。




※最後まで読んでいただき有難うございます!

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