こわいものを見た生徒のお話
緊急事態宣言も解除され、我が教室にも生徒が戻ってまいりました。
オンライン授業には新たな可能性も見出せましたが、どちらかと言うと身体的・心理的負担のほうが目立ちました。やっぱり対面で授業ができるならそっちのほうがいいですよ。ただ、今後の「with コロナ」の時代にあっては、対面とオンラインのハイブリッド状態がベターであろうかと思います。
ところでそうしてめでたく教室授業が再開した矢先の出来事です。
自粛生活の間に昼夜逆転してしまった生徒が眠い目をこすりながら教室へとやってきました。オンラインゲームに日夜精力を注いでいるとか。
もともと類まれなる集中力をもった生徒ですが、残念なことに勉強に対してだけはその集中力を発揮できない。この日は件の寝不足も相まって、著しく人の話を聞けない、という悲惨な事態になっておりました。
まぁまともに授業にならないので、あなたの嫌いな勉強が人生においていかなる意味を持つのか、ということについて二人で話していたところ、その生徒、突然壁の一点を見つめて止まりました。
おいおい!しゃべりながら寝るやつがあるかよ!と突っ込みを入れたか入れないかのタイミングでその生徒、
「あれ、この建物って、お風呂ありましたっけ…?」
と問いかけてきました。
ここは都会の雑居ビルの一室。オフィスビルなので基本的にはお風呂はありませんが、中には昔から住居として使っている方もいらっしゃるようで、この教室もかつては住居として使われていたかもしれません。
そんな回答をしたところ、生徒は
「いま、二つの自殺シーンが瞬間的に脳裏をよぎったんですよ…。」
と話し始めました。
その生徒は、自殺を試みている二人の人の目線を追体験したようでした。
一人は、今の教室と同じ位置にある蛍光灯に首を吊っているらしい方。この「らしい」というのは、彼がまさにその自殺を試みている方の目線になっていたようで、感触はないので何をしているのかわからないが恐らくそうだ、ということ。
もう一人は、どうやら以前、この教室のどこかに浴室があったらしく、ステンレスのバスタブに水を張って、そこに自ら切ったであろう手首を浸している方。彼はその手首を見つめていたようでした。
いずれも一瞬の「映像」のようなものだったらしいのですが、彼自身、このようなことが人生で初めてのことだったらしく、軽くパニックになっていました。そりゃそうですよね。経験したことのない映像が浮かんだわけですから。
さて、こんな話を聞かされた教師は生徒に何を伝えれば良いのでしょうか。
ぼくはちょうどその時読んでいた本が思い浮かびました。
田坂広志『運気を磨く』
この本はぼくがいま一番尊敬している方から「課題図書」として紹介されたものです。
ネガティブ思考を捨てポジティブ思考100%で日々を過ごすための方法について、その切り口となる「運気」を科学的に解明していきつつ説明していく、という内容なのですが、この中で一番衝撃を受けたのが、田坂さんが紹介する「ゼロポイント・フィールド理論」というものです。
ぼくは物理に疎い(高校のとき物理のテストで4点とかいう黒歴史)ので、このゼロポイント・フィールド理論について論理的に説明できるわけもなく、田坂さんの説明を正確に再現する自信もありません。ただ、田坂さんが説明されているものをぼくなりにどう受け止めたか、ということはお分かちできるかと思います。(解釈がおかしくてもそれは田坂さんに何の非もありません。100パーセント、ぼくの読解力の問題です)
宇宙ができる前、そこにはただ「カオス」があったわけですが、ビッグバンを経て宇宙ができました。その際、宇宙には星々ができたばかりでなく、ビッグバン以降、宇宙の終わりに至るまでのありとあらゆる情報がホログラム状、つまり波のような形態をもって存在している、と。それもいま、ここに。
テーブルやパソコンなど、ここに触れて存在を確認できるものもすべて「情報である」とするならば、自分に関わる過去も未来も現在もそのすべての情報がいまここにあり、そればかりでなく自分が選んでこなかった過去や自分が選ばないであろう未来の情報も、いまここにある、ということです。もっと言えば、自分に関わりの一切ない情報までもがいまここにある、ということです。
この「ゼロポイント・フィールド理論」(の私的解釈)、ぼくなりに理解し衝撃を受けました。ぼくはフーコーの提唱する「エピステーメー」を明らかにすることこそが人生の目的であると認識している(あくまでも個人の思いです)ので、まさに文系と理系の目指すべき一点を見出したような気になりました。
ありとあらゆるもの、それがいまここにある。そんな思想の虜になっているぼくは、迷いなくその生徒に「ゼロポイント・フィールド理論」(但し私的解釈)について分かち、あなたが見た「映像」は本来ならば受け取らない、もしくはスルーしている「過去の情報の波動」を受け取ったんじゃないか?という推論を立てて説明しました。
つまり、あらゆる情報がそこかしこに波状に存在しているならば、過去のそのような誰かの記憶も存在しており、それがいつか誰かに届いても決しておかしいことではない。普段ならばスルーされるような波も、いまのあなたのようなトランス状態の脳には入り込んできてしまうのではないか、と。
その生徒、普段はぼくのお話しなどまったく響いていないような顔をするわけですが、このときばかりはあっけにとられたような顔をしつつ
「なるほど…」
と頷いておりました。むしろこんなお話しをよく理解できたな、と感心もしましたが。
そう考えていくと、いわゆる「霊視体験」とか「FBI捜査官の透視捜査」とかも説明がついちゃうと思うんですよね。
よく子どもの頃には霊が見えてたのに大人になって見えなくなってしまった、なんて話も聞くじゃないですか?きっとその筋の情報の波動を感じられなくなったということなんじゃないでしょうか。
霊感が強い、というのは、その筋の波動を純粋にキャッチしちゃってるというだけなのかもしれません。
FBI捜査官が遠方の情報を透視できちゃうのも、情報としてはいまここにあるわけで、それを意識的にキャッチするトレーニングとかが存在していてもよいわけで。
というわけで、もはや我々の常識では受け入れがたい、学校では絶対に教えてくれないような話ではありますが、歳を取れば取るほど頭は柔軟にしておかなければいけません。ぼくは受け入れました!だってそのほうがおもしろいもん!
田坂広志『運気を磨く』、というか「ゼロポイント・フィールド理論」、ぼくの価値観を揺るがす最高の科学のお話でした!
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