【読書】知覚力を磨く
◆「知覚力を磨く」を読む目的
・『知覚力』とは何か、ビジネスにどう活かせるかを学ぶ
・絵画の見方を学ぶ
・ビジネスアイデアにつなげる
◆「知覚力を磨く」の要点・まとめ
○『知覚』とは、自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈すること。
このグラスの状態を人に説明する時に何というか。
「グラスに半分くらい水が入っている」
または、
「グラスは半分ほど空だ」
このように人によって意味付けは異なる。これが知覚である。
そこには既存の知識との統合や、それに基づいて解釈が入り込んでいる。
○人間の知的生産は、『知覚→思考→実行』の3つのステージがある。
目の前の情報を受容しながら解釈を施し(①知覚)、それに対して問題解決や意思決定をした上で(②思考)、実際のパフォーマンスに落とし込む(③実行)。全ての行動においてこの3つの段階を踏んでいる。
○知的生産の出発点には知覚がある
その人がどんな知覚をもっているかによって、それに続く下流のプロセスの質が大きく異なる。ビジネス上の問題解決やイノベーション、意思決定や決断といったものの成否も、知覚が影響する。
○知覚力を磨くためには、以下の4つのアプローチが有効である。
①「知識」を増やす
②「他者」の知覚を取り入れる
③知覚の「根拠」を問う
④見る / 観る方法を変える
①受容した情報は、脳内に蓄積されている既存の知識が多ければ多いほど、より幅の広い解釈の可能性が見込まれる。学習・経験を通じた知識基盤の拡大が知覚に直結する。
②自分にはない知覚を得るためには、経験や背景が全く違う人物に対してオープンになることが重要。そして、普段巡り合えないバックグラウンドを持つ人達の知覚と出会うためには、『読書』が欠かせない。
③知覚のベースとなる知識は、全て正しいとは限らない。そのため、「なぜ自分はそのような意味付けをしたのか?」と自問することを意識する。自分の中に眠っている知識を呼び起こし、突き詰めて考えてみることが重要。
④眼を『観察』モードに切り替えて情報を受容することで、意味付けが異なってくる。視覚が捉えたありのままの事実をよく観ることが大事。
○肉眼での『観察力』がアイデアを観る力に繋がる。
④の『観察』の影響力は、視覚的刺激を超えたところにまで及ぶ。対象を集中的に観察することによって『眼では見えないもの脳で観る力』が高まる。
プレゼンの資料を考えている時に「こんな感じにしよう!」と理想的なグラフがパッと脳内で観えたりする時は、「脳で観ている」状態。
既存知識と統合された解釈をもとに、対象を脳で観ることができれば、イメージ像を創り上げることができる。つまり、アイデアに結びつく。
○「観察」は「細かく見ること」ではない。
観察とはとにかくつぶさに物事を見ることではない。多様な解釈を引き出せるような眼のつけどころを観ることが、観察の真髄。
○成功者の多くは、観察して知覚力を高めていくことで「絵画を観るように世界を見ている」
一般の人が観察の質を高めて知覚力を磨くためには、「絵画の観察」が必要。観察をすることで「こうなのではないか」という仮説を立てたり自分なりの解釈を持つ。そこから知覚を得ることに繋がる。絵を対象に「眼のつけどころ」を磨いていけば固定概念から解き放たれて、世界の見方が変わってくる。
○絵画を観察することで『全体を見渡す力』がつく
「全体像」ではなく「全体図」を観ることが必要。要素が置かれた環境や背景、要素間の関係性、さらには空白・周縁部を包括する部分にも目を向けることで、作品特性や価値が浮かび上がってくる。
○絵画を観察する時の4つの技法
①全体図を観る
②組織的に観る
③周縁部を観る
④関連づけて観る
①目立たない要素や空いたスペースや四隅にも目を向ける。
②
ステップ壱:全体を見渡して、描かれている背景・場所・状況について考える。
ステップ弐:フォーカルポイント(画家が観者に最も注目してもらいたい重要な焦点)を選び、観察。
ステップ参:フォーカルポイント以外の画面をいくつかに区切って、それぞれの詳細を観察。
ステップ肆:一歩下がって全体図を眺めながら解釈。
ステップ伍:見落としがないか周縁部に目を配る。
④つながりや関連性を創出する。
○これからの世界は、明確な答えがない問題をスピーディーかつスマートに解いていく資質が求められる。
知覚を鋭くして、解釈を再解釈を繰り返しながら、脳で観ることで全体図を把握して、その中でも仮説を調整したり、ベストな決断を下していく力が問われる。
この絵を見てどのような知覚を持ったか。
◆アクションプラン
・読む本の数を今よりも増やす。(目標:最低週に2冊以上)
・月に1度は絵画をじっくり観察する。自分の解釈を示す。
◆メモ
眼の前に人がる市場を見た時に、「半分水が満たされている=市場はかなり飽和状態」と考えるか、あるいは、「半分空である=まだ参集する余地がある」と考えるか。それを決めるのは、ビジネスの担い手である皆さんの近くだけです。
ゲイツは「学習すればするほど、知識をあてはめられるフレーミが広がる」と語っています。彼はあえて知覚向上を狙いながら本を読んでいるのでしょう。
「人間の『見る』は、ほとんどが脳のクリエーションである」と言ってしまてもいいかもしれません。私たちが世界を見るとき、眼はデータを受容しているだけで、実際には脳がつくったイメージを観ています。割合で言うと、90%は脳のなかで想像されたものであり、眼から入ってくる情報は10%だとも言われています。
人間の脳には、なるべく「近道」しようとする性質があり、一定の状況に直面したときには、それと類似した過去の知識を呼び出してそれを解釈しようとしています。
私たちは、ある問題を見たとき、毎回わざわざゼロベースで考えたりしません。これまでの常識や直感や試行錯誤などに基づいて判断を下そうとします。このような問題解決の方法を経済心理学などの用語でヒューリスティック(heuristics)といいます。
ESADEビジネススクール経営学准教授バード・デ・ランゲらは、「イノベーションはカテゴリで思考する傾向を壊すことだ。既存のカテゴリー内だけで思考すれば、要素を新しい方法で組み合わせる人間の能力が阻まれ、知識の創造は遅滞する」と語っています。
マネージャーの手腕が問われるのは、人々の仕事の細かな「管理」ではありません。むしろ、企業という一枚の絵画の中で、それぞれの要素(資源・部署・製品など)をどのように理解し、それらをいかにアレンジ・調整・統合していくかに全てがかかっています。
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つねに全体図を眺めながら、各部分を一つの画面に統合していく試みこそが、マネジメントの本質なのです。
ハーバード大学ビジネススクール教授クレイトン・クリステセンはかつて、「イノベーションはほとんど周縁部から起こる」と語りました。
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周縁部が決して見逃してはならない場所であることは、ビジネス競争がグローバル化し、あらゆる変化がスピーディーに起こる今日でも変わりません。周縁部には未来の顧客ニーズや、環境やトレンドの変化のサインがいち早く到来するからです。
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企業の命運は、周縁部に現れたサインを知覚できるか否かに大きく左右されます。
「アップルのDNAについて言えば、テクノロジーだけでは十分じゃないよ。テクノロジーがリベラルアーツ、つまり人文科学と共同作業してこそ、心がときめく結果を生み出すのです。
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人文科学とは、明確な答えがない問いに対して、自分なりの答えを提案していく学問です。
近未来の職場では、「テクノロジー」と「人間」、それぞれの専門家への二極化がどんどん進むことが予想されます。しかも、これからはカスタマーサービス、セールス、マーケティング、人材開発など、後者の仕事の需要の方がむしろ高まっていくでしょう。
今後、リベラルアーツの能力を持った人材に、ますます期待が集まることでしょう。その中でさらにテクノロジーの知識も併せ持っていれば、その人はまず間違いなく存在感を発揮できます。
政府はAI人材の確保に躍起になっていますが、むしろ眼を向けるべきなのは、テクノロジーとリベラルアーツを併せ持った人材であるはずです。