料理することに疲れたら…おすすめ料理研究家本 その①
私が食に興味をもったのは、20代後半に仕事が多忙で体調を崩したときでした。
振り返れば、母子家庭の我が家のご飯は、いつも市販のお弁当または、自分でコンビニにご飯を買って食べていました。
大人になり、四季も感じられないほど、必死に仕事をして、終電で帰宅したときは食事もとらずに寝ていました。あの頃の夕飯は、何を食べていたかなと考えたとき、同僚と飲みに行って食べていた以外の記憶が、ないのです…。
そうやって、長い年月、食をないがしろにして生きてきました。そして、心身を崩し、通院が始まり、健康のため、ヨガをするようになってから、ふと、今までの食生活を振り返るようになったのです。
自分を大事にしてきたか?自分を愛していたか?
そんな疑問が湧いてきました。そこからは、毎日のように図書館に通い、片っ端から料理研究家の本をむさぼるように読み始めたのです。
そこで、出会ったのが、料理研究家であり随筆家の辰巳芳子さんの本です。辰巳さんの本には、美味しく簡単に料理を作る方法なんていう浅知恵ではなく、食と命をテーマに、いわゆる食の哲学が書かれてあり、衝撃を受けました。
食の深さを知った私は、辰巳さんの本にすべて目を遠しました。なかでも、「辰巳芳子の展開料理」(ソニーマガジンズ)という本は、辰巳さんならではの料理法で、忙しい現代人のために、その日その日で食事を作るのではなく、まとめて下ごしらえをして、そこから展開していく料理法が紹介されていました。
出汁をたくさんとって、二倍酢、三倍酢を作っておく、冷凍しておくことで、すぐにお味噌汁も酢の物もできる。野菜も一気にまとめて蒸してオリーブ油をまぶしておくことで、腐敗を防ぎ、すぐにカレーや肉じゃが、ポテトサラダなどを作ることができる。
トマトソースもホワイトソースもしかり。まとめて作って展開していくことは、日々の食事作りを助けてくれると言われています。
私は、これを読んでから、まとめて出汁をひくようになりました。自宅で食べることが多くなった今こそ、この展開料理を仕事の企画として提案したいなと思っています。
余談ですが、その後、食育インストラクターの資格も取得しました。食への探求は今も続いています。
私は辰巳さんに限らず、料理研究家の本をたくさん本棚に置いているのですが、それはなぜかというと、結婚してから、毎日の料理作りが、とてもしんどくなったからなんです。
毎日献立を考えるだけでも、本当に疲れます。子どもの好き嫌いや、辛いものはダメだけど、私は辛いものが食べたい…など、考えるほど品数も増える始末で。。
仕事で疲れきって、キッチンに立ちたくない日もあります。でも、そんなとき、パラパラっと、尊敬する料理研究家の方達の本を開くと、食の大切という原点に立ち返ることができ、「よし!やるか!」と、自分を奮い立たせることができるのです。
辰巳さんの本は、どれも学ぶことが多いので、これがいい!と、選ぶのが大変難しいのですが、もし、毎日の料理作りが面倒くさい、ないがしろになってしまうというなら、「命の食卓」(マガジンハウス文庫)を読んでみてください。子どもがいる方にもおすすめです。一気に食事作りに対する価値観が変わることでしょう。
そして、読むのが苦手で、サクッと食について知りたいという人には、看護士、小児科医、生物学者などの分野の方と対談されている対談本「食といのち」(文集文庫)がおすすめです。
私はここに書かれてある「365日の食事の用意ほど、克己心を求められることはないと思う」という言葉に、今も毎日励まされています。
克己心 なんて言葉を、知らない人が多いかもですが、自分に勝つというような意味です。これを読んだとき「よくぞ、言ってくださいました!」と、思ったほどです。
どこか、食事作りは仕事や遊びの二の次になっていませんか? 当たり前のことであり、誰からも褒められることもなく、大事なことランキングがあるとしたら、とても低い位置にありませんか。
でも、辰巳さんは、そうではない、毎日の食事作りほど、大変で偉大なものはないと言われているのです。
私はこの言葉で、食事作りにプライドを持つことができた気がします。食は命を支える根本です。健康な体があってこそ、仕事も家事も遊びもできるのです。その土台を作る食事作りということに、もっと敬意とプライドを持ってもいいはずです。
なので、皆様、食事作りをしてくれている家族に、感謝の言葉を、もしくは「おいしいね」の一言を伝えてあげてくださいね(笑)
最後は、辰巳さんのドキュメンタリー映画をとられた方が、書かれた「手から心へ 辰巳芳子のおくりもの」(NHK出版)です。
辰巳さんが伝えたい肝をうまく、簡潔にまとめられています。映画を見なくても、充分なくらい濃い内容になっています。
家事は本当にむなしいものなのか、なぜ人は食べなければならないのか、など、食といのちの関係、食の哲学が満載です。
どの本も、学びと考えさせられることが詰まっているので、食事作るのがめんどくさいなぁ…、しんどいなぁ…と思ったときにでも読んでみてください。
もちろん、食について、学びたい方もぜひ!おすすめいたします。