愛すべきコーヒーライフ
趣味は?とか
好きな事は?とか
休日は何をしてるの?
の問いに常に用意してる答えがある。
コーヒーです。
その一言だけ。
冷たい?
まさか暑すぎるくらいです。
一言コーヒーの事を口にすればきっと終わるのは朝日を拝める時間でしょう。
それくらい暑いんです。
私がこうなったのは研修先のパリで起こったある出来事が切欠だろう。
それ以前はジュースやら炭酸やらが飲めなくて、基本水かお茶しか飲めなかった。
なので自分の周りが甘い飲みのものやコーヒーを飲んでる姿が信じられなかった。
何が美味しいのかわからん。
ましてやコーヒーなんて苦いだけじゃん。って。
20歳をすぎ研修先のパリへ一ヶ月半の一人暮らし。
初日は天候の悪化で到着が5時間遅れ。
慣れない海外暮らしに加え、フランス語なんて全く話せないし、英語だって幼な子が話せる程度の語彙力しかない。
増してやこの時代は今みたいなLINEやらスマホなんてない。
PHSみたいに文字しか送れない、しかも文字数制限付きの高額になる携帯しかない時代にわざわざ辞書を開いてフランス語を相手先に打ち込むなんて無理だ。
慣れない10数時間のフライト、バスの最終時刻もすぎ、もはやタクシーしか頼る物がない中タクシーさえも他の流暢に話せるパリっこやその他に先を越され出遅れる。
最悪なスタートだ…。
何とか目的地のお世話になるアパートに着く頃にはもう日付が変わる頃だった。
大家のご婦人が心配そうにエントランスで待っていてくれたのには、その日一番感動したし、心が救われた。
慣れない英語と暗記してきたフランス語で挨拶し、一旦大家の部屋へ通してもらった。
そこで飲んだ一杯のコーヒーが私をコーヒー好きにさせた、恐怖とも至福とも言える出会いだった。
私コーヒーは…と断る前にご婦人がミルクを注ぎそこに焦がしたカラメルを少し。
笑顔で渡してきた。そのコーヒーを突っぱねる事も出来ず、飲む事に。
何が起こったんだろう…。
恐る恐る一口飲むとあの苦いだけのはずのコーヒーが
あんなにミルクやカラメルを入れたら甘くなるしモッタリする口感触になるはずのあのコーヒーが…。
美味しい。
慣れない環境、疲れた体、これから起こるであろう海外の暮らしへの不安。
全てが消え去ってしまうくらい、心にも体にも響いたコーヒーだった。
口触りはサッパリで、でもコクもありほろ苦いカラメルの風味が来たかと思ったらミルクの優しい甘さでカバーされる。
仮にも私は食関係の研修だったので、その味に凄く興味が湧き、しばらくコーヒーから目が離せなかった。
それを察してか大家のご婦人は今日はもう遅いから。と自分の空き部屋に泊まるように身振り手振りで伝えてくれた。
なんせパリのアパートは9階あったとしてもエレベーターがなく、自分でキャリーケースを持って上がらないといけないからだ。
カタコトのフランス語でお礼をし、その日は眠りについた。
あのコーヒーなんだったんだろう。
言い表せれない言葉や感情が押し寄せるが、疲れが勝りいつの間にか深い眠りに。
起きたのは昼の時刻を知らせる鐘が鳴り響いた時だった。
身支度を整え、リビングに行くとそこには昨日のご婦人と大家であるご主人が楽しげにティータイムを過ごしていた。
軽く挨拶をし、席に促されるままに座った。
目の前に出てきたのはサイフォン。
初めてみる物だった。ここで実験でもするのか?と思わせるような形。
ご婦人が微笑みながらそれでコーヒーを落としていく。
私が眠っている間にご主人が日本語の辞書を買ってきたらしく
カタコトの日本語で説明をしてくれる。
昨日から日本語なんて全く聞こえない世界に居たためか、目頭が軽く湿ってくる。
君が昨日飲んだコーヒーはこれで淹れたんだよ。と。
このパンは美味しいから、このコーヒーと一緒に食べなさい。とか
今日は部屋を案内するからね。とか
思っていたよりも数十倍優しい世界が目の前に広がっていた。
ご主人の言った通り、このコーヒーとこのパンを一緒に食べていくと凄くおいしかった。
コーヒーの苦さが、サンドイッチに入っているチーズやソースと混ざり合い。
口の中で調和されていく。
苦いだけのはずのコーヒーが、おいしくなった。
その時再認識した
これが本当のコーヒーの美味しさで
これが本当のフードペアリングなんだ。と
学校では習う言葉も、自分自身が実際に体験しないとただの言葉になってしまう。
あの時習ったこの言葉を体験したことでただの言葉だったものがストンと自分の中に落ちた。
これが私のコーヒーライフのスタートです。
苦いだけだったあのコーヒーを何かと掛け合わせることで美味しく飲めるようになる。
その結果、コーヒーだけでも美味しく飲めるようになっていく。
この出会いが私をコーヒー沼へ引き込むきっかけだったのです。
それからというもの、私の中でコーヒーが一番になり、常にペアリングを探し回る日々。
ふと気がついたら、20代後半にはスターバックスにアルバイト入社してしまう程、没頭してしまう始末。
…とこのまま書くと歯止めが聞かないので、一旦終了。
このブログでは基本コーヒーの話ですが、食に関わる記事も書いていきます。
美味しいを知らないのはもったいない。
様々な美味しいを記事に残し、皆さんにお伝えできたらと思っています。
また、有難い事に海外に関わる事が多い人生を歩んできましたので、海外生活の話も少しづつ記事にしていけたらと思います。