子供のためのルーブル美術館(48)ああ!こんなことになるとは!/全てを知る道化師スタンチク/ヤン・マテイコ
むかしむかし、中世の時代から、ピエロの格好をした道化師は宮殿に住み、いつも王様のすぐそばにいました。
ユーモアと皮肉のまじったおもしろい話をしてはチクリチクリと、王様にとって耳の痛いアドバイスもすることができる機転のきく賢い道化師が宮殿にいたのです。
とがった帽子に、不気味な顔がついた杖を持ち、
服につけたたくさんの鈴をシャンシャン鳴らしながら、道化師は王様の前に現れます。
あ、ガーデンパーティーにも!
そんな道化師は、シェイクスピアの有名なお話にも登場しました。
ついに宮殿を追い出された絶望の王様、荒野をさまようリア王。
正気に戻るよう諭しながらつきそう道化師。どんな時も忠実に王様と一緒です。
さて、今度は本当にあったお話です。
ポーランドの黄金時代に活躍した宮廷道化師スタンチクのある日のこと。
赤い衣装の道化師スタンチクは、椅子にがっくり座りこんでいます。
いったいどうしたのでしょう。
カーテンのむこうでは、華やかなパーティーでたくさんの着飾った人々がダンスを楽しんでいるというのに。
王様たちは、味方の軍がポーランドの街でモスクワ公国に勝ったお祝いのパーティーをしているのです。
ところが、この手紙には。
スタンチクは、誰よりも早くその手紙を読んだのです。
それは、ポーランドにとっていちばん重要な街スモンレスクが、敵に討ち取られたという知らせでした。
茫然とした顔のスタンチク。
このことが、この先どんなに大変なことになるのか、スタンチクは誰よりもわかっていたのです。
スタンチクの後ろでは、なにも知らずに喜びに沸く宮殿の人々。
窓からのぞく夜空には、
これから訪れるポーランドの危機を知らせるかのように、不吉な「流れ星」が流れていたのでした。
Jan Mateijko (1838-1893)
Stanczyk durant un bal à la cour de la reine Bona après la perte de Smolensk
Pologne, 1862
ヤン・マテイコ
スモレンスク陥落後、ボナ王妃の宮廷で催された舞踏会でのスタンチク 1862
ワルシャワ国立美術館蔵ールーブル美術館企画展展示
François Le Barbier fils (actif à la fin du 15e siècle) Le Roi David et un fou
Psalterium latino-gallicum, dit Psautier de Charles VIII Paris, vers 1492 ?
Enluminure sur parchemin
フランソワ・ル・バルビエ(15世紀末に活躍)
ダヴィデ王と道化師 シャルル8世の詩篇として知られるラテン語詩篇
パリ 1492年頃 羊皮紙に彩色
Paris, Bibliothèque nationale de France, département des Manuscrits
Artiste anonyme
La Collation Tourai (Belgique), vers 1520
Tapisserie, laine et soie
Paris, Musée de Cluny - Musée national du Moyen Âge,
トゥルネー (ベルギー)、1520 年頃
タペストリー、ウールとシルク
パリ、クリュニー美術館 - 国立中世美術館 (今回は部分)
Louis Boulanger (1806-1867)
Le Roi Lear et son fou pendant la tempête 1836
Paris, Petit Palais, musée des Beaux-Arts de la Ville de Paris,
ルイ・ブーランジェ
嵐の中のリア王と道化師 1836
パリプチパレ、パリ市立美術博物館
お読みいただきありがとうございました。
現在ルーブル美術館で開催の企画展 “Figures du Fou : Du moyen âge aux Romantiques“ からいくつかをご紹介しました。
スタンチクの絵、目をこらして👁️、窓の外の流れ星と、クラフクのヴァヴェル城の塔(11世紀繁栄したポーランド王国の首都、プラハと並ぶ文化の中心地の世界遺産)が見えたでしょうか。
日本では、道化師というとサーカスか演劇でしかあまり馴染みはないので、中世からの教会、庶民や貴族の生活、王族にまでに及ぶ Fou ( Fool - 道化師や V.ユゴーのノートルダムドパリに代表される人々、正気を失った王、等もこれで表現される) を追い、狂気をも取り上げる今回のルーブルの企画展の盛況ぶりには驚きました。あのオリンピック開会式ができるフランスだからこそ開催できた企画展なのかもしれません。お子様用には説明が難しいものも多いです。
ここに展示されているボッシュやブリューゲルの作品もまた取り上げたいと思います。
ルーブル美術館企画展デモビデオ20秒 今回作品は殆ど出てこないシュールなデザインと「音」
見られない方はこちらをどうぞ↓(絵本の虫さまご指摘ありがとうございました!)
病気になり心配くださった皆様、思いがけず全身の痛みは、さすが痛いの絶対我慢しないフランス🇫🇷の超強力痛み止めでふらふらになりながら少し収まってきました。今回は以前に書いてあったものをご紹介しました。お騒がせ本当に失礼しました🙇♀️