見出し画像

子供のためのオルセー美術館(40)ちょっと怖い妖怪のいるところ・ホーキンスの象徴主義

ようこそ ちょっとこわい…邪悪じゃあく世界せかいへ 


パリのノートルダム寺院じいん屋根やねには、むかしからこんな妖怪ようかいたちがいます。
名前なまえをキメラといいます。

キメラはこうしていまもパリのまちを見ています。

La Stryge, sans doute la plus célèbre des chimères de la cathédrale.


ああっ、キメラが美術館びじゅつかんにもあらわれた!


背中せなかっているのは 
だれ?

あのひかりなかかおはスフィンクスの顔?


ギリシア神話しんわつたわるスフィンクスは、あたま人間にんげんおんなの人、からだはライオン、そして、ドラゴンのしっぽもついているらしい。
でも きらきらとしていてやさしそう

おや?キメラがなにかべている

いったい なにを?


このちょっとこわい不思議ふしぎは 象徴主義しょうちょうしゅぎのホーキンスがきました。
象徴主義しょうちょうしゅぎ画家がかは、モネやルノワールのように見たそのままをくのではなくて、
人間にんげんこころの中のくるしみやかなしみ、妖怪ようかい怪獣かいじゅうのようなくら邪悪じゃあくなもの、そして暗黒面あんこくめんひかりらしてすくおうとするものをこうとしたのです。

Louis Welden Hawkins
Le Sphinx et la Chimère 1906
ルイ・ヴェルデン・ホーキンス
スフィンクスとキメラ 1906

1906年に描かれた「スフィンクスとキメラ」と題されたこの絵の中で、画家ルイ・ウェルデン・ホーキンスは、異種の怪物の姿を象徴主義的に考えた。ギリシャ神話によれば、スフィンクスは女性の頭、ライオンの体、ドラゴンの尾を持つ存在であり、キメラは神話によれば、ライオン、ヤギ、ヘビの3つの頭を持つ動物である。この奇怪な妖怪は寄りかかっている石柱と一体化しているように見え、ゴシック様式の大聖堂のガーゴイルやキメラを思い起こさせる。逆説的だが、女性の顔を照らす光は、この地獄のような不穏な怪物に神の次元を与えている。天罰と救済、古代神話とゴシック的想像力の間のどこかで、象徴派の芸術は奇怪な物の存在や妖怪に誇りを与えていた。産業革命後の合理的な科学と技術の進歩の時代に、彼らは超自然的なもの、奇怪なもの、非合理的なものを好み、精神の暗黒面を表現した。

Musée d’Orsay 

お読みいただきありがとうございました。
ちょっと怖い不思議な絵でしたがどのように感じられたでしょう。
象徴主義はルドンが中心のひとりとなって広がりますが、ポール・ゴーギャンが称賛した純粋で孤立した色彩の魅力、グレーブラウンや淡い色、抑えられた色調で描かれます。感情や心理を夢幻的に描き、ときにオカルト的にあらゆる次元で人間の内面を追求しようとしました。

実はこの絵とは関係はなかったのですが、ノートルダム大聖堂のキメラ(キマイラ、ガーゴイルとも)を取り上げました。
ノートルダムの火災がありましたが、たまたま火災の4日前に修復のため全て取り外されていてこれらは無事でした。これからも多種多様な妖怪たちが地上を見おろすことでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集