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子供のためのオルセー美術館(167)ラベンダーのにおいはどこから/ハリエット・バッケル、目に響く音楽と。

格子こうしのガラスからさす日差ひざしは、レモンいろのカーテンをすかして、部屋へやをもっとあかるくせました。
だれかがくピアノのおとこえます。

ソラソラソラソラ……
人差ひとさゆび中指なかゆびくトリルはとおったおと。ティラティラティラティラティラ……小石こいしのかけらがきらきらころがってくるみたい。
でも、ふたつのおと同時どうじくと、その和音わおんはちょっとってなくて、あのなつかしいノルウェーのふるいピアノをおもします。

女流画家じょりゅうがかバッケルは、すガラスの窓辺まどべでピアノをいもうと、アガタをきました。
アガタは、薄紫うすむらさきのブラウスにあかるいみどりのスカート。

ピアノをくたびに、薄紫うすむらさきはゆれて、かぜにそよぐラベンダーのおはなのよう。
もたれのピンクのスカーフも、そのかげ薄紫うすむらさきにうつしました。

そして、このあおいガラスの花瓶かびんはどうでしょう。


ラベンダーのブルーをおもわせる透明とうめいあお、そこからもなにか、いいにおいがしてきませんか?


こうしてバッケルは、にピアノの音符おんぷひびき、そして、ラベンダーのかおりまでえてくるようなうつくしい花瓶かびんあおいたのでした。


Harriet Backer
Lavande 1914
Bergen, KODE Bergen Art Museum
ハリエット・バッケル
ラヴェンダー 1914  
コーデベルゲン美術館-オルセー美術館企画展

ノルウェーの女流画家ハリエット・バッケルは、ピアニストが奏でる音楽を通して聴覚に、青い壺を意味する絵のタイトルが示唆するラベンダーの香りによって嗅覚にと、視覚以外の感覚に訴えるこの絵を描いた。
バッケルがこの題材を描いた当時、彼女は白内障を患っており、手術を受けたのはこの絵を描き終えてからだった。視覚以外の感覚が重要視されているのは、おそらくこのような状態によるものだろう。

musée d’orsay 

お読みいただきありがとうございました。
ハリエット・バッケルの企画展も明日で最後、今回は聴覚にも臭覚にも感じることができる美しい絵をご紹介しました。
封建的なノルウェーにあって女流画家の世界を最初に築いたバッケル。まだ世界的には知られていない女流作家を取り上げるという最近のオルセーならではの回顧展でしたが、昨日も日本から旅行の友人を連れて印象派を見た後に訪れ、とても感動していました。
自然主義から印象派の革新的なスタイルまで自由自在に表現。演奏家の妹と共にパリ、オランダ、ドイツに暮らし、古くはレンブラントからセザンヌの再来とも言われるまで、多様に変化する画風にその才能を見ることができます。

デモビデオ50秒の美しいピアノの音色をお聞きになりながら、バッケルの光り輝く色彩とラヴェンダーの香り、お楽しみください。


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