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子供のためのオルセー美術館(96)三つ目の怪物、恐れぬものたち/モロー・神秘の海の洞窟

うつくしいものたちがいる洞窟どうくつ


おでこに目玉めだまがついている!
つ目の巨人きょじんポリュペモスは、ひとべてしまうおそろしい怪物かいぶつです。

ところがどうしたことか、今日きょうのポリュペモスはなんだかかなしい目をしています。いったいなにがあったのでしょう。

じつは、大好だいすきな妖精ようせいガラテアが洞窟どうくつはいってしまって、うことができないのです。


あかいサンゴの髪飾かみかざりをつけた真珠しんじゅのようにうつくしいガラテアは、うみそこちいさな洞窟どうくつにいました。
薄暗うすぐら洞窟どうくつにやっととどいたお日様ひさまひかりで、うみそこまでとどくくらいなが金色きんいろかみがキラキラかがやくのがえました。


ガラテアは洞窟どうくつの中でゆったりと、どこまでもひかかがやいてうつくしく、でもそとにいるつ目のおそろしい怪物かいぶつポリュペモスは、かなしそうに物思ものおもいにしずんでいます。

このは、ギリシアの神話しんわをもとに、ギュスタブ・モローがきました。
モローは、うつくしいものとおそろしいもの、ひかり暗闇くらやみをテーマにしたのです。


洞窟どうくつ不思議ふしぎものたち!
あかあお銀色ぎんいろたこともないうみものはつぎつぎと触手しょくしゅをのばし、

すきとおった海藻かいそうは、うねうねと自由じゆううごきまわり、ひかりはなつガラテアにちかづきます。


かくれている妖精ようせいたち


この洞窟どうくつにはほかにも小さな妖精ようせいかくれています。エネイスという人魚にんぎょたち。
ゆらゆられる海藻かいそうをまかせておどったり、うみそこのサンゴによこになったりしています。


さあ、どこにいるでしょう。さがしてみましょう。


ここにひとり、あかいサンゴにりかかって

そしてここにも。
ガラテアの金色きんいろかみよこに。くびをかしげてっている人魚にんぎょ

あのふたりは、見える?
あかいサンゴの妖精ようせいたち。

ほら、ここに。



この不思議ふしぎうみ生物せいぶつは、博物館はくぶつかん図鑑ずかんで見た本物ほんものをモローはただしくそっくりに描きました。
そしていた表面ひょうめんをこすったりひっかいたり、エナメルのようにでこぼこさせて、うみ洞窟どうくつ幻想的げんそうてき世界せかいつくっていったのです。

Gustave Moreau
Galatée Vers 1880
Salon de la Société des artistes français,1880
ギュスターヴ・モロー
ガラテア  1880

この絵は、オウィディウスの『変身物語』第13巻第12話、羊飼いのアキスを愛するガラテアに対するポリュペーモスの嫉妬の話を主題としている。ギュスターヴ・モローがこのテーマに興味を持っていたことは、彼がダイニングルームに飾っていた2枚の写真(1枚はラファエロの「ガラテアの勝利」もう1枚はセバスティアーノ・デル・ピオンボの「ポリュペーモス」)から明らかである。
しかし、それはこの絵に物語を再現するためではなく、物語の最初の1行目にある「ここに恐ろしい巨人が美しいニンフを愛している」を表現するためだった。彼は、異教の神話を個人的かつ現代的な解釈で夢のように表現し、逸話を排除し、絶妙な美と見るも恐ろしい醜さ、美と野獣、愛と憎しみの対立に焦点を当てた。モローの構図は、影と光、鉱物と液体、善と悪の闘争を描いている。
この『ガラテイア』は1880年のサロンに出品されると、たちまち批評家たちの称賛を浴び、1889年のパリ万国博覧会にも出品された。

musée d’orsay 

お読みいただきありがとうございました。
モローの色、幻想的な世界をご紹介しました。
海藻や珊瑚の中の妖精たち、見つけられましたか。どこにいるのか目をこらして4人見つけました。金髪の横の人魚は最後にやっと出会えましたが、もしかしたらまだどこかに隠れているかもしれません。妖精たちはなめらかな線で描かれ洞窟の不思議な色に溶け込んでいます。


妖精たちはここに。

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