子供のためのオルセー美術館(168)7色だけで描けると思う?/シニャック・暗い部屋でも光る絵
井戸の風景と色
ここは南フランスのサント・ロペ。
向こうに広がる海は、地中海です。
ヨットが浮かんで、港の桟橋には、灯台も見えます。
まぶしい太陽の照らす丘は黄色のてんてんでいっぱい。不思議なことに、その黄色で、海の青はもっと明るく見えました。
シニャックは、色の組み合わせが人の目にどう見えるかを研究した画家でした。色の並べ方を考えて、てんてんで絵を描いていくのです。
スカートの紫も、まわりの黄色が一緒になって、ますます鮮やかな色に見えてきました。
たくさんのデッサンから
てんてんの絵も、最初はデッサンから。
シニャックは横長だったデッサンを切り取って、井戸のふたりを大きく描くことにしたのです。
あれ? 井戸の上にあった壺の色、変えたのに気がついた?
白は光を強く反射するから、最高に明るい壺になりました。
お日様があたって光っているところは、井戸も洋服も、
黄色やオレンジのてんてんで輝かせます。
そして影は、青のてんてん。スカートにうつる壺の影もこのとおり!
赤、青、黄、紫、オレンジ、緑に、白。
たった7色の絵の具のてんてんで、シニャックは、南フランスの理想の世界を鮮やかに描いたのでした。
Paul Signac
Femmes au puits dit aussi Jeunes Provençales au puits 1892 Huile sur bois
ポール・シニャック
井戸ばたの女たち(薄明かりのパネルの装飾) 1892
木板に油絵
Paul Signac
Femmes au puits
Esquisse Ⅰ ,II, III 1892
井戸の女たち 1892
デッサン Ⅰ ,II, III
お読みいただきありがとうございました。
シニャックの初期の作品を下絵からご紹介しました。
副題の「薄明かりの中のパネルの装飾」は当時話題を呼びました。シニャックは、暗い部屋でも見えるような強烈で刺激的な色で、光を生み出しているのは絵具そのものであるかのような印象を与えようとしたのです。
以前にご紹介したスーラのサーカスのように、シニャックも色の効果を狙いこの絵の額縁を青く塗っています。
点描画法における、このなまなましい色使いは、マティスにも影響を与え後のフォービズムを生む元になっていきます。