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菩提心

菩薩とは衆生の全ての苦しみを滅する者である。

菩薩とは衆生に全ての幸福を与える者である。

衆生の全てに与え尽くし。
無量の衆生の群れを安らかに引き上げる。
それが菩薩である。

大慈に溢れた心は。
諸々の慈愛と布施の心を生じしめる。

一切を愛する者は一切に与える。
まさしく尊者が一切に全てを与え尽くしたように。大慈の心抱く者は一切布施者となり。乞われたなら何なりと全てを与える。

一切衆生に幸福を与えたい。
全ての愛すべき衆生に幸福の全てを捧げたい。

愛する者の為に。
私自身の幸福は無用なものとなった。

あたかも閃きを覚えた衆生がそれまでの心や知性を捨て去るように。私はこれらを知り得たありし日から。利己的な幸福の一切を無頓着に捨て去った。

大悲に溢れた心は。
諸々の慈悲と忍辱の心を生じしめる。

一切を哀れむ者は。
一切の苦しみを引き受ける。

あたかも勇者があらゆる者の苦しみを引き受けるように。慈悲に溢れた心は宝の如き衆生のありとあらゆる苦しみを引き受ける。

私は全ての者の苦しみを背負いたい。
一切の苦しみを我が身に欲する。
それによって衆生が救われるなら。
私は喜んで千の刃をその身に受け。
千の地獄にも堕ちてゆく。

ありし日の私はこの慈悲の事実を知り得た。そして我が苦しみの全ては泡沫の如く消え去った。

衆生の為に全ての苦しみを背負いたい。
衆生の幸福の為に苦しみの一切を請け負いたい。

衆生の幸福が全てである。
私の苦しみは無きに等しきものであり。
私自身は己の苦しみに無頓着となる。

私は衆生の幸福を願う。
私は衆生の苦しみを哀れむ。

私は慈愛により幸福である。
私は布施により幸福である。
私は慈悲により幸福である。
私は忍辱により幸福である。

私の幸福の一切の因は常に衆生を想う心。
すなわち菩提心にある。

衆生の幸福の為に悟りを得ようとする勇猛な心。それが菩提心である。

菩薩の行動原理は常に利他にある。

他の為に生きる。
他の為に修行する。
他の為に苦しみに耐える。
他の為に苦しみから解放される。

そして一切修行の果報を以て他の一切を救済せんとする。

それが菩薩である。

菩薩の心臓はまさに菩提心にあり。
菩薩の拠り所は常に菩提心にある。

菩提心は宝の如き果報を生み出す。

自らにとって最勝の果報を生み出し。
あらゆる幸福を生じしめ。
かの偉大なる仏陀も価値多しと認めた最高の宝の如き心である。

自身にとって最高の宝である菩提心は。
素晴らしいことに他の一切全てに最上の果報をもたらす。諸々の幸福を一切衆生に与え。諸々の苦しみを滅することのできる菩提心は自他共に最高の利益である。

かように宝の如き菩提心に今生まみえた者は果報者であり。決して菩提心を捨ててはならない。如何なる理由があろうとも決して菩提心を捨ててはならない。菩提心を捨て去ることは不利益以外の何ものでもない。最高の宝を失うことは最悪の不利益である。よって菩提心にまみえた汝はその宝の如き心を堅固に守れ。

その宝には一生分の価値がある。
それは未来永劫の果報であり。
過去世から膨大に積み上げてきた功徳の結晶である。

無為に宝を捨て去ることは過ちである。
よって正しき見解と正しき認識を以て。
宝の心たる菩提心を甚だ堅固に保て。

菩提心にまみえることは稀であり。
それは奇跡に等しき確率である。

他の如何なるものを捨て去ろうとも。
決して菩提心だけは捨てるな。

他の如何なるものを失おうとも取り返しはつくが。菩提心だけは取り返しがつかない。

よって失えば二度と手に入らぬ宝だと思い。菩提心を宝石の如く自らの胸と心臓に匿え。

たとえ命に変えても菩提心だけは決して手放すな。

それが私からの教えである。

この先何があろうと菩提心と共にあれ。

それだけで万象は万事満たされる。

汝に慈悲の甘露たる菩提心の祝福あれ。

汝慈悲の幸福に満たされよ。



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