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パンケーキは2段でお願いします【エッセイ】

🥞砂糖沼でバカンス中のロッタは、土産物では飽きたらず、喫茶店スイーツにまで手を伸ばしていた。

ほしの珈琲店の分厚いスフレパンケーキには、季節限定でそのいただきが変わるメニューがある。
秋はたしか栗だった。
そしていまは、冬限定・安納芋モンブランとキャラメルりんご、そしてバニラアイスを載せたスフレパンケーキののぼりが、店先で春風にはためいている。

「ほほう、冬だけのお味ですか…それはそれは」

普段、プレーンのスフレパンケーキしか注文しない私だが、このアップルシナモンはそのうち食べてみたいなと思っていた。

ん?あれ?…待って? ↑↑(巻き戻し)
冬限定メニューの幟が春風にはためいている。って…。
とっくに3月ですやん…。

「何てこと!もう一刻の猶予もないわ!!」(仲間由紀恵さんの声で)

私のような迂闊者うかつもののために、☆の珈琲さんはギリギリまで待っていてくれたのか!(自分基準な砂糖沼ロッタ)

🥞

用事の帰りに食事を、と夫婦で彷徨っていたとき。好機は訪れた。
私は言葉巧みに夫からハンドルを奪い。「まあまあ、助手席でおくつろぎくださいよ」と油断させたのち、見事☆の珈琲店に駐車した。

蕎麦かトンカツを食べたいと言っていた夫は不服を申し立てたが、鮮やかにそれを却下。
支払いは私がしますので、のキラーワードで黙らせた。

🥞

あんなにp(`ε´q)ブーブー抗議していた夫も店内を満たす珈琲の薫りで大人しくなった。私達はそれぞれ食べたいものを注文した。

「食後に“安納芋とキャラメルりんごのスフレパンケーキ”2段のをお願いします」
すると…
「えっ?食後にそんなにたくさん食べられるの?」

夫が余計なカットインを繰り出してきた。妻の大食いを世間に暴露しようというニヤけ顔が腹立たしい。そして私、恥ずかしい。

パンケーキを1段に変更するのか?2段のままで良いのか?どちらになさいますか?と戸惑う店員さん。
カツカレーのあとにひとりで食べきれる量ではない、と心配されたのかしら?ならば…

「大丈夫ですよ。シェアして食べますから」ニコッ
「僕はいらないよ」

キッ! ひと睨みするも、夫、涼しい顔。←ヽ( `皿´ )ノ

「2段で、お願いします」(仲間由紀恵さんの落ち着き払ったエレガントさで)

気遣わしげな笑顔でオーダーを読み上げる店員さん。

「食後に、“安納芋とキャラメルりんごのスフレパンケーキ”2段、のものでよろしかったでしょうか?」

“2段”を強調する店員さんにも「だから、そうじゃい!」と心で言い放つ。
無事、注文できた。

🥞

かくして2段のスフレパンケーキは運ばれてきた。
マーベラス!自分の勇気あるオーダーに惜しみない拍手を送りたい。

取り皿に「ロッタ様からの御慈悲である」と、1枚の内の半分を切り分け、安納芋モンブランとキャラメルりんご、バニラアイスを黄金比率で載せてやる。

「僕はいらないから、ロッタちゃん全部お食べなさいよ」
「いやいや、遠慮なさらず。お味見どうぞ」

できた人間である。しかし、頑としてその厚意を受け取ろうとしない夫。
食べすすむ私。じわじわと、ひとりで贅沢している罪悪感が上ってくる。

「ほんとに食べないの?」「うん。いらん」

マジで言ってるのか?私より大食いなのに。
しかも芋とりんごとシナモンとバニラアイスぞ?そこへメープルシロップをこう!だぞ。
普通、正気じゃいられないだろう?←砂糖沼に侵されすぎ

ああ!この美味しさ!こんなヤツだけど知ってほしいんだよぉう!分かち合いたいんだよぉ~‼️←砂糖沼住人の行き着く先

「お願いします。お腹いっぱいだから(ウソ)食べてください」
夫ニヤリ…
「そう?そこまで言うなら手伝ってやってもいいよ」

キィィーーッ!!あーだこーだやり取りしてるうちに、そっちのバニラアイス溶けてるじゃんか、んもう!
自分のアイスを足してあげる砂糖沼の模範生。
ベストな状態で召せ!どうじゃ?美味かろう!

「これ、美味いな❣️」
「でしょでしょでしょ!?」

WINNER~~~‼️

ありがとう、ありがとう、砂糖沼のみなさん。
私、やりました。天の邪鬼なこやつに「美味い」って言わしめました。パンケーキ、自分で作ったわけじゃないけど。

2段にしてよかった。
1段だったら、分けようという心の余裕は生まれなかったかもしれない。

次からも、やっぱりパンケーキは2段でお願いします。


🥞 fin 🥞


ハイテンションなエッセイに最後までおつきあいいただき、ありがとうございました😊💖

記事にありがたきご褒美を頂戴しました。読んでいただいた方、ありがとうございました!🙇✨

砂糖沼の序章はここからはじまった。
Marmaladeさんからのグッズイラストをきっかけに書いた物語です。




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