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【随想】映画『アウトレイジ』『アウトレイジビヨンド』『その男凶暴につき』北野武

やってやられての繰り返し
復讐の連鎖
暴力の連鎖
名ばかりの手打ちと落とし前
約束は破られるもの
裏切りはつきもの
人を見たら泥棒と思え
アウトレイジを初めて観た時
北野武は、TAKESHIS’、監督・ばんざい!を経て
自己言及、映画作りに迷走した後
振り出しに戻ってきたと感じた
たけしの処女作
その男、凶暴につきは、
深作欣二のピンチヒッターとしての起用だった
なのに、この時点ですでに
たけしイズムは完成していた
間の取り方はもちろんのこと
カメラに向かってただ歩いてきて
通り過ぎていく一連の動作
これがひたすら繰り返される
普通であれば省略されるであろう
冗長なカット
しかし、そのカットの存在で
その後に行われる現象の重みが
違ってくる
アウトレイジでもまったく同じである
人が向こうからやってきて
通り過ぎて
遠ざかっていく
これをワンカットで
何度も何度も執拗に描く
反復
そう歩けば歩くほど
視聴者はその後に訪れる
凄惨な結末を
予期することになる
その男、凶暴につきの行き過ぎた正義から
アウトレイジの行き過ぎた暴力へ
時代錯誤であるかもしれない
リアリティにかけるかもしれない
でも
戦国時代、戦時中のような
もっと人の命が軽んじられた時があったことをふと考える
今だって戦時中の国はあるし、今平和な国だって
いつ戦争が起こるか分からない
そうなったとき
人はこの映画のように
いとも簡単に狂うことがあるのではないか
当たり前ということが
とてもかけがえのないことだと思わされる
当たり前じゃねえからな

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