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【短編小説】社会人、お金の価値を知る
学生時代、お金はただの「手段」だった。
月に数回のバイトで稼いだ数万円。
食費は実家暮らしだったからほぼゼロで、
使い道は服や遊び。1回の飲み会で5,000円使っても「まぁいいか」と思えたし、
貯金なんて考えたこともなかった。
そんな自分が社会人になり、
最初の給料をもらったとき、
少しだけ大人になった気がした。
「これが私の稼いだお金か」
それなりの額が振り込まれていたけれど、
実際に使える額は思ったより少なかった。
家賃、光熱費、通信費、食費、社会保険…。
固定費が次々と引かれていく。
「こんなに?」と思うほど減る。
手元に残るのは、
学生時代のバイト代と大差ない金額だった。
それでも、働いた分だけお金はもらえる。
そんなふうに思っていた。最初のうちは。
でも、ある日気づく。
「この1万円を稼ぐのに、私は何時間働いた?」
朝から晩まで働いて、やっと得たお金。
コンビニで何気なく1,000円使ったときに、「この1,000円を稼ぐのにどれだけ時間を費やしたか」を考えるようになった。
同じ飲み会でも、「この5,000円は本当に払う価値があるか?」と悩む。
学生時代の自分なら即決だったのに。
そうして、少しずつ貯金をするようになった。
「将来のために貯めておかないと」
貯めていると安心する。
だけど、何に使うのかは決めていない。
ただなんとなく、貯金額が少ないと不安になる。
なぜだろう?
メディアの煽りだろうか。
「老後資金2000万円不足」
「年金はあてにならない」
そんなニュースを見れば、
ますます貯めなきゃと思う。
物価高のせいかもしれない。
コンビニのおにぎりはいつの間にか値上がりし、光熱費の請求額を見て驚くことが増えた。
何もかもが高くなるのに、給料はそんなに増えない。
このままで大丈夫なのか、漠然とした不安がつきまとう。
そんな話を上司としたことがある。
上司は笑いながら言った。
「俺なんか、20代の頃は貯金ゼロどころか、マイナスだったよ」
その言葉を聞いて、一瞬安心しかけた。
でも、すぐに思った。
それは「昔」だからじゃないか?
上司の20代と、私の20代は違う。
物価も、社会も、働き方も違う。
昔は貯金ゼロでもなんとかなったかもしれない。
でも今の時代、それで本当に大丈夫なのか?
上司は「若いうちは貯金より経験に使え」と言う。
確かにその通りかもしれない。
だけど、その言葉を素直に受け止められない自分がいる。
将来どうなるかわからないこの時代、
無計画にお金を使うことが怖い。
貯金がないと心配。
だけど、貯めるだけでは意味がないとも思う。
ただの数字の増減に一喜一憂しているだけで、
本当に必要なときに使えるのかどうかもわからない。
そのうち、ただ貯金するだけではなく、
お金の使い道にも慎重になった。
高い服を買うより、経験にお金を使いたい。
旅行に行ったり、勉強したり。
自己投資という言葉の意味が、
少しずつわかるようになった。
それでも、時々思う。
「お金って何だろう?」
貯めるだけでは意味がないし、
無駄遣いばかりしても後悔する。
社会人になって知ったのは、お金は「目的」ではなく「手段」だということ。
大切なのは、お金をどう使うか。
その使い方が、
自分の人生の価値を決めるのかもしれない。
でも——
「私の選択は、間違っていないのだろうか?」
貯めすぎているのかもしれない。
使いすぎているのかもしれない。
何が正解なのか、今もまだわからない。
皆さんは、お金とどう向き合っていますか?
読んでいただきありがとうございました☺️