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塩澤幸登
2020年11月22日 08:04
01 序 詩人論01この作品を純粋無垢な[詩集]と考えるのには、多少の無理があるかも知れない。まず、書いた本人が純粋の詩集として読者諸氏の鑑賞に耐えるだけの自信がない。最初、詩集のつもりで編集を始めたのだが、長い作業のなかで性格変化していった。よくよく読み込んでいくと、この詩集はじつは著者の個人的なドキュメントというか、ノンフィクションの装いをまとったフィクション小説であるのかも知れないから
2020年11月23日 05:58
【作品01】 八月の風恋人よ八月の風はあまいか八月の光は視界にきらめくのか教えてくれなくてもいいいや 教えてくれわたしたちがついに訪れなかった八月の海の光をあなたは知っているか八月の日の光は熱いわたしたち自身が太陽でありたいと願いついに発光体ですらありえなかったわたしたちの皮膚に八月の日の光はみじめに熱い野望は潰え情念は虚しく枯れて人よ八月の海の伝説に
2020年11月25日 04:18
【作品07】 旅の場所(四)浅間高原遠く異郷を旅していると愛する人よ自然に似て 心理はあなたのいた低みに向けて流れていくそんな時 わたしはどうしたらいいのだろうわたしの旅の生活である二つのボストンバッグを放り出して原野の彼方まで走って行こうか一人旅だからいいのだわたしを悩ませるものが訣別の記憶であってもわたしの旅愁は好きな煙草に似て甘く苦い
2020年11月26日 02:34
【作品11】 祭の夜夕暮れ夏祭りの踊りの輪につながってわたしはさめる者であるのか酔える者であるのかおんなたち華やかな帯を結んで美しく化粧した少女たちよ身にあふれる熱情を饒舌に変えて語れ 宵闇のうちその時 わたしは沈黙をまもる者のひとりでありたいそれはわたしが生まれた谷間の祭りの夜のことだ彼女らはついにわたしの隣人でありえずわた