『平凡パンチの時代』 第九章 永遠の映画少年
昭和30年代から40年代にかけての日本社会の発展、変容について語るとき、必ず引き合いに出される、定番的ないくつかのことがらというのがある。まず、一番ひんぱんに登場するのが昭和31年の経済白書のなかの「もはや戦後ではない」という一節と、同時期に石原慎太郎が『太陽の季節』で芥川賞を受賞したことだ。このふたつはとにかくわかりやすくて、時代がガラッと変わったことを説明するためにセットになって登場することが多い。わたしもすでに、第3章の108頁と第6章の259頁の2箇所でこの話を使って